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枕頭
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ちんとう
ふりがな文庫
“
枕頭
(
ちんとう
)” の例文
父君の死というものも日々
枕頭
(
ちんとう
)
にいて看護してきたあとに至ったことであれば、世の習いとしてあきらめようもあるのであろうが
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
けれど彼女がそばを離れようとすると、彼はすぐにまた咳を始めた。彼女は震えながら彼の
枕頭
(
ちんとう
)
についていなければならなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「天子、今ご気息も危うし。
枕頭
(
ちんとう
)
に公を召して、漢室の後事を託せんと
宣
(
のたま
)
わる。いそぎ参内あるべし」と、うやうやしくいった。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人々は不幸な友の
枕頭
(
ちんとう
)
に
凝坐
(
ぎょうざ
)
して、悲嘆にくれたが、もとより人の思いによって消える命が取戻せようものではなかった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その
虻
(
あぶ
)
の
羽音
(
はおと
)
を、
聞
(
き
)
くともなしに
聞
(
き
)
きながら、
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
枕頭
(
ちんとう
)
に
座
(
ざ
)
して、じっと
寝顔
(
ねがお
)
に
見入
(
みい
)
っていたのは、お七の
着付
(
きつけ
)
もあでやかなおせんだった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
同胞新聞はこゝに建設せられたのぢやないか、吾々は世の
酔夢
(
すゐむ
)
に覚醒を与へんが為めに深夜、彼等の
枕頭
(
ちんとう
)
に之を送達するのぢやないか、——馬鹿ツ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
それから、彼が
枕頭
(
ちんとう
)
で語る言葉から、彼の読み漁っている本のなかの知織の輪郭まで感じとっているような気もした。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
然
(
さ
)
るにまた畳を
摺来
(
すりく
)
る
跫音
(
あしおと
)
聞
(
きこ
)
えて、物あり、予が
枕頭
(
ちんとう
)
に近寄る
気勢
(
けはひ
)
す、はてなと思ふ内に
引返
(
ひつかへ
)
せり。
少時
(
しばらく
)
してまた
来
(
きた
)
る、再び引返せり、三たびせり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と呼ぶ与吉の声に、ぱッと
枕頭
(
ちんとう
)
の乾雲丸をつかんではね起きた左膳、板戸を引くと庭一ぱいの雑草に日光が踊って、さわやかな風が寝巻の裾をなぶる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
わたくしの母の語るところによれば、松浦翁はいつも早朝毅堂先生のなお
臥褥
(
がじょく
)
を出でざる頃訪い来り、
枕頭
(
ちんとう
)
に坐し高声に笑談して立ち帰るを常とした。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ほとんど病苦のその身にあることを知られなかったようであった。
崩御
(
ほうぎょ
)
の数日前、今のカイゼルを
枕頭
(
ちんとう
)
に召され
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
死者の
枕頭
(
ちんとう
)
に刃物を置く習慣は、その刃物の
光鋩
(
こうぼう
)
、もしくは、その形状の
凄味
(
すごみ
)
より来る視覚上の刺戟暗示を以て
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ジュリアは事務室の中で、
急拵
(
きゅうごしら
)
えのベッドの上に寝かされていた。
枕頭
(
ちんとう
)
には医学博士蝋山教授が法医学とは勝手ちがいながら何くれとなく世話をしていた。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私達は
枕頭
(
ちんとう
)
に並んですわった。どうしていいのか判らない。恐しく悲しいような、むなしいような気がする。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
息を切らし切らし家に著いた時には、もう雪は小降りになつてゐた。入口から直ぐの部屋には昨夜来赤彦君の
枕頭
(
ちんとう
)
をまもつた人々の一部が疲れて眠つてゐる。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
菅丞相の怨霊がしば/\
枕頭
(
ちんとう
)
に現れて呪いの言葉を洩らすので、
陰陽師
(
おんみょうじ
)
や医師を招いて、さま/″\の祈祷、療治、
灸治
(
きゅうじ
)
等をして見るけれども一向に
利
(
き
)
き目がなく
