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窺
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うかが
ふりがな文庫
“
窺
(
うかが
)” の例文
ぎっしり詰った三等車に眠られぬまま、スチームに曇るガラス窓から、見えぬ
外
(
と
)
の
面
(
も
)
を
窺
(
うかが
)
ったり、乗合と一、二の言を
交
(
かわ
)
しなどする。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
彼が小首を傾けて氣取りながら、生徒達の機嫌を
窺
(
うかが
)
ふやうな眼附をして、にたりと笑ふ時、私達は
蟲酸
(
むしづ
)
の走るやうな輕薄さを感じた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
私はただ研究が完成したかったのだ。ところが清水は私のその大切な研究を金になりさえすればというので、密かに
窺
(
うかが
)
っているのだ。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
機会を
窺
(
うかが
)
っているうちに、
容赦
(
ようしゃ
)
なく日がたってしまう。五月なかばになった。イギリスの春は遅いがこのころは一番いい時候である。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
自分の命令に従う小さなのでもありはすまいかと思って、胸を
躍
(
おど
)
らせながら横目で
窺
(
うかが
)
った。しかし雲は平然と左の方へ飛びつづけた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
而
(
しか
)
るに
形躯
(
けいく
)
を
変幻
(
へんげん
)
し、
草
(
そう
)
に
依附
(
いふ
)
し、
天
(
てん
)
陰
(
くも
)
り雨
湿
(
うるお
)
うの
夜
(
よ
)
、月落ち
参
(
しん
)
横たわるの
晨
(
あした
)
、
梁
(
うつばり
)
に
嘯
(
うそぶ
)
いて声あり。其の
室
(
しつ
)
を
窺
(
うかが
)
えども
睹
(
み
)
ることなし。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ひとまず前述の著書および論文に表われたる氏の思想およびこれらを透して
窺
(
うかが
)
わるる氏の人格について論じてみたいと思うのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
とまれ非常な大結社で、支那の政治にも戦争にも、また外交の方面にも、偉大な潜勢力を持っていることが、記録によって
窺
(
うかが
)
われた。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……そうだねえ五円もあれば(五円といえば一カ月の食費だが少し大きくいいすぎたかしらんと思って人見はまた園の様子を
窺
(
うかが
)
った)
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
暁
(
あかつき
)
に及び、何者とも知れず氷りたる雪の上を歩む音あり。新左衛門小屋の中より之を
窺
(
うかが
)
ふに、
長
(
たけ
)
一丈余りの男髪は垂れて眼を蔽へり。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何人も
窺
(
うかが
)
い得ないような巨木や密生した熊笹で蔽われ、道は、意識的に、
紆余曲折
(
うよきょくせつ
)
して造られ、案内なしでは、とても
辿
(
たど
)
りつけない。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と深くも考えずに
浮気
(
うわき
)
の不平だけを発表して相手の
気色
(
けしき
)
を
窺
(
うかが
)
う。向うが少しでも同意したら、すぐ不平の
後陣
(
ごじん
)
を
繰
(
く
)
り出すつもりである。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唐犬びたいとほうろく頭巾のほかに、まだ三人の仲間が侍たちのあとをつけて来て、桜のかげに先刻から様子を
窺
(
うかが
)
っていたのであった。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
翌十二日の未明、秀吉、福島市松、中山左伝二人を連れて足軽の風態で、盛政の陣所行市山を
窺
(
うかが
)
い、その有様を墨絵にして持ち帰った。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私たちはときどき日を
除
(
よ
)
けるため道ばたの農家の前に立ち止まって、去年と同じように蚕を飼っている家のなかの様子を
窺
(
うかが
)
ったり
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そっと店の扉を開け、内を
窺
(
うかが
)
っても、店はがらんとして誰もいない。私は入った。相続く銃声をたよりに、ずんずん奥へすすんだ。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
跡取りがお杉になりそうなので、徳松はお道をそそのかして、権八に金を持逃げさせ、その晩庄吉の寝息を
窺
(
うかが
)
ってあんな事をしたのさ。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
英国人サー・アーノルドの漫遊記、また英国公使フレザー夫人の著書の如きは、共に明治廿二、三年のころの日本の面影を
窺
(
うかが
)
わしめる。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
邪推深い目付で
窺
(
うかが
)
い澄していた源のことですから、お隅の顔の紅くなったのが読めすぎる位読めて、もう
嫉
(
ねたま
)
しいで胸一ぱいになる。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
廊下へ出るのは気がかりであったけれど、なおそれよりも恐ろしかったのは、その時まで自分が寝て居た
蚊帳
(
かや
)
の内を
窺
(
うかが
)
って見ることで。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
明智は控えの間を通り抜けて、襖のそとに立ち、しばらく様子を
窺
(
うかが
)
っていたが、やがて、ソッと襖をひらいて、部屋の中を
覗
(
のぞ
)
きこんだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その句の巧妙にして
斧鑿
(
ふさく
)
の痕を留めず、かつ和歌もしくは
檀林
(
だんりん
)
、
支麦
(
しばく
)
の如き没趣味の作を為さざる処、また以てその技倆を
窺
(
うかが
)
ふに足る。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
申し上げてしまえばよいのでございましたが、これには仔細がありそうでございますので、物蔭へ忍んで御様子を
窺
(
うかが
)
いましてございます
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小田原の敵の夜討を知ったのは、氏郷の伊賀衆の
頭
(
かしら
)
、忍びの
上手
(
じょうず
)
と聞えし町野輪之丞という者で、毎夜毎夜忍びて敵城を
窺
(
うかが
)
ったとある。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
物蔭に、
窺
(
うかが
)
