)” の例文
大天狗、小天狗、無数の天狗がみな火となって、黒風にけまわり、その火が落ちて、火神の御社が、忽ちまた団々たる炬火きょかとなる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしどものように、だれからほめられるということのないかわり、自由じゆうそらけることができるのが、しあわせであるかもわからない。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなたが少しもお立ち留りなさらずに、わたくしを引きって、そらけるような生活の真中まんなかへ駈込んでおしまいなさったのですもの。
忽然巨大な一振りのつるぎが雲の中から現われ出たが、まず継母の首を斬り、次いで壺皇子をつかへ乗せ、どことも知れずけ去ったのである。
白山は、藍色あいいろの雲間に、雪身せっしんの竜に玉の翼を放ってけた。悪く触れんとするものには、その羽毛が一枚ずつ白銀しろがね征矢そやになって飛ぼう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうなってはいかな左膳でも、そらけ、地にもぐる術のない以上、一本腕のつづくかぎり、斬って斬って斬りまくらねばならない……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『西遊記』と限らず、この種のいわゆる支那の奇書くらい放恣ほうしな幻想がその翼をかって、奔放ほんぽう虚空こくうけまわっているものも少いであろう。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
真綿をくわえあげて巣の方角を定めるため、二、三回宙を回ったが、見当がきまると東南の方へ一直線にけ出した。
採峰徘菌愚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
すると、ドイツ人はすぐに、発動機なしで、もちろん水素なども使わず、ただ風の弛張しちょうと上昇気流を利用するだけで上空をけり歩く研究を始めた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
雨の中の青いやぶを見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでもけて行くたかを見付けてははねあがって手をたゝいてみんなに知らせました。
虔十公園林 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
けだしこの人その起伏する長鰭を以て飛びける事、世に伝うるバシリスク、また竜のごとくだろうと察したのだ。
大きな美しいがちょうの背中にのってその空をけったり、月の世界の人たちのつい近くをひょうひょうと雪のようにあかるくとんでいるのだそうです。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
所謂コバのれないといふことは、人間として自由に飛び自由にけることの出来ないことを意味してゐる。
墓の上に墓 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
けってる翼のように広がった橅の枝からは雪解けのしずくが落ちていた。牧場をおおうている白いマントを通して、柔らかい緑色の草の細芽がすでにえ出していた。
白い糞は岩の上にへたばるとも、なお禿鷹はげたかは空にけることをやめない。予の目前にて洒落を侮辱するなかれ! 僕はその価値相当に洒落を尊重する。ただそれだけだ。
飛仙となつて、羽ばたきの音けたたましく大空をけめぐるべきはずだつた馬明生の体は、見る見るうちに傴僂せむしのやうに折れ曲つて、やがて小さな地仙となつてしまつた。
春の賦 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
空は、——微風さへ全然落ちた空は、その生気のない林の上に、だんだん蒼い色を沈めて来る、——と思ふとけりが一羽、寂しい声を飛ばせながら、頭の上をけて通つた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やっとその目的地に立ち向う段取りになったと云うのだ。だが、そらけて行くことは出来ない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
葉子はつばめのようにその音楽的な夢幻界をけ上がりくぐりぬけてさまざまな事を考えていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
けれども、からだには翼がないから、天をけるわけにも行かず、地上に於て巣をいとなみ、夫婦となり、姦淫するなかれ、とくる。それは無理だ。無理だから、苦しむ。あたりまへだ。
悪妻論 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
例へば、恋愛を天ける「夢」だとすれば、結婚は、地上から足をはなさぬ「夢」です。恋愛は想像と情熱の上に築かれる「夢」ですが、結婚の「夢」は希望と努力のうへに築かれます。
っと見知らない鳥が二三羽っただけなのに気がつくような事もあった。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
無念骨髄に徹して歯をみ拳を握る幾月日、互に義に集まる鉄石の心、固く結びてはかりごとを通じ力を合せ、時を得て風を巻き雲を起し、若君尚慶殿を守立てて、あまくる竜の威を示さん存念
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なむとするをおどろかし、けるをぞ控へたる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
雌鳥めんどりを追つかけて一直線にけてゆく
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あつい雲が紙鳶の上をけまはる。
あじさしける白濱しらはま
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
けまわるんじゃ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「見よ、見よ。凶雲きょううんぼっして、明星みょうじょう出づ。白馬はくばけて、黄塵こうじんめっす。——ここ数年を出でないうちじゃろう。青年よ、はや行け。おさらば」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この言葉の終えないうちに、一羽の烏が林の中から二人の方へけて来たが、すぐ前面まえの岩の上へ静かに止まって羽根を畳んだ。
ばとは、自分じぶんたちのすることをすこしもよくないなどとはおもっていませんから、すぐに、あおそらけてうみほうへとんでゆきました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
雨の中の青いやぶを見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでもけて行くたかを見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「二羽巣立をして、空へけるように、波ですか、雲ですか、ここへそなえようと思って持って来たんですけれどもね、——ふふんだ、誰が、誰が……」
その風評うわさがいよいよ事実となって現れ、八百八町に散らばる御用の者が縁に潜り屋根を剥がさんばかりの探索を始めてからまる一月、天をけるか地に這うか
するときっとがちょうがあなたがたを背中にのせて、高い高いお月さまのそばまでけてゆくでしょう。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
平民の画家なるランクレーは蒼空そうくうけ上る市民らをうちながめ、ディドローはそれらの情愛をとらえんとて手を伸ばし、デュルフェーはそれにゴールの祭司をささえしめた。
無頓着むとんじゃく懶惰らんだな者としてクリストフが知っていたそれらの人々は、今ではもう軍事的光栄や戦闘や征服や、リビアの沙漠さばくけるローマのわし、などのことばかりを夢想していた。
けれども、からだには翼がないから、天をけるわけにも行かず、地上に於て巣をいとなみ、夫婦となり、姦淫するなかれ、とくる。それは無理だ。無理だから、苦しむ。あたりまえだ。
悪妻論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一本の花ざかりの緋桃ひももの木のうえに、突然なんだかはっとするようなもの、——ふいとそのあたりをったこの世ならぬ美しい色をした鳥の翼のようなものが、自分の目にはいって
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
親蜂は、巣にいる子供に餌を運ぶため朝から晩まで、終日野や林のなかをけめぐっている。蜂は蟻のように団体行動をとらないで、どんなおいしい餌を発見しても単身で働いているものだ。
採峰徘菌愚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ヘルムホルツが「人間が鳥と同じようにして空をける事はできない」
案内者 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なむとするをおどろかし、けるをぞ控へたる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
とりは高空にくれども天に宿しゅくするによし無し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
響きわたり、空へけぬ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
けまわるんだ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
やがて後にしょくの天子となるべき洪福と天性の瑞兆であったことは、趙雲のける馬の脚下あしもとから紫の霧が流れたということを見てもわかる
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山鳩が幾羽か、野の方から林の中へけ込んで来たが、人間の姿を見て驚いたように、一斉に棹のように舞い立ち、木々の枝へ停まった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……はじめ、ここへ引越したてに、一、二年いた雀は、雪なんぞは驚かなかった。山をうさぎが飛ぶように、雪をみのにして、吹雪を散らしてけたものを——
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるときは、すずめはつばめにまじって、いわくだけるしろなみ見下みおろしながら、うみうえけりました。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして黒いせた脚をがりがりきました。土神は一羽の鳥が自分の頭の上をまっすぐにけて行くのを見ました。すぐ土神は起き直って「しっ」と叫びました。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)