“訊:き” の例文
“訊:き”を含む作品の著者(上位)作品数
岡本綺堂89
野村胡堂45
海野十三44
吉川英治34
岡本かの子25
“訊:き”を含む作品のジャンル比率
文学 > 文学 > 叢書 全集 選集85.7%
文学 > 中国文学 > 小説 物語23.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「一体どういうんだろう、今の島田の実際の境遇っていうのは。姉にいても比田に訊いても、本当の所がく分らないが」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こうしたことを胸に浮べながら寺の庫裏くりの前まで引返して行った頃に、岸本は自分の側へ来てく子供の声に気がついた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それで、おめえはその生首というのをどう思う。そこらの異人で、そんなに首を取られた奴があるのか」と、半七は又いた。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それからおよそ七十マイルばかり疾走して、全く南洋らしいジャングルや、森林の中を行くとき、私は娘にいた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そう言っていると、果して二、三日の後に、張訓は将軍のまえに呼び出されて、この間の鎧はどうであったかと、またかれた。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さア、それは大変なものらしいのですが、二三日したらお宅へ本人が伺うといってましたから、そのときでもいて下さい。」
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
すると、シイカがきゅうに、ちょうど食べていたネーブルを指さして、どうしてこれネーブルって言うか知ってて? といた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
私は馬から降りて、かの手紙を差し出すと、老人はそれを一度読み、また読み返して、疑うような眼をしながら私にきました。
そこまで余裕のある思ひりが、二人の間につくかどうかが疑問であるとき、お涌の髪に手を入れてやりながいた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
彼女は、身をふるわしながらいた。テーブルの上にかけている白いろうのような手も、烈しい顫えを帯びていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
例えば、この間、僕は思いきってあいつに、「君の云うそのあんなあなって云うのは一体何のことだい?」っていてみたんだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
何時いつまでも富岡がものを云はないので、ゆき子は、もう一度、小さい声で、「どうしたらいゝンでせう?」といてみた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「俺は暫らく此處ここを動きたくねえ。お幾と二人の内弟子が何處へ行つたか知らねえが、それに逢つてきたいことがある」
お島はどうかすると、男のある不自然な思いつきの要求を満すための、自分の肉体の苦痛を想い出しながら、上さんにいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ようやくその人垣の背後まで辿たどり着いたとき、吾平爺はそのいちばん後ろに立っている一人の学生をつかまえていた。
或る嬰児殺しの動機 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「順番を待っているのが面倒だからちょっと先生にいて下さい。明日あした明後日あさって手術を受けに来て好いかって」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半七は荒物屋を出て、更にほかの家でいてみたが、近所の噂はみな一致していて、誰も魚屋の夫婦を悪くいう者はなかった。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それも無理のない事だとは思ったが、ゆうべたずねて来た女があると云うのが半七の気にかかったので、彼はかさねていた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
表向きに乗り込んで詮議をしてはかえって要領を得まいと思ったので、半七は番頭の長左衛門を表へよび出して小声でいた。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「古屋さん。いまの言葉は、あたしの頭が考え出したわけじゃないのよ。あたしは、ある人がそう言っているのをいたのよ」
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そのお姉ちゃんに僕、いてみたの。お姉ちゃんには、お母ちゃんと、そいからお父ちゃんもいるのッてたずねたらネ……」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「どうも宗匠は飛んだことだったが、なにか心当りはありませんかえ」と、半七は車井戸の柱によりかかりながら先ずいた。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
陸軍省でその新聞社の所在地をかれても、御本人はハッキリと答えることが出来ないと云うような滑稽こっけいもありました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あんたはここの家の何です。」と言って客にかれると、お庄はいつも曖昧あいまいな返事をして笑っているのが切なかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、私がくと、白木はどうしたわけか、唇まで持っていった盃を呑みもせずに下に置いて、大きく溜息ためいきをついて、
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
紫玉は待兼ねたように懐紙かいしを重ねて、伯爵、を清めながら、森のこみちきましたか、坊主は、といた。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
純情な恋の小唄こうたを好んで口誦くちずさむ青年子女にいてみると恋愛なんか可笑おかしくって出来できないと言う。
鏡の中に映らないが、自動車が何か引きずってゆく音がする、何だい? といたら、そりですよ、と親方は無雑作に答える。
雉子日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
といったが、その年よりも、小僧も、景気のいい立食たちぐいには並ばない。あたしは、すこし大きくなってから、またいた。
やがて馬車の継立場つぎたてばに来て下ろされたかの女は、一番先に、その近くにある懇意なある家に寄つて寺のことをいた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それでは、あの村田という人をお婿にするのかと露骨にいた者もあったが、おすまはただ笑っているばかりで答えなかった。
