すて)” の例文
マッチも出て居たろうけれどもマッチも何も知りはせぬから、ストーヴで吸付すいつけた所が、どうも灰吹がないので吸殻すいがらすてる所がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そんな奴はイクラ助けても帰順する奴じゃないけに、総督府の費用を節約するために、ワシの一存で片端かたっぱしから斬りすてる事にしておった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
愕然びつくりし山水をすてて此娘を視るに一揖おじぎしてり、もとの草にしてあしをなげだし、きせるの火をうつしてむすめ三人ひとしく吹烟たばこのむ
○英国王ハ我州民ノ保護ヲ廃シ、我諸州ニ向テいくさリタルニ由テ、自カラ此諸州ヲ支配スルノ権ヲすてタルナリ。
人間かかる清福あるに世をはかなみて自ら身をすてんとするかの小女こそいたわしけれとまたその事に思い到りて
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
つく探索たづねしかど更に樣子のしれざりしに今六右衞門の物語りにて久八こそは彼の時にすてたる我が子に相違さうゐなしと心の中に分明わかりゆゑしきりに不便ふびん彌増いやまして只管ひたすらいのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
年寄としよりてた名所さへある世の中ぢや、わたしが世をすてて一人住んでつたというて、何で怪しう思はしやる。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さきにわがため命をすてし、阿駒おこま赤心まごころ通じけん、おぞくも爾釣り寄せられて、罠に落ちしもがれぬ天命。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
お島のそんな家庭に縛られている不幸に同情しているような心持も、かすかに受取れたが、お島は何だか厭味いやみなような、くすぐったいような気がして、後でもみくしゃにしてすててしまった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と鶴の一声ひとこえで、たちまち結構なお料理が出ました。水飴をすてると、お手飼てがい梅鉢うめばちという犬が来てぺろ/\皆甜めてしまいました。それなりにりますとお庭先がしんと致しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
姦淫の恐るべきも亦之がためである、「若し汝の眼汝を罪におとさば抉出ぬきいだして之をすてよ、そは五体の一を失うは全身を地獄に投入れらるるよりは勝ればなり」とある(同五章二十九節)
このお温習さらい程私の嫌いな事はなかったが、之をしないと、じきポチをすてると言われるのが辛いので、渋々内へ入って、かたの如く本を取出し、少しばかりおんにょごおんにょごとる。それでおしまいだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
樺太はやはり冬にべきところだと思う。私はここで童謡はできるかも知れないと思えるが、北国ほっこく風の民謡は到底作れそうにもない。夏は南国だ、熾烈しれつで、あの深刻な悩気とすてばちの気分は。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
最早もはや夢でも幻でもない。最も現実的な、すてては置けぬ大椿事だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
愕然びつくりし山水をすてて此娘を視るに一揖おじぎしてり、もとの草にしてあしをなげだし、きせるの火をうつしてむすめ三人ひとしく吹烟たばこのむ
猟犬は霎時しばしありて、「某今御身とちぎりを結びて、彼の金眸を討たんとすれど、飼主ありては心に任せず。今よりわれも頸輪くびわすてて、御身と共に失主狗はなれいぬとならん」ト、いふを黄金丸は押止おしとど
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
千太郎と呼昨日きのふかはる身代となり我が身の安心なせしに付ても其むかし京都にて妻のお久の不仕合ふしあはせ又藤川の宿はづれへすてし我が子は其後如何になりしやなさけある人に拾はれそだちしかと種々しゆ/″\手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
年取った親父や亭主思いの女房をもすてて死のうと云う心になりましたが、これは全く思案のほか、色情から起りました事で、此の色情では随分怜悧りこうなお方も斯様になりますことが間々あります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何処どッかの人がいぬすててッたと、私は二三度反覆くりかえして見たが、分らない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
農夫はしば/\おくるるゆゑつひにはすてひとりさきの村にいたり、しるべの家に入りて炉辺ろへんあたゝめて酒をくみはじめ蘇生よみがへりたるおもひをなしけり。
背中へ竹の突通るほど赤坊あかんぼを藪のなけほうり込んですてるとア鬼のような心だ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なが何故いかにも道理もつともなる尋ねなり今日まで云ざりしがじつは其方事七年前藤川宿の町外まちはづれにすてて有しなり其時其方のたもと書付かきつけて有しは是なりと彼のそう落書らくがきまで殘り無物語に及びければ久八は子供心に我が身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
棄狗すていぬッて……誰かがすててッたのさ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
農夫はしば/\おくるるゆゑつひにはすてひとりさきの村にいたり、しるべの家に入りて炉辺ろへんあたゝめて酒をくみはじめ蘇生よみがへりたるおもひをなしけり。
何でもハア人のらなくなってすてる物べえ拾うので、番頭さんはそんな根性がちっとべえ有りやんすねえ、根性が無くちゃそんな事は云わないもんだ、自分の心に有ると人もそうかと思うものだが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これよりのち此農夫のうふ家をすてむすめをつれて順礼じゆんれいにいでけり。ちかき事なれば人のよくしれるはなしなり。
これよりのち此農夫のうふ家をすてむすめをつれて順礼じゆんれいにいでけり。ちかき事なれば人のよくしれるはなしなり。