細目ほそめ)” の例文
おりたつ後姿うしろすがた見送みおくものはお八重やへのみならず優子いうこ部屋へや障子しようじ細目ほそめけてはれぬ心〻こゝろ/\を三らう一人ひとりすゞしげに行々ゆく/\ぎんずるからうたきゝたし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父「何しろ変りも変つたからね。そら、昔は夕がたになると、みんな門を細目ほそめにあけて往来わうらいを見てゐたもんだらう?」
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夫婦ふうふ夜中よぢゆう燈火あかりけて習慣しふくわんいてゐるので、ときはいつでもしん細目ほそめにして洋燈らんぷ此所こゝげた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
近づいて見ると、ドア細目ほそめに開いてゐる。多分、め切つた病室に、清淨せいじやうな空氣を通はせる爲めであらう。
玄関げんかんのドアを開くのも、人ひとりがやっと通れるくらいの細目ほそめにして、署長を入れる用心ぶかさで、博士は署長を中にいれると、透明人間とうめいにんげんからの手紙をわたして見せた。
あは細目ほそめけて、其處そこつて、背後うしろに、つきかげさへとゞかぬ、やままたやま谷々たに/″\を、蜘蛛くもごとひかへた、ほしとゞくろ洞穴ほらあなごとおほいなる暗闇くらがりつばさひろげて、姿すがたほそ障子しやうじ立棧たちざん
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
口三味線くちさみせん浄瑠璃じやうるりには飛石とびいしづたひにちかづいてくるのを、すぐわたしどもはきヽつけました。五十三つぎ絵双六ゑすごろくをなげだして、障子しやうじ細目ほそめにあけたあねたもとのしたからそつと外面とのもをみました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「なんだかようすがへんだから、はやしておやり。」と、おかあさんまでが、おっしゃいました。あねのほうの少女しょうじょ雨戸あまど細目ほそめけると、すきまから、はげしいかぜが、うちみました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、細目ほそめにすかして、烏天狗からすてんぐ仮面めんをつけたまま息を殺してさしのぞいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徘徊たもとほる象の細目ほそめさか諦觀あきらめの色ものうげに見ゆ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
一群ひとむれ少女せうぢよら、戸を細目ほそめに開く。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やうや下女げぢよ退がりきりに退がると、今度こんどだれだか唐紙からかみ一寸いつすんほど細目ほそめけて、くろひか眼丈めだけ其間そのあひだからした。宗助そうすけ面白おもしろくなつて、だまつて手招てまねぎをしてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また気勢けはいがして、仏壇の扉細目ほそめ仄見ほのみたま端厳たんごん微妙みみょう御顔おんかんばせ
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「御存じなの」と云ひながら、二重瞼ふたへまぶち細目ほそめにして、男のかほを見た。三四郎を遠くに置いて、却つて遠くにゐるのを気遣きづかぎた眼付めつきである。其癖まゆ丈は明確はつきり落ちついてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は机の上の書物を伏せると立ちがつた。縁側えんがは硝子戸がらすど細目ほそめけたあひだからあたゝかい陽気な風が吹き込んでた。さうして鉢植のアマランスの赤いはなびらをふら/\とうごかした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)