滯在たいざい)” の例文
新字:滞在
あれほど希望に全身を刺戟しげきされてゐた處女作しよぢよさくはとうとう一枚も書き上らないままに、苫小牧とまこまい滯在たいざいの一月ほどは空しく過ぎてしまつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
まへばんに、ちゝ宗助そうすけんで、宗助そうすけ請求せいきうどほり、普通ふつう旅費りよひ以外いぐわいに、途中とちゆうで二三にち滯在たいざいしたうへ京都きやうといてからの當分たうぶん小遣こづかひわたして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あひなるべくは多治見たぢみへのして、陶器製造たうきせいざう模樣もやうまでで、滯在たいざいすくなくとも一週間いつしうかん旅費りよひとして、一人前いちにんまへ二十五兩にじふごりやうちうにおよばず、きりもちたつた一切ひときれづゝ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きみ御存知ごぞんぢごと病後びやうごせき字社じしや醫者いしやすゝめられて二ヶ月間げつかんこの湯原ゆがはら滯在たいざいしてときである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
毎年まいねんイタリイを旅行りよこうするひと非常ひじようおほいのでありますが、イタリイ滯在たいざいなかばは、博物館はくぶつかんすごし、あとのなかばはローマだとかポムペイだとかの舊蹟きゆうせき巡遊じゆんゆうするといふありさまであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ねんはんまへといへばわたくしがまだ亞米利加アメリカ大陸たいりく滯在たいざいしてつた時分じぶんことで、隨分ずいぶんふる新聞しんぶんではあるが、ふるくつてもんでもよい、故郷こきやうなつかしとおもふ一ねんに、はなたずんでゆくうち
そこに一月餘ひとつきあまりも滯在たいざいしてゐるうちに九ぐわつになりけたので、保田ほたからむかふへ突切つつきつて、上總かづさ海岸かいがん九十九里くじふくりづたひに、銚子てうしまでたが、そこからおもしたやう東京とうきやうかへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その後もなく、ちやうど三うらさき宿屋やどや滯在たいざい中に訃音にせつした時、わたしはまだあまりにまざまざしいそのをり印象いんせうおもひ出させられるだけに、哀悼あいとう持も一そう痛切つうせつだつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しからば、君等きみらある時期ときまで、このしま滯在たいざいせねばなりません。』と斷乎だんこ言放いひはなつた。
執筆しつぴつ都合上つがふじやう赤坂あかさか某旅館ぼうりよくわん滯在たいざいした、いへ一堪ひとたまりもなくつぶれた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
决心けつしん如何いかんといふのは、吾等われら兩人りようにんかゝる絶島ぜつたう漂着へうちやくしたいま無理むりにも本國ほんごくかへりたいか、またある便宜べんぎるまで、大佐等たいさらこのしま滯在たいざいする覺悟かくごがあるかとのとひだとわたくしかんがへたので、無論むろん
その時三月近く滯在たいざいしてゐた母のじつ家でわか父が寫眞しやしんをやつてゐた。