平造とお鶴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
感心したようにいたのは、家主の半九郎だ。バタバタバタ、廊下をころげ去って行く侍女の跫音あしおとがしていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、お千鶴のことをきたかったが、どうせ苦労しているにちがいないと思うと、聴けばかえって辛くなるだろうと、よした。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
きました。訊く方はむろん冗談だったのですが、当人のかっちゃんは、旧悪が露見したような気がしてはっとしたのです。
こういって小僧がくと、女はやはり無言でうなずいて、そこへ代価を置いて、酒の入った徳利を捧げるようにして帰って行った。
こないだは失敬した。君の名を知らんもんだからね、どんな容子の人だとくと、かばんを持ってる若い人だというので、
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一と月ほど経ってから読んだかとくと、何だかしちくどくて面倒臭いもんだといってろくすっぽ読んでいなかった。
若い学士の方でも緑雨の社会通を相当に認めて、そういう方面の解らない事があるとしばしば緑雨のもときに来たもんだ。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私はひどく取り乱して警視庁へ電話で事の顛末てんまつき合せたが、内務省へ出頭したらいゝとやらで、要領を得なかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
だからドイツへ往くなら、そういう方にいろいろ注意すべきことをいてゆくがよかろうというので、いろいろ御話を伺った。
回顧と展望 (新字新仮名) / 高木貞治(著)
じつはあたし、あなたにちょっと、おきしたいことがあるんですけれど、どうも具合が悪くって、言い出しにくいんですの。
「たつた一と言、んなことを言ひましたよ。――何にもかないで下さい、今晩中には何も彼も分ることですから――つて」
「いや、もう少しき度いことがある、お嬢さんを怨んで居る者が無かったのかな、――例えば、追い回して居た男と言った」
折田はぎろと堯の目を見返したまま、もうその先をかなかった。が、友達の噂学校の話、久濶きゅうかつの話は次第に出て来た。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その申し立てに、少しく疑わしい点がないでもなかったが、半七はその以上に彼を吟味しなかった。それでも念のためにまたいた。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「昨日出たきりけえらねえので……停車場でいたら、上野までの切符、七、八枚も売れだのだぢがら、見当が付かねえもね。」
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
小林は自分の前にある麦酒ビール洋盃コップして、ないしょのような小さい声で、隣りにいる真事にいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
多分、外国の活動女優の舞台姿か何かを真似たものと思われるが、本人にいて見る勇気を持たなかったのは遺憾であった。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
買って売って其のあいだに利益を見るのであるから、承知して売り値をくと、幾らでもいいから持って行ってくれと云う。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それからだんだんといてみると、その蛇の一件の最中に、油断して紙入れや莨入たばこいれをり取られた者もあるという。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれども東屋氏は答えようともしないで、しきりにやみの空をふり仰いでいたが、やがて突飛もないことをきだした。
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「お受けいたします。なに吉良殿などにくことはありません。私は、私一個の平常の心掛けだけでやりとおす考えです。」
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼らにとっては第一にきたいこと、ただそのことのために帰って来た邦夷らは、事情が許せば着くより早く語りたいこと。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
やがて、かういたのだ。が、併し、兄はそれには答へなかつた。私は一寸てれて机の上の置時計を見た。七時半であつた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
いた時、客が、一晩お世話に、と言うのを、腰をかがめつつかしこまって、どうぞこれへと、自分で荷物をさばいて
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歳子は飽満に気付いて、あるとき婚約中の良人にいた。すると良人は思慮深く考へてゐたが、すぐ明るくまゆを開いていつた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
彼女はひどくおしゃべりになって、突拍子もない質問を次から次へと浴びせかけ、現に自分でいたことをすぐまた忘れてしまった。
お爺さんもびつくりして飛び起きてくるとこの有様でした。けれども流石さすがに男だけに、気を落付けてきました――
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「Mの町の旅館……。なんという旅館ですか。」と、博士は何げないようにいたが、その眼は少しく光っているようにも見られた。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
声――だからさ、君が細君に対してなぜ嫉妬を感じたか、さういふ時、君はどんな態度を取つたか、それをいてゐるのだ。
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
まだほかに御用がありますかとくと、もう別におねがい申すことはございませんというので、私たちは早々にそこを出た。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
或人が、さぞ不自由でしょうといたら、何にも不自由はないが毎朝虎子おかわを棄てに行くのが苦労だといったそうだ。
……ペテルブルグでもモスクワでも、概してあなたに興味をもっていて、僕はしょっちゅう、あんたのことをかれますよ。
と、俊基と共に、野路の石に腰をおろした。そして、途々もこう訊こうと思っていた、彼の妻のことを、きり出してみた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あなたは、どこがくて、マレーフスキイさんなんかを家へ入れるのです?」と、ある時わたしは彼女にいてみた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「丁度宜いところでした。店から入ると人目が多いので、斯んなところへ廻りましたが、實は内々でお話をき度いことがあるんで」
