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ふりがな文庫
“
縛
(
くく
)” の例文
頼朝は、後ろ手に
縛
(
くく
)
られた手をしきりにもがいていた。解こうとするのではなく、手がきかないので、起ち上がれないためであった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
式部が唐櫃のまえで引っ
縛
(
くく
)
られたときに、行者も善八の縄にかかっていた。小娘の藤江は勿論なんの抵抗もなしに引っ立てられた。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「身分も宣らず行く先も云わぬとは、いよいよもって怪しい奴、仕儀によっては引っ
縛
(
くく
)
り縄目の恥辱
蒙
(
こうむ
)
らすがよいか!」
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
杖
(
つえ
)
には長く
天秤棒
(
てんびんぼう
)
には短いのへ、
五合樽
(
ごんごうだる
)
の
空虚
(
から
)
と見えるのを、
樹
(
き
)
の皮を
縄
(
なわ
)
代
(
がわ
)
りにして
縛
(
くく
)
しつけて、それを
担
(
かつ
)
いで
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
御台所町
(
おだいどごろちょう
)
、
妻恋町
(
つまこいちょう
)
一帯に網を張らせ、少しでも怪しい者があったら引っ
縛
(
くく
)
るようにと指図をしておいたのです。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
(縁のある
貴下
(
あなた
)
。……ここに居て、打ちもし、蹴りもし、
縛
(
くく
)
りもして、悪い癖を治して上げて下さい。)
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分は机の前に
縛
(
くく
)
りつけられた
人形
(
にんぎょう
)
のような姿勢で、それを読み始めた。自分の眼には、この小さな黒い字の一点一
劃
(
かく
)
も読み落すまいという決心が、
焔
(
ほのお
)
のごとく輝いた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一隅に太い
蝋燭
(
ろうそく
)
がゆらめいていた。その下に黒い影が
蠢
(
うごめ
)
いているので、見るとそれは若い女だった。白い肌をあらわに後ろ手に
縛
(
くく
)
し
上
(
あ
)
げられて、
蝦
(
えび
)
のように二重になってかがんでいるのだ。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
引っ
剥
(
ぱ
)
いでひっ
縛
(
くく
)
ろうてんだ。な、わかったか。解ったらさ——
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『町人とは申せ、許しがたい。きっと、首謀者があろう。こういう時には、そいつらを五六名引っ
縛
(
くく
)
ってしまえば
自
(
おのずか
)
ら鎮まるものだ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを
手繰
(
たぐ
)
ったら、市郎の身体は無事に
引揚
(
ひきあ
)
げられたかも知れぬが、
其
(
その
)
綱の端が彼の胴に
縛
(
くく
)
られてあると云うことを誰も知らなかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
渋江典膳とお浦とが
背後手
(
うしろで
)
に
縛
(
くく
)
られ、高く
梁
(
はり
)
に釣り下げられてい、その下に立った五郎蔵一家の用心棒の、望月角右衛門が、木刀で、
男女
(
ふたり
)
を撲っているではないか。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一ト筋の手拭は左の手首に
縛
(
くく
)
しつけ、
内懐
(
うちぶところ
)
にはお浪にかつてもらった
木綿財布
(
もめんざいふ
)
に、いろいろの
交
(
まじ
)
り
銭
(
ぜに
)
の一円少し
余
(
よ
)
を入れたのを
確
(
しか
)
と納め、両の手は
全空
(
まるあき
)
にしておいて
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
とこの度は
洋燈
(
ランプ
)
を片手に
追懸
(
おっか
)
けて、気も上の空何やらむ足に
躓
(
つまず
)
き怪し飛びて、火影に見ればこはいかに、お藤を連れて身を隠せしと、思い詰めたる老婆お録、手足を八重十文字に
縛
(
くく
)
られつ
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どうもこうもねえ。その
前
(
めえ
)
にてめえを引っ
縛
(
くく
)
るのだ」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
聞いておる。血縁の者でなければ、ひッ
縛
(
くく
)
って、婆の手へわたしてくれるのじゃが、それもなるまい。……わしら夫婦にまで、迷惑を
