畜生ちくしょう)” の例文
大将(泣く。)「ああ情けない。犬め、畜生ちくしょうども。どろ人形ども、勲章くんしょうをみんな食い居ったな。どうするか見ろ。情けない。うわあ。」
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
細くてとおつたきいきいといふ鳴声を挙げる。「ほい畜生ちくしょう」と云つて平太郎はたくみに操りながら、噛みつかれないやうに翅をのばして避ける。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
畜生ちくしょう。う、うぬはよくも、おれを裏切うらぎりやがったな。一どは、なわにかかっても、このまま、獄門台ごくもんだいに命を落とすような龍巻じゃねえぞ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畜生ちくしょう。)といったが馬は出ないわ。びくびくとうごめいて見えるおおき鼻面はなッつらをこちらへじ向けてしきりに私等わしらが居る方を見る様子。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前という奴は、まるで、こん畜生ちくしょうめ! 友達の心のこれっぱかしも分らねえ奴で……」それから後は唐突な慟哭どうこくになる。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「この畜生ちくしょうのために、おれたちまでしかられるなんて、ばかばかしいこった。いぬかわながしてきてしまえ。」と、小僧こぞうたちははなしをしました。
森の中の犬ころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その畜生ちくしょうに落されるとは、何かの因縁いんねんに違いございません。それは石橋の少し先に、長い端綱はづなを引いたまま、路ばたの青芒あおすすきを食って居りました。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
および真正しんしょうを信ぜず、殺盗して罪をつくらば、畜生ちくしょう餓鬼がきの中に堕在し、つぶさに衆苦しゅくを受け、地獄を経歴せん、ゆえに塚塔中にあらずといわん
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
お兼 お釈迦様は慈悲深いおかたで畜生ちくしょうでもかわいがっておやりなされたのだよ。それでかわいがってくれた人が死んだので皆泣いているのだよ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「それでもそれだけの同勢どうぜいにはたっぷりとは言えない。かわいそうに、畜生ちくしょうにはじゅうぶん食べさしておやんなさい」
「帰れ、帰れ、帰っておくれ、畜生ちくしょうおまえが女狂いをしたばかりに、とうとう俺を殺しちまった、帰れ、帰っちまえ」
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「僕の家内の命の瀬戸ぎわです。殺されかけているんです。探偵のくせに女房一人救えないなんて……畜生ちくしょう、どんなことがあっても、救ってみせるぞ」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ああ光一か、おれは今町会傍聴ぼうちょうにいってきた、おもしろいぞ、うむ畜生ちくしょう! おもしろいぞ、畜生め、うむ畜生」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
心と体とを別に考うることはすでに身を売る時よりおこなわるる議論で、良家の子女しじょ泥水どろみずに入る時も、たとえからだ畜生ちくしょう同然になるも、心は親のため、主人のため
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
其処それどころじゃないけれど、仕方がないから相手になっていると、チョッ、また松の畜生ちくしょうが邪魔に来やがった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
朝月あさづき畜生ちくしょうながら、主人の恩を知っていた。清兵衛が立ち上がったとみて、うれしそうにいななき、明兵のうしろにかけまわって、すきがあらばとびかかろうとする。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
畜生ちくしょう! け! さッさとけ!』とかれ玄関げんかんまで駈出かけだして、泣声なきごえげて怒鳴どなる。『畜生ちくしょう!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「それじゃおれをあいのくさびに一席うかがわせる気なんだな。こん畜生ちくしょう、だれがその手に乗るものか」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とうとう一尾いっぴきも釣れずに家へ帰ると、サアおこられた怒られた、こん畜生ちくしょうこん畜生と百ばかりも怒鳴どなられて、香魚あゆ山鯇やまめは釣れないにしても雑魚ざこ位釣れない奴があるものか
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ロボばかりでなく、あの畜生ちくしょうども、まくらならべて往生しているにちがいない。」とさけんだ。
安「誠にお芽出度うござえます…此ん畜生ちくしょうめ、人に散々こええおもえをさせやアがッて」
『お前は日本人か。』『ハイ日本人でなければ何です。』『夷狄いてき畜生ちくしょうだ、日本人ならよくきけ、君、君たらずといえども臣もって臣たらざるべからずというのが先王の教えだ、君、 ...
