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斑
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まだ
ふりがな文庫
“
斑
(
まだ
)” の例文
すると向うの窓硝子は
斑
(
まだ
)
らに外気に曇った上に小さい風景を現していた。それは黄ばんだ松林の向うに海のある風景に違いなかった。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
黒白
斑
(
まだ
)
らの、仔馬ほどもあるのが、地べたへなげだした二本の前脚に大きな頭をのっつけ、ながい舌をだしたまま眠っている。——
こんにゃく売り
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
ふだんの
斑
(
まだ
)
ら禿とは違う。だが前にも言ったとおり阿Qは見識がある。彼はすぐに規則違犯を感づいて、もうその先きは言わない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その黒い
樹
(
こ
)
だちのなかに、ところどころ白い
斑
(
まだ
)
らが落ちて、その一つ一つがよく見ると、まるで姉さまの姿のやうに思はれました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
斑
(
まだ
)
らな雪、枯枝を
揺
(
ゆさ
)
ぶる風、
手水鉢
(
ちょうずばち
)
を
鎖
(
と
)
ざす氷、いずれも例年の
面影
(
おもかげ
)
を規則正しく自分の眼に映した後、消えては去り消えては去った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
下生
(
したばえ
)
の
羊歯
(
しだ
)
などの上まで、日の光が数知れず枝をさしかわしている低い
灌木
(
かんぼく
)
の隙間をようやくのことで潜り抜けながら、
斑
(
まだ
)
らに落ちていて
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
道理で、乞食のくせに、ここらの住民のどれよりも小ざっぱりした服装をして、顔には白粉のようなものを
斑
(
まだ
)
らに叩いていた。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
春は、いつの間にか紫ぐんだ優しい色でつつまれ、
斑
(
まだ
)
ら牛のように、残雪をところどころに染め、そしていつまでも静かに
聳
(
そび
)
えているのです。
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雨の日、探しあてて、やっとどうやら借りえた家は、崖やぶ
斑
(
まだ
)
らな中段に細長く建て並んでいる掘井戸のそばの一軒だった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが私の眼にはいって来るのは、茶いろに輝いている山肌が、そのところどころに黒い色を
斑
(
まだ
)
らにまじえて、高く低くうねっているだけである。
烏帽子岳の頂上
(新字新仮名)
/
窪田空穂
(著)
しかし歩いてゆくうちに、それは昼間の日のほとぼりがまだ
斑
(
まだ
)
らに道に残っているためであるらしいことがわかって来た。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
きわめて薄手な色白の皮膚が
斑
(
まだ
)
らに紅くなった。斑らに紅くなるのはある女性においては、きわめて
醜
(
みにく
)
くそして
淫
(
みだ
)
らだ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
打
(
うち
)
こぼし投げ払いし籠の底に残りたる、ただ一ツありし
初茸
(
はつたけ
)
の、手の触れしあとの
錆
(
さび
)
つきて
斑
(
まだ
)
らに
緑晶
(
ろくしょう
)
の色染みしさえあじきなく、手に取りて見つつわれ
俯向
(
うつむ
)
きぬ。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は廊下に
漲
(
みな
)
ぎる輝かしい光線の為めに、眼球の表面を刺激された
挙句
(
あげく
)
、網膜に
斑
(
まだ
)
らが出来たような不快な感じを抱いて、再びラオチャンドの室へと這入って行った。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
そして崖上の暗い藪におつかぶされてゐるこの家では、もう、いやに目まぐるしい手足を動かして襲つて来る
斑
(
まだ
)
らの黒い大きな藪蚊が、朝夕にふえて行くのであつた。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
また色
斑
(
まだ
)
らなる石の光、高き橋、春の渓谷、その水晶なす泉のほとりには金髪のニンフの群れる——また人の唯夢にのみ見るを得るもの、またわれわれを取囲む
醒
(
さ
)
めた現実
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
俄か天気の三月末の暖気は急にのぼって、若い踊り子たちの顔を美しく塗った白粉は、滲み出る汗のしずくで
斑
(
まだ
)
らになった。その
後見
(
こうけん
)
を勤める師匠の額にも玉の汗がころげていた。
半七捕物帳:39 少年少女の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
などと、娘番附の大關は、
斑
(
まだ
)
らな顏を
天道
(
てんたう
)
樣に照らされて、見得も
嗜
(
たしな
)
みもありません。
銭形平次捕物控:286 美男番附
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
肌は咲き初めた
紫陽花
(
あじさい
)
のように、濃い紺青や赤紫やまたは
瑠璃
(
るり
)
色やまたは
樺
(
かば
)
や、地味地層の
異
(
ちが
)
うに連れて所
斑
(
まだ
)
らに色も変わり諸所に
峨々
(
がが
)
たる巌も聳え曲がり
蜒
(
くね
)
った山骨さえ
露骨
(
あらわ
)
に
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万豊が
地団太
(
じだんだ
)
を踏みながら引き返してゆく後姿が栗林の中で
斑
(
まだ
)
らな光を浴びていた。線路の堤に、青鬼、赤鬼、天狗、狐、ひょっとこ、将軍などの
矮人
(
こびと
)
連が並んで
勝鬨
(
かちどき
)
を挙げていた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
ちょうど元の順帝の
至元丁丑
(
しげんていちゅう
)
の年のことで、恐ろしい兵乱があった後の郊外は、見るから荒涼を極めて、
耕耘
(
こううん
)
する者のない田圃はもとの野となって、黄沙と雑草が
斑
(
まだ
)
ら縞を織っていた。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
喬木はしんしんと両岸に立ちふさがって、空を狭くしているが、木の幹が
斑
(
まだ
)
らに明るくなるので、晴れてるのだとおもう、どうかすると梢の頭から、水が
飜
(
こぼ
)
れたように、ちらりと光って
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
森はひょろひょろと
蹌踉
(
よろめ
)
きながら後ずさりし、
膿盆
(
のうぼん
)
のような海は時々
妬
(
ねた
)
まし気な視線をギラリと
投
(
なげ
)
かける。やがて、けちくさい
斑
(
まだ
)
らな
芥
(
あくた
)
と化した地球は、だんだんに遠ざかって行く——。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
おまけに窓から向うに
六甲
(
ろっこう
)
の山がみえる、まるで真空のように空気が澄んでいるからなんだろう、山の白茶けた岩肌やところ
斑
(
まだ
)
らな松林なんぞが、眼に痛いくらい鮮明にみえるには弱った。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それでも安お召などを引張った芸者や、古着か何かの
友禅縮緬
(
ゆうぜんちりめん
)
の
衣裳
(
いしょう
)
を来て、
斑
(
まだ
)
らに
白粉
(
おしろい
)
をぬった
半玉
(
はんぎょく
)
などが、
引断
(
ひっきり
)
なしに、部屋を出たり入ったりした。鼓や太