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「こいつ、強情な奴だ。さあ、来い。番屋の柱へ
縛
(
くく
)
りつけて、絞めあげるから……。ええ、泣いたって勘弁するものか。この河童野郎め」
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
酷
(
むご
)
らしき縄からげ、
後
(
うしろ
)
の柱のそげ多きに手荒く
縛
(
くく
)
し付け、薄汚なき
手拭
(
てぬぐい
)
無遠慮に
丹花
(
たんか
)
の唇を
掩
(
おお
)
いし心無さ、
元結
(
もとゆい
)
空にはじけて涙の雨の玉を貫く柳の髪
恨
(
うらみ
)
は長く垂れて顔にかゝり
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
うしろ手に
縛
(
くく
)
りあげると、細引を持ち出すのを、
巡査
(
おまわり
)
が
叱
(
しか
)
りましたが、叱られるとなお
吼
(
たけ
)
り立って、たちまち、裁判所、村役場、派出所も村会も一所にして、
姦通
(
かんつう
)
の告訴をすると、のぼせ上がるので
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『先頃から、おのれが怪しいと気をつけていたのじゃ。さっ、申せ、正直に云ってしまえ。云わなければ引っ
縛
(
くく
)
って、首にするぞ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
洋服姿の市郎は胴を
縛
(
くく
)
られたままで、さながら縁日で売る亀の子のように、宙に吊られつつ
揚
(
あが
)
って来たのである。人々も驚いて声を揚げた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
管八 言うことを
肯
(
き
)
かんと
縛
(
くく
)
り上げるぞ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや、もはやご安堵あってしかるべしです。追ッつけこの呼延灼が、ひとりびとり、引ッ
縛
(
くく
)
ってきて、ご面前に据えるでしょうから」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに誘われて、二人もおのずと早足に仁王門をくぐると、観音堂前の大きい
銀杏
(
いちょう
)
の木に一人の男が
縛
(
くく
)
りつけられていた。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
縛
(
くく
)
されながら
戦
(
わなな
)
くばかり。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
するといつの間にか、道を
反
(
そ
)
れた供の者が、役人を連れて来て私を指さしたかと思うと、有無をいわさず、
引
(
ひ
)
っ
縛
(
くく
)
られてしまいましたので
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、今日からかんがえると、まるで嘘のようです。松茸の籠は琉球の畳表につつんで、その上を紺の染麻で厳重に
縛
(
くく
)
り、それに封印がしてあります。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
其奴
(
そいつ
)
縛
(
くく
)
せ。」
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
法師たちの高歯の下駄や
木履
(
ぼくり
)
が彼の背をふんづけた。牛若はくやしがって、その
毛脛
(
けずね
)
へしがみついたが、荒縄で
縛
(
くく
)
りあげられてしまった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女は二十五六の年増で、引窓の綱らしい古い麻縄で手足を厳重に
縛
(
くく
)
られて、口には古手拭を固く捻じ込まれていた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「こやつ。国吉の
鍛
(
う
)
ったこの鉄砲の試しには、ちょうどよい生き物だ。
彼方
(
むこう
)
の
墻
(
かき
)
のそばへ引き立て、木に
縛
(
くく
)
って立たせておけ」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もがいても狂っても、
多勢
(
たぜい
)
に
無勢
(
ぶぜい
)
である。采女は大地に捻じつけられて、両腕をひしひしと
縛
(
くく
)
られてしまった。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「なに、いい獲物を捕まえたと。そこらの柱へでも引ッ
縛
(
くく
)
っておけ。どうするのかは、あとでゆっくり
人態
(
にんてい
)
を見てからでいい」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
何
(
ど
)
うしても
其儘
(
そのまま
)
には
捨置
(
すてお
)
かれぬので、最後には畚に
緊
(
しか
)