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
雨しとしとと降りて
枕頭
(
ちんとう
)
に客なし。古き雑誌を出して星野博士の「守護
地頭
(
じとう
)
考」を読む。十年の疑一時に
解
(
と
)
くるうれしさ、
冥土
(
めいど
)
への土産一つふえたり。(五月二十日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は、眼鏡越しに、廣介の
枕頭
(
ちんとう
)
に並んだ親族達を見廻して、癲癇とカタレプシの関係、それと仮死の関係等を、むずかしい術語を使って、くどくどと説明するのでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
枕頭
(
ちんとう
)
にすえられた
経机
(
きょうづくえ
)
には
樒
(
しきみ
)
の枝をかざり、香のけぶりが燈明のまたたきのなかにゆれていた。
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女の
枕頭
(
ちんとう
)
に、
殆
(
ほとん
)
ど附き切っている近藤博士の顔は、それにつれて、
憂
(
うれ
)
わしげに曇って行った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この頃の或る新聞に、沼南が流連して
馴染
(
なじみ
)
の女が病気で
臥
(
ね
)
ている
枕頭
(
ちんとう
)
にイツマデも附添って手厚く看護したという逸事が載っているが、沼南は
心中
(
しんじゅう
)
の
仕損
(
しそこな
)
いまでした
遊蕩児
(
ゆうとうじ
)
であった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
猩猩
(
しやう/″\
)
党は
何処
(
どこ
)
かで飲み倒れて
仕舞
(
しま
)
つたのであらう。𤍠田丸の濡れた
舷梯
(
げんてい
)
を
上
(
のぼ
)
つて空虚な室に一人寝巻に着更へた時はぐつたりと
労
(
つか
)
れて居た。
枕頭
(
ちんとう
)
に武田工学士からの
招待
(
せうだい
)
状が届いて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
と一同が自動車に乗り込むのを見送って、清之介君は花嫁の休んでいる部屋へ引き返し、羽織袴のまゝでその
枕頭
(
ちんとう
)
に侍した。式は済んでもまだ言葉一つ交さないのだから女房とは思えない。
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
昭和八年一月一日 鎌倉宅
病臥
(
びょうが
)
。
皿井
(
さらい
)
旭川
(
きょくせん
)
来、
枕頭
(
ちんとう
)
に壺の図を描く。
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
次郎はかたときも
枕頭
(
ちんとう
)
をはなれず、コスターの
看病
(
かんびょう
)
に
寝食
(
しんしょく
)
を忘れた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
枕頭
(
ちんとう
)
のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
「ああ、寝よう。夕刊を
枕頭
(
ちんとう
)
に置いてくれ。」
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
枕頭
(
ちんとう
)
へ行って見るとその通りであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
臨終の
枕頭
(
ちんとう
)
の親友に彼は言った。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
ルイザとクリストフとは、その
枕頭
(
ちんとう
)
につき添って、交替に看護をした。医者、薬剤、室内の十分な火、特別の食物、などが必要だった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ガヤガヤしてたやつがぴったり
止
(
と
)
まる。見る——なるほど、
銀地
(
ぎんじ
)
に短冊を散らし
貼
(
ば
)
りにした屏風が、死人の
枕頭
(
ちんとう
)
を囲むように、逆さに置いてあるのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その一つの部屋に、
絢爛
(
けんらん
)
な夜具が敷いてあり、
枕頭
(
ちんとう
)
の燭台も、あたりのものの気はいも、何となく貴人の空気と、
艶
(
なま
)
めいた
後閨
(
こうけい
)
の匂いをただよわせている。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この調子では今に警視庁は都下に起る毎日百人
宛
(
ずつ
)
の死者の
枕頭
(
ちんとう
)
に立って殺人審問をしなければ居られなくなるだろうなどと
毒舌
(
どくぜつ
)
を
奮
(
ふる
)
い、一杯
担
(
かつ
)
がれた
腹癒
(
はらい
)
せをした。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昔は一箇の美人が
枕頭
(
ちんとう
)
に座して飯の給仕をしてくれても嬉しいだろうと思うたその美人が
