しほ)” の例文
力草ちからぐさ漸々やう/\と山へ這上はひあがりて見ば此はいかに山上は大雪おほゆきにて一面の銀世界ぎんせかいなり方角はうがくはます/\見分がたく衣類いるゐには氷柱つらゝさがしほぬれし上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
茶店の裏は直ぐ神田川ですが、少しばかりの崖になつて、折からの上げしほが、ヒタヒタと石垣を洗つて居ります。
それからにちおなじことをしてはたらいて、黄昏たそがれかゝるとうすづき、やなぎちからなくれてみづくらうなるとしほ退く、ふねしづむで、いたなゝめになるのをわたつていへかへるので。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夜もだん/\更けて、月が高く昇り、松に吹く風の音がさえにさえて来ますと、果して空から大きな釣瓶が下りて来て、しほの中に、ドブン、ザワ/\と音を立てました。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
そんな駕籠なんぞはしほで幾らも流れて來らあ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ひとりしほげの闇をゆく
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
むかししほかよひけん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
罷違まかりちがふて旧道きうだうみな歩行あるいてもしうはあるまい、ういふ時候じこうぢや、おほかみしゆんでもなく、魑魅魍魎ちみまうりやうしほさきでもない、まゝよ、とおもふて、見送みおくると親切しんせつ百姓ひやくしやう姿すがたえぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鶉の声がます/\えると疱瘡の神はしほ退いて行くやうに、王様からぢり/\と退いて行きます。それと一緒に王様のお顔には、日がさしてくるやうに血の気が紅々あかあかとさして来ます。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「榮御前も八しほも居るよ、證據になる菓子などを、其邊に殘して置くものか」
掛たら彼方はおどろききふ病人の診察みまひもどりと答へし形容ようす不審いぶかしく殊に衣類いるゐ生血なまちのしたゝり懸つて有故其の血しほは如何のわけやと再度ふたゝび問へば長庵愈々驚怖おどろき周章あわて嗚呼ああ殺生せつしやうはせぬ者なりえきなきことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どんなうらでもしほとほつてゐますから、深川ふかがは行留ゆきどまりといふのはありませんや。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この水草みづくさはまたとしひさしく、ふねそこふなばたからいて、あたかいはほ苔蒸こけむしたかのやう、與吉よきちいへをしつかりとゆはへてはなしさうにもしないが、大川おほかはからしほがさしてれば、きししげつたやなぎえだみづくゞ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それがはなれもはなれた、まつすぐに十四五町じふしごちやうとほい、ちやう傳通院前でんづうゐんまへあたりとおもところきこえては、なみるやうにひゞいて、さつまたしほのひくやうにえると、空頼そらだのみのむねしほさびしくあわえるとき、それを
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)