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
走るのは畜生ちくしょうだし、乗るのは他人だし、本命といっても自分のままになるものか、もう競馬はやめたと予想表は尻にいて芝生しばふにちょんぼりとすわり、残りの競走レースは見送るはらを決めたのに
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
なさけない子だね! まるで無神経だ。いよいよ当り前じゃなくなってきた! これじゃ、畜生ちくしょうとおんなじだ! 畜生だって、壺をやっとけば、その使い方ぐらいわかる。それにお前どうさ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「分隊長、無念です。あ……あれをごらんなさい。畜生ちくしょうッ!」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「見やがれ。コン畜生ちくしょうくたばるんなら手際よくクタバレ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こがねまる (足で踏みつぶす)こん畜生ちくしょうッ!………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
畜生ちくしょうめ、夜があけたら、さっさと出て行け。」
畜生ちくしょう、今晩は出ないのかな」
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
畜生ちくしょう……畜生』
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
「にくい畜生ちくしょうだ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
街道かいどうのはずれがへんに白くなる。あそこを人がやって来る。いややって来ない。あすこを犬がよこぎった。いやよこぎらない。畜生ちくしょう。)
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「おいッ、おいらをぶんなぐったのは、いったいどこのどン畜生ちくしょうだ、さアかんべんできない、ここへでろ、おいらの前へでてうせろッ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やはり畜生ちくしょうなどというものは知恵ちえのないものだ。とうてい、知恵ちえのある人間にんげんにはてるものでない。」といいました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(彼奴のせいだ、あの畜生ちくしょうのせいだ、彼奴がいなかったら、俺はこんなことになりはしないぞ、あの畜生のせいだ)
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ああ、恐れ。それもって、烏帽子きた人のくずとも思召おぼしめさず、つらの赤い畜生ちくしょうとお見許し願わしう、はッ、恐れ、恐れ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
畜生ちくしょうっ、さては貴様、ここへ電話をかける前に何か細工をしたんだな。警察か。警察へ電話がかけてあるのか」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おい、犬でも畜生ちくしょうでも恩は知ってるよ、おれはずいぶん不良だが校長先生の恩だけは知ってるんだ、きさまは先生をおいだした、犬畜生にもおとるやつだ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
俊寛 (絶望的に)だめだ! (地に倒れる。立ち上がる)おにだ。畜生ちくしょうだ。お前らは帰れ。帰って清盛きよもりにこびへつらえ、仇敵きゅうてきの前にひざまずいてあわれみを受けい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
之を霊肉の衝突というか? しからば、霊肉一致したら、如何どうなる? 男女相知るのをおそろしいとも恥かしいとも思わなくなるのか? 畜生ちくしょうと同じ心持になるのか?
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
畜生ちくしょう! まだ愚図愚図ぐずぐずしているな。これでもか? これでもか?」砂利は続けさまに飛んで来ました。中には白の耳のつけ根へ、血のにじむくらい当ったのもあります。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
た! 諸君しょくん目出めでとう、院長閣下いんちょうかっか我々われわれ訪問ほうもんせられた! こン畜生ちくしょうめ!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし野だが尻持を突いたところを見て始めて、おれの成功した事に気がついたから、こん畜生ちくしょう、こん畜生と云いながら残る六つを無茶苦茶にたたきつけたら、野だは顔中黄色になった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
畜生ちくしょうに対しては、かわいそうな、口のきけないものだと思ってがまんするけれど、おまえではまったく気ちがいにさせられる」と、こうかれは言って、芝居しばいのように両手を空に上げて
九ヶ年ぜん狂死なしたる豊志賀のたゝりなるか、成程悪い事は出来ぬもの、己は畜生ちくしょう同様兄弟同志で夫婦に成り、此の年月としつき互に連れ添って居たは、あさましい事だと思うと総毛立ちましたから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「死ななかったかな? 畜生ちくしょう、よくねらったんだがなあ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
コン畜生ちくしょうめ、れやがったくせに、フフフフフ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「この畜生ちくしょう、畜、畜生——畜……」
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
「おやあ……太い畜生ちくしょうだ」
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
『何だ。この餓鬼がきめ。人をばかにしやがるな。トマト二つで、この大入の中へおまえたちをんでやってたまるか。せやがれ、畜生ちくしょう。』
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)