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
上皇の保良宮の滞在は、病気の
臥床
(
がしょう
)
の滞在だった。道鏡のみが
枕頭
(
ちんとう
)
にあり、日夜を離れず、修法し、薬をねり、看病した。そして上皇は全快した。彼女の心はみたされたから。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それから、その弱々しいなかにも何か訴えを含んでいる声にひきつけられて、彼は妻の
枕頭
(
ちんとう
)
にそっと近寄ってみた。妻の顔は昨夜からひきつづいている
不機嫌
(
ふきげん
)
な
苛々
(
いらいら
)
したものを
湛
(
たた
)
えていた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
再び
瓦斯
(
ガス
)
ストーブに火をつけ、読み残した
枕頭
(
ちんとう
)
の書を取ってよみつづけると、興趣の加わるに従って、燈火は
熒々
(
けいけい
)
として更にあかるくなったように思われ、柔に身を包む毛布はいよいよ暖に
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして、『これはたいしたものらしい』と云つた。それから、『どうも写生に徹したものだ』とも云つたさうである。そこで、けふも赤彦君の
枕頭
(
ちんとう
)
でその絵の話などをし、時に
諧謔
(
かいぎやく
)
談笑した。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
人々は、瀕死の病人の
枕頭
(
ちんとう
)
に坐して、刻一刻呼吸の絶えて行くのを、どうすることも出来ないでただ眺めていなければならない時の、あの名状し難い悲痛な惨酷な感じにうちのめされていた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
寝床
(
ねだい
)
の上に起き直りたる梅子の
枕頭
(
ちんとう
)
には、校服のまゝなる剛一の
慰顔
(
なぐさめがほ
)
なる
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
呉青秀はその中を踏みわけて、自分の
室
(
へや
)
に来て見るには見たものの、サテどうしていいかわからない。妻の姿はおろか
烏
(
からす
)
の影さえ動かず。
錦繍
(
きんしゅう
)
帳裡
(
ちょうり
)
に
枯葉
(
こよう
)
を
撒
(
さん
)
ず。
珊瑚
(
さんご
)
枕頭
(
ちんとう
)
呼べども応えずだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
十月十二日 愛子
枕頭
(
ちんとう
)
小句会。
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
二人は子供の
枕頭
(
ちんとう
)
で、苦しい日々を過ごし、ことに険悪な一夜を過ごした。その一夜が明けると、もう
駄目
(
だめ
)
だと思われてたリオネロは助かった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
捜査課の幹部は、すぐに松下研究員の
枕頭
(
ちんとう
)
に集ってきた。そして彼の耳のところに口をつけて、叱りつけるように相手を励しながら、事件の重要点をたずねるのであった。
街の探偵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして産室へしずかに入って、鶴子夫人の
枕頭
(
ちんとう
)
に立つと、彼女はまったく自我もなかった。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
翌朝、彼が眼をさますと、
枕頭
(
ちんとう
)
に小さな
熊
(
くま
)
や
家鴨
(
あひる
)
の
玩具
(
おもちゃ
)
が並べてあった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
何かを
誦
(
とな
)
えてるのが見てとられた。オリヴィエはその
枕頭
(
ちんとう
)
に来て、彼女の上に身をかがめた。彼女はまだ彼を見分けて、弱々しく
微笑
(
ほほえ
)
みかけた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
半兵衛重治の病は急に
篤
(
あつ
)
いと沙汰された。彼の陣屋の幕は寒々と夕風に揺れ、その宵、丸木組の病屋のうちには、秀吉も
枕頭
(
ちんとう
)
に詰め、官兵衛も昨夜以来、詰めきって、あらゆる
看護
(
みとり
)
を尽していた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その翌日になると、カビ博士は又僕の病室を訪れて、
枕頭
(
ちんとう
)
に立った。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
母は彼に着物をぬがせ、寝床に連れてゆき、その
枕頭
(
ちんとう
)
にすわって、彼がいくらか落着くまでそばについていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“枕頭”の意味
《名詞》
枕頭(ちんとう)
枕元。
(出典:Wiktionary)
枕
常用漢字
中学
部首:⽊
8画
頭
常用漢字
小2
部首:⾴
16画
“枕頭”で始まる語句
枕頭鳥不啼