う雪之丞、長崎屋の、血の涙のくり言を、苦い微笑で聴きながら、老師孤軒先生の、先見に、今更感動を禁じ得ぬのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それらの努力の
窺
(
うかが
)
える真面目な訳であるのだけれど、読んでゆくうちに、訳文全体の調子が、一種の低さを感じさせるのは、何故だろう。
翻訳の価値:「ゴロヴリョフ家の人々」にふれて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし少し高き見地より
窺
(
うかが
)
えば、何れも反対の観念を示すものでなくして、寧ろ両者の間に共通点あることを教うるものと思う。
東西相触れて
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
即ち蕪村によって居士の俳句観を
窺
(
うかが
)
うことは、単に天明期の一俳人を伝うるに止まらず、明治俳句を知る上の重大な
関鍵
(
かんけん
)
になるのである。
「俳諧大要」解説
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
如何なる強度の望遠鏡でも
窺
(
うかが
)
う事の出来ぬような遠い天体の上に起る
些細
(
ささい
)
な出来事も直ちに地球上の物体に有限な影響を及ぼすとなれば
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こんな書出しで学校での勉強のしかたなどをこまごまと教えているのですが、そんな中にもファラデイの高い人格がよく
窺
(
うかが
)
われるのです。
マイケル・ファラデイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
「ひどいとこですよ。」と鳴尾君は幾分気づかわしげに私の顔色を
窺
(
うかが
)
ったが、私がさらに辟易した様子を見せぬので安心したようだった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
眼底が
窺
(
うかが
)
えるほどに
膿潰
(
のうかい
)
し去ったものか、もしくは
蝦蟇
(
ひきがえる
)
のような、底に一片の執念を潜めたものもあるのではないかと思われた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ではチェーホフの笑いは、一たいどういう性格のものであったか? それを端的に
窺
(
うかが
)
わせる挿話がゴーリキイの回想の中にある。
チェーホフ試論:――チェーホフ序説の一部として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
道雄はなお、しばらく寝息を
窺
(
うかが
)
っていたが、やがてよしと見て合図をした、二枚の杉戸が
凄
(
すさま
)
じい勢で両方から一時に蝙也の頭へ殺到した。
松林蝙也
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
点検すると言っても指でクルクルと廻してみるわけでもなく、二尺も離れた遠方から恐る恐る
窺
(
うかが
)
っているという風に見えました。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
父親のベッドにさえ、紀久子はそこに自分の動静を
窺
(
うかが
)
っている者が潜んでいるような気がして、神経を
掻
(
か
)
き立てられるのだった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
しかもそれでいて、別段私はスパセニアの
隙
(
すき
)
を見て、ジーナと二人切りになる機会ばかり、
窺
(
うかが
)
っていたというのでもありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
給仕は仕事の関係で、漁夫や船員などが、とても
窺
(
うかが
)
い知ることの出来ない船長や監督、工場代表などのムキ出しの生活をよく知っていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
彼はこの時
扶
(
たす
)
けし手を放たんとせしに、
釘付
(
くぎつけ
)
などにしたらんやうに
曳
(
ひ
)
けども振れども得離れざるを、怪しと女の
面
(
おもて
)
を
窺
(
うかが
)
へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
まことに美の一片は美の全体であると言われる通り、これだけでも其の壁画の美の如何なるものであるかを
窺
(
うかが
)
うに十分である。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
そこで、彼は、いささか、ぎょっとしながら、恐る恐る、見るような、見ないような顔をして、そっとその人間を
窺
(
うかが
)
って見た。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まだわれわれの
窺
(
うかが
)
い知ることのできない次の芸術と特殊な面白い文化を産み出しつつあるに違いないことだろうと思っている。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
太郎は
傍
(
そば
)
に引き添って、退屈らしい顔もせず、何があっても笑いもせずに、おりおり主人の顔を横から覗いて、機嫌を
窺
(
うかが
)
うようにしている。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
やがてわらべ達の唄声が次第に遠く消えて行く頃、
瓜生
(
うりゅう
)
ノ
衛門
(
えもん
)
、右手より現れる。丘の上の人影をそっと
窺
(
うかが
)
うようにみている。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
襖
(
ふすま
)
の隙から
納戸
(
なんど
)
の方を
窺
(
うかが
)
うと、そこはいまだに床板のままで、急にそちらへ押し込めたらしい農具がごたごたに片寄せてある。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
林町に家を借りて、堀部安兵衛どのそのほかの方々と同宿しているのも、じつを言えば
仇家
(
きゅうか
)
の動静を
窺
(
うかが
)
うためにほかならない。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
こんな風に長々と標榜したところに、いかにも中世らしい好みを、読むに先だって
窺
(
うかが
)
うことが出来る。スペインの説話である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
暫くの間じっと息を
窺
(
うかが
)
っていたが、やがて真白い肉付きのいい二本の腕を忍ばすように静かに延ばすと、伊豆の
頸
(
くび
)
を圧えて力強く絞めつけた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
で、彼はそっと向きをかえて座敷の方を
窺
(
うかが
)
った。——もうその時には、日はとっぷりと暮れて、向こうから見られる心配がなかったのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
工員に渡す月給袋の
捺印
(
なついん
)
とか、動員署へ提出する書類とか、そういう事務的な仕事に満足していることは、彼が書く特徴ある
筆蹟
(
ひっせき
)
にも
窺
(
うかが
)
われた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
窺
漢検準1級
部首:⽳
16画
“窺”を含む語句
窺知
窺見
窺視
差窺
窺窬
窺伺
窺寄
窺得
窺測
窺覗
窺込
管窺
自能窺宋玉