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涌
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わ
ふりがな文庫
“
涌
(
わ
)” の例文
この「霜の花」を作っているうちに、私の頭の中にいつの間にか、雪の結晶も人工で出来はしまいかという気持が
涌
(
わ
)
いて来たのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
己は根岸の家の鉄の扉を走って出たときは血が
涌
(
わ
)
き立っていた。そして何か分からない
爽快
(
そうかい
)
を感じていた。一種の力の感じを持っていた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それを行って見ずに、ぐずぐずしていて、朝夕お極まりに
涌
(
わ
)
き上がって来る、悲しい霧を見ているのである。実に退屈である。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
大瓶猩々の謡に「あまたの猩々大瓶に上り、泉の口を取るとぞみえしが、
涌
(
わ
)
き上り、涌き流れ、
汲
(
く
)
めども汲めども尽きせぬ泉」
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鶴見もまた迢空さんに誘われて、何かもう少しいってみたいと思う言葉が醸成され、
涌
(
わ
)
き
出
(
だ
)
して来るのを内心に感じている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
▼ もっと見る
世界中の
煙突
(
えんとつ
)
と云う煙突をこゝに集めて煤煙の限りなく
涌
(
わ
)
く様に、眼を驚かす雲の
大行軍
(
だいこうぐん
)
、
音響
(
おと
)
を聞かぬが不思議である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
こう岸本はそこに疲れ倒れている節子を励ますように言って、彼女の眼に
涌
(
わ
)
いて来る涙をそっと自分の
口唇
(
くちびる
)
で
拭
(
ぬぐ
)
うようにしてやることもあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして同時に、彼女の
裡
(
うち
)
にいつか
涌
(
わ
)
いて来た結婚前の既に失われた自分自身に対する一種の郷愁のようなものは反対にいよいよ募るばかりだった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
恐々
(
こわごわ
)
ながら
巌頭
(
がんとう
)
に四つん
這
(
ば
)
いになると、数十丈遥か下の滝壺は
紺碧
(
こんぺき
)
を
湛
(
たた
)
えて、白泡
物凄
(
ものすご
)
く
涌
(
わ
)
き返るさま、とてもチラチラして長く見ていることが出来ぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
信州
飯田
(
いいだ
)
から少しはなれた
上郷
(
かみさと
)
村の
雲彩寺
(
うんさいじ
)
の庭に、杉の大木の下から
涌
(
わ
)
いている清水がそれで、その為にそこにいるいもりは左の眼が潰れているといいます。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一部分から水がチョロ/\
涌
(
わ
)
いて、引佐川へ流れ落ちる。小池という姓もこの涌き水から来たのだろう。
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と叫ぶと、僕はサイレンのスウィッチを下す、村人が
涌
(
わ
)
き立つ、海上には忽ち
目醒
(
めざま
)
しい活劇が
捲
(
ま
)
き起る。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
何も仕事などは出来なくなつて、ただひた苦しみに苦しんで居ると、それから種々な問題が
涌
(
わ
)
いて来る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
おくみともすでに十一年になるが、寝屋を共にしたのはゆうべが初めてであるし、そうなったいまでも、やはり「自分の女」という感じが少しも
涌
(
わ
)
いてこなかった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一五八四年ヴァランス(Valence)において、
霖雨
(
りんう
)
のために非常に毛虫が
涌
(
わ
)
いたことがあった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
天災に縛られていた人間の心が今や町全体の上に湧然と
涌
(
わ
)
きのぼっているような心持ちである。が四谷の塩町に行くまでは自分はまだ幾分の平静を保つことができた。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
米
(
こめ
)
は
俵
(
たはら
)
より
涌
(
わ
)
き
銭
(
ぜに
)
は
蟇口
(
がまぐち
)
より
出
(
いづ
)
る
結構
(