「御不動樣の近所で、石松とけばすぐ判ります。――でも石松夫婦のところに養はれたのは、十二か十三までほんの一年足らずで」
「變だとわかつたら、俺のところへきに來る迄もあるめえ、――今日は滅法忙しいんだ。お前なんかをからかつちや居られねえよ」
「女の寝巻ですよ、――裏の縁側の手摺てすりに掛けてありましたが、下女のお六にくと、あのお夏という娘の物なんだそうで」
「神田仁太郎のことなら、小石川の、その何というのか心霊実験会しんれいじっけんかいみたいなところでけばわかりやしないか」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そしてお園の方でもやっぱりその男には惚れていたのですか」と、言葉だけは平気を装って確かめるようにいてみた。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
土地の人にくと、これは昔から陸判官の塚と言い伝えられているが、いつの時代の人だかわからないということでした。
「よう」と、鳴海はいつもと同じおきまりの挨拶声あいさつごえを出したあとで、「そうやって、君は何をしているんだ」といた。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
フランケなら、きっと既に考えていると思ったので、僕はそれをいた。フランケは両手をみながら、一旦口をへの字に曲げて、
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「オヤ、けんどんですネ、人が一生懸命いっしょうけんめいになっていてるのに。何でそんなに沈んでいるのです?」
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何かそれが自分のせいだと思い込んだらしい少年はかないせかせかした様子で、思い切ったようにいた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
差配は、七十位の小さい白髪しらがじいさんで、耳が遠いのか、大きな声で「お住まいはどちらです」といた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
母屋の門口で、種をけていた老婆にくと、戸板をになった三人の者が、林の中へ駆け込んだと云う。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これには何か仔細しさいのあることであろう、あとでゆっくりこうと、園絵はそのまま喬之助の前にガックリ崩れて、
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「君は一体何者だッ」巡査はくのでなくて叱るのであった。ふるえ切った彼には直ぐに返事がのどへ塞がった。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
紫玉は待兼まちかねたやうに懐紙かいしを重ねて、伯爵、を清めながら、森のこみちきましたか、坊主は、といた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれると、老翁は困ったような顔をしているので、桓温かんおんが、同時代から現在までの英傑や偉人の名をいろいろ持ち出して、
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「存じません、私が來てから、もう三年になりますが、そんなことは話したこともなく、いてもまぎらして教へて下さいません」
「ちょいと、貴方あなたはどんな子が産れると思います」お島は始終気にかかっている事を、鶴さんにもいてみた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お前は何時までも俺のものかい」と彼の方でいた時に、「ええ何時までも」と答えた通り、彼女はすでにすでに岸本のものであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それにしても、報恩額というのはどういう訳です。なにかのお礼にでも書いてくれたんですか」と、わたしはいた。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤ブイの仙太! 仙太といえば刑事たちが、さっき私にいたところの横浜はまの不良で、カンカン寅の一味なのだ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ねえさん株や同僚七八名と手伝いに行ったことを述べ、帰りにその門前でくと奥さまの家はすぐ近くだというので、急に来たくなり
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それぎりで問答の声はやんだ。それからまた暫くして、内の者も裏門へまわって帰って来たらしく、他の一人がいた。
「左官屋の徳さんが死んだそうですね。」と、わたしもやがて風呂にはいって、少し熱い湯に顔をしかめながらいた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうしてドンナ間違いから海の中に放り込まれるような事になったのか……ナンテいろんなトンチンカンな事を真剣になってくの……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「君のところへは、何うしてさう年寄ばかり来るんだ。」彼は痛ましいやうな表情をしていた。「君はまだ若くて美しいぢやないか。」
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「それはそうと、赤まんまの花って、いつ頃咲いたかしら? 夏だったかしら? それとも……」と私は自分のうちの幼時の自分にく。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
およ何時いつ取りに来る?」といた。やっぱり、軸物じくもののことが少しは気になっているのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
不意に一つの官署へ来た。喬はその中へ入っていった。そこに生がいてばったりいきあった。顧は驚いていた。
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
私は学校の帰途、その店頭に立って「ああ、ほしいなあ」とは思ったが、あたいくと二円五十銭なり
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
アルカージナ あなたはいつも、大昔の人のことばかりおきになるのね。わたしが知るもんですか! (腰をおろす)
婢を呼んでいてみようと思って、盃を置いて手をならそうとして両手を合わせていると、ふと己のむこうへ来て坐った者があった。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「だが、それなら、塀に血が飛沫しぶく筈は無い。――黒板塀がひどい血だぜ。ところで昨夜、誰と誰が家に居たかこうじゃないか」
僕もその時は立入ってもかず、それなり別れてしまったんだが、つい昨日きのう、――昨日はひる過ぎは雨が降っていたろう。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
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