栄華えいが)” の例文
旧字:榮華
新政府にし、維新功臣の末班まっぱんに列して爵位しゃくいの高きにり、俸禄ほうろくゆたかなるにやすんじ、得々とくとくとして貴顕きけん栄華えいが新地位しんちいを占めたるは
悪魔また彼を最高いとたかき山に携えゆき世界の諸国とその栄華えいがとを見せてなんじもし俯伏ひれふして我を拝せばこれらをことごとくなんじに与うべしと曰う
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
むかし支那しなに、ある天子てんしさまがあって、すべてのくにをたいらげられて、りっぱな御殿ごてんてて、栄誉えいよ栄華えいがおくられました。
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ自分ひとりの栄華えいがのためだけに——そんな小さい慾望だけのために——これほど大きな犠牲に恬然てんぜんとしていられようか。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地方の秩序はみだれに紊れているのだぞ! 都の連中が「あなめでたや、この世のめでたき事には」などとうそぶいて、栄華えいがふけっている間に
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
衣川ころもがわといえば誰も歴史に覚えがあろう。近くの平泉ひらいずみ金色堂こんじきどうの名において、藤原三代の栄華えいがの跡を語っている。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
昔の栄華えいがを語る古城のほとり、朽ちかけた天守閣にはつたかずらがからみ、崩れかけた石垣にはいっぱいこけが生え、そのおほりに睡蓮の花が咲いていたら、私達は知らぬ間に
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「ああ玉杯ぎょくはいに花うけて、緑酒りょくしゅに月のかげやどし、治安のゆめにふけりたる、栄華えいがちまた低く見て……」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その部屋では、王たちが大きな石のひつぎの中でまどろんでいるのです。その棺の上の壁には、この世における栄華えいがをあらわすもののように、一つの王冠おうかんが人目をひいています。
この大江戸には、父親を、打ちたおし、蹴り仆し、にじり、狂い死にをさせて、おのれたちのみ栄華えいがを誇る、あの五人の人達が、この世を我が物顔に、時めいて暮しております。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ひんすりゃどんになったように自分でせえおもうこのおれを捨ててくれねえけりゃア、ほんこったあ、明日の富に当らねえが最期さいごおらあ強盗になろうとももうこれからア栄華えいがをさせらあ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
左大臣が権勢をほしいまゝにしていた間こそ、彼女も本院の北の方として多くの人の崇敬を集め、羨望の的となっていたであろうが、左大臣の死後は、恐らく昔日せきじつ栄華えいがも一朝の夢と化して
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きてときにはさんざん悪口わるぐちわれたものが、んでからくちきはめてめられたり、またその反対あべこべに、生前せいぜん栄華えいがゆめたものが、墓場はかばってからひどいはずかしめをけたりします。
まして九つより『栄華えいが』や『源氏げんじ』手にのみ致し候少女は、大きく成りてもます/\王朝の御代みよなつかしく、下様しもざま下司げすばり候ことのみつづり候今時いまどきの読物をあさましと思ひ候ほどなれば
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たとい今生こんじょうでは、いかなる栄華えいがを極めようとも、天上皇帝の御教みおしえもとるものは、一旦命終めいしゅうの時に及んで、たちまち阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄にち、不断の業火ごうかに皮肉を焼かれて、尽未来じんみらいまで吠え居ろうぞ。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、それまでの、ながあいだ栄華えいが生活せいかつおもせば、わたしは、しあわせのほうで、なにも、うらむことはないのであります。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どれほど思っているか、それは今さらいうまでもない。松のよいところ、水のよい所、そちの好きな所へ寮を建ててやろう、どんな栄華えいがもさせてやろう
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下人しもびとあこがれる、華かな詩歌管絃しいかかんげんうたげも、彼にとっては何でしたろう? 移ろいやす栄華えいがの世界が彼にとっては何でしたろう? 花をかざして練り歩く大宮人おおみやびとの中に
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
治安のゆめにふけりたる、栄華えいがちまた低く見て
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ウム……では、ひとまずめいめいかってに落ちのびて、またの時節をうかがい、京都へあつまって、人穴城ひとあなじょう栄華えいがにまさる出世のさくを立てるとしよう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うらむ、うらまないといって、もう二きみは、栄華えいがることはあるまい。」と、いたがいいました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
反対に、一部の黄巾賊が、その血をすすり肉をくらって、不当な富貴ふっき悪辣あくらつ栄華えいがをほしいままにしているのだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の流転るてんのはげしさ、栄華えいがのはかなさ、人心のたのみなさ、なべて、かたちのあるものの泡沫ほうまつにすぎない浮き沈みであることを、余りにも、かれは見てきた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
所詮しょせんは終生の栄華えいがでもなし、女の不幸にきまっている。ことに心ぐるしいのは死をしている士道の純白にも何か一点の汚染しみがのこるような気がするのだった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御随身というのは、いっしょに、栄華えいがもしたり威張ったりした人たちだけのことだろう
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の栄華えいがに忙しくなって、旗を挙げた時の意気や良心は、忘れてしまうよ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じぶんだけの命と栄華えいがをとりとめた武士ぶしである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)