けつこう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
何
(
なに
)
が
不足
(
ふそく
)
で
行倒
(
ゆきだふ
)
れの
茶番
(
ちやばん
)
狂言
(
きやうげん
)
する事かとノンキに
太平楽
(
たいへいらく
)
云ふて、
自作
(
じさく
)
の
小説
(
せうせつ
)
が
何十遍
(
なんじつぺん
)
摺
(
ずり
)
とかの
色表紙
(
いろべうし
)
を
付
(
つ
)
けて
売出
(
うりだ
)
され
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
こういう時に白い粉薬を、少し
許
(
ばか
)
りコップの中へ
叩
(
たた
)
き込んでしまえば好い。まあなんという造作もない事だろう。こう思うと同時に、なぜだか目の中に涙が
涌
(
わ
)
いて来た。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「ここに
万
(
よろず
)
の神の
声
(
おとない
)
は、
狭蠅
(
さばえ
)
なす皆
涌
(
わ
)
き」は火山鳴動の物すごい心持ちの形容にふさわしい。
神話と地球物理学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それを見ていると私の双の眼に
泪
(
なみだ
)
が一ぱい
涌
(
わ
)
いて来た。その手紙は私のいちばん親しかった青年時代の友から来たものだった。彼は私が大いに期待をかけていた親友だった。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
花火がもくもく池の底から
涌
(
わ
)
いて出るように見える趣向になって居るのだそうであります。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
天然に
涌
(
わ
)
き出でまするお湯は、肌ざわりがまた天然に軟らかでございますものですから、ほんとうに久しぶりでわたくしは、我を忘れてお湯の中へ魂までつけこんでしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その
涌
(
わ
)
き出ずる水源は踏破しがたく、その地中の噴き出口は人の測定をゆるさない。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
小さい女房はツァウォツキイの顔をじっと見ていたが、目のうちに涙が
涌
(
わ
)
いて来た。
破落戸の昇天
(新字新仮名)
/
フェレンツ・モルナール
(著)
かの
烈々
(
れつれつ
)
たる
怨念
(
おんねん
)
の跡無く消ゆるとともに、一旦
涸
(
か
)
れにし愛慕の情は又泉の
涌
(
わ
)
くらんやうに起りて、その胸に
漲
(
みなぎ
)
りぬ。苦からず
哉
(
や
)
、人
亡
(
な
)
き後の愛慕は、何の思かこれに似る者あらん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そして彼等は聴くであらう、同時に近くから遠くから
涌
(
わ
)
き起る
洞
(
うつ
)
ろな鐘のひびきを、続いて無数の黄ばんだ祈りの声を。のみならず、たとへば私なら、もつと先を想像することが出来る。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
併し間もなくまた憎悪、
憤怒
(
ふんど
)
、絶望がむらむらと
涌
(
わ
)
き上がつて来る。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
劉淵は怪しんで※児を
捉
(
とら
)
えようとすると、蛇は山の穴に隠れた。しかもその尾の端が五、六寸ばかりあらわれていたので、追っ手は剣をぬいて尾を斬ると、そこから忽ちに泉が
涌
(
わ
)
き出して池となった。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「さうか。
涌
(
わ
)
きだちの清水だからな。」
八の字山
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
絶えず
涌
(
わ
)
きあがるがごとくにあれ。
生けるものと死せるものと
(旧字旧仮名)
/
アンナ・ド・ノアイユ
(著)
洗物をさせるにも、
雑巾掛
(
ぞうきんがけ
)
をさせるにも、湯を
涌
(
わ
)
かして使わせるのに、梅の手がそろそろ荒れて来る。お玉はそれを気にして、こんな事を言った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
こうした珠数でも胸の上に
懸
(
か
)
けて幻の
栖所
(
すみか
)
のように今の生活を思うような心と、夜も
寐
(
ね
)
られぬほど血の
涌
(
わ
)
くような心とが、彼には殆ど同時にあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
下の方から見る見るうちに
涌
(
わ
)
いて来て、それが互に
鬩
(
せめ
)
ぎ
合
(
あ
)
ってはどちらとへともつかず動かされながら、そこいら一面を物凄いほど立ちこめ出していた。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