と
縛
(
くく
)
り付けて、遂に
彼女
(
かれ
)
を上まで運び出した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「六波羅からお預かりの者ですが、
遮那王
(
しゃなおう
)
の行跡、目にあまるものがあります。
懲
(
こ
)
らしめのため鐘楼へ
縛
(
くく
)
りつけましたゆえ、おふくみ下さい」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その一つのあき俵のなかに首を突っ込んで、善昌がうつむきに倒れているのを発見したときは、大勢は思わず驚きの声をあげた。善昌は手足をあら縄で厳重に
縛
(
くく
)
られていた。
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
信長の陣中へ、捕虜となって
縛
(
くく
)
られて来た浅井方の一人安養寺三郎右衛門は、怒号しているその味方を一眼見ると、突然声をあげて泣き出した。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「人殺しだ、人殺しだ。逃がすな、
縛
(
くく
)
れ」
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かねて岡崎の奉行とも
聯絡
(
れんらく
)
はあったらしい。又四郎は彼を
引
(
ひ
)
っ
縛
(
くく
)
ると、その体を小脇にかかえて
疾風
(
しっぷう
)
のように駈け出した。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、ひと汗、拭き合った時には、もう、権之助は
鞠
(
まり
)
のように
縛
(
くく
)
られて、どうでもしろというように大地に
委
(
まか
)
せられていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それへ助勢に向おうとして、金吾は一人の敵を
膝下
(
しっか
)
におさえながら、口と片手で脇差の
下緒
(
さげお
)
を解いて、この邪魔者を
縛
(
くく
)
りつけて置こうとします。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると、庭には点々と血汐の
痕
(
あと
)
、戸障子は八方へ無残に倒れ、
甲比丹
(
かぴたん
)
の三次と荷抜屋の手下二人は、常木鴻山が
後
(
うし
)
ろ
手
(
で
)
に
縛
(
くく
)
し上げてしまった様子。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その一頭一頭に、囚衣の罪人が、
縛
(
くく
)
りつけられている。みな、きりぎりすのように痩せ細り、眼をくぼませ、髪も
髯
(
ひげ
)
も、ぼうぼうと
生
(
お
)
いはやして。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「九度山まで、引っ立てて歩くのも、途中がわずらわしい。馬の背に
縛
(
くく
)
りつけて、
蓆
(
むしろ
)
でも引っかぶせて行くとしては?」
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「無念にぞんじまする。これが、表だってもさしつかえない儀ならば、かならず下手人どもは、あす一日をまたずに
引
(
ひ
)
っ
縛
(
くく
)
ってまいりましょうに」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さっき天蔵を
縛
(
くく
)
り付けておいた木に、天蔵のすがたはなく、ただ木の根がたに、一筋の麻縄が、解き棄ててあるばかり。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わしの手でそちを
縛
(
くく
)
るいわれはないが、雲州侯の家中が、そちがここから帰るのを門の外で待ちうけているかも知れぬ
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その若い騎馬の将校が、一人の大男の死骸を、馬の
鞍
(
くら
)
つぼに引っ
縛
(
くく
)
って人目を
憚
(
はばか
)
るように京都の方へ宙を飛んでゆく。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その一頭の裸馬の背には、ひとりの女性が、荒縄で
縛
(
くく
)
りつけられていた。前後の武士は、相木熊楠の手の者だった。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
演舌していた
首魁者
(
しゅかいしゃ
)
らしい僧は、勝家の手に
縛
(
くく
)
りあげられ、
逸
(
いち
)
はやく逃げたほかの三名も、そこここで捕まった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“縛”の意味
《名詞》
(バク)罪人をしばること。しばるなわ。
(出典:Wiktionary)
縛
常用漢字
中学
部首:⽷
16画
“縛”を含む語句
捕縛
呪縛
繋縛
引縛
束縛
金縛
緊縛
縛著
纏縛
棒縛
蹈縛
縛付
地縛
自縄自縛
就縛
喰縛
咒縛
魅縛
縛引
縛繩
...