日なたぼこりで孫いじりにも飽いた爺の仕事は、
啣
(
くわ
)
え
煙管
(
ぎせる
)
の
背手
(
うしろで
)
で、ヒョイ/\と野らの
麦踏
(
むぎふみ
)
。若い者の仕事は東京行の
下肥
(
しもごえ
)
取
(
と
)
りだ。寒中の下肥には、
蛆
(
うじ
)
が
涌
(
わ
)
かぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
崖にはところどころ、岩の割れ目に水が
涌
(
わ
)
いていて、北向きであるために、そこは真夏でも陽のさすことがなく、いつもじめじめしているし、ひんやりと涼しかった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
伊都
(
いと
)
郡の野村という所などは、弘法大師が杖で突いてから
涌
(
わ
)
き出したと伝わって、幅五尺ほどの泉が二十五間もある岸の上から落ちて、広い区域の田地を潤しています。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
生命は
滞
(
とどこお
)
るところなく流動する。創造の華が枯木にも咲くのである。藤原南家の
郎女
(
いらつめ
)
が
藕糸
(
はすいと
)
を
績
(
つむ
)
いで織った
曼陀羅
(
まんだら
)
から光明が泉のように
涌
(
わ
)
きあがると見られる暁が来る。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
攣
(
ちぢ
)
れた
褐色
(
とびいろ
)
の皮の上にほとばしる肉汁の香りが室内に漂うて人々の口に水を
涌
(
わ
)
かしている。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
「親父が
真
(
ほん
)
の思いつきのように、あすこは昔
温泉
(
ゆ
)
の
涌
(
わ
)
いていたところかも知れないと言ったんだ。それが頭に残っていたのだろう。僕は君の屋敷から温泉が涌き出した夢を見た」
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その中から
涌
(
わ
)
いて来る自然の
工
(
たくみ
)
の持つ一つの雰囲気は私に強い感動を与えた。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
日蓮上人がやはり諸君の三十五方里の中から
涌
(
わ
)
いて出でたことであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一村十二戸、温泉は五箇所に
涌
(
わ
)
きて、五軒の宿あり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それゆえ天元五年に成って、
永観
(
えいかん
)
二年に
上
(
たてまつ
)
られた『医心方』が、
殆
(
ほとん
)
ど九百年の後の世に
出
(
い
)
でたのを見て、学者が血を
涌
(
わ
)
き立たせたのも
怪
(
あやし
)
むに足らない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
が、さて、こうやって待ち構えたような気分でいると、別に好い事なんぞは何処からも
涌
(
わ
)
いて来そうもない。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
冴
(
さ
)
えかえる初春の空に
白光
(
しろびか
)
りする羽たゝきして雲雀が鳴いて居る。春の
驩喜
(
よろこび
)
は聞く人の心に
涌
(
わ
)
いて来る。雲雀は麦の
伶人
(
れいじん
)
である。雲雀の歌から武蔵野の春は立つのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一 から松のみぎり左に
涌
(
わ
)
くいぢみ、汲めども
呑
(
の
)
めどもつきひざるもの
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこには、隠れた地の底から
涌
(
わ
)
いて来たままの鉱泉が
淀
(
よど
)
んでいた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「それじゃあ、まだ、あそこには
涌
(
わ
)
き湯が出ているだな」
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
藤田は
股栗
(
こりつ
)
した。一身の恥辱、家族の悲歎が、
頭
(
こうべ
)
を
低
(
た
)
れている青年の想像に浮かんで、目には涙が
涌
(
わ
)
いて来た。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
何かごおっという微妙な音といっしょになってそれが絶えず
涌
(
わ
)
いているような幻覚さえおこってくるようだ。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
涌
漢検準1級
部首:⽔
10画
“涌”を含む語句
涌出
涌湯
地涌
泉涌寺
数千地涌
涌谷
小涌谷
數千地涌
涌井
涌然
波濤洶涌
涌來
大涌谷
涌泉堂
涌泉蓮珠
一涌
涌立
涌蓮
涌起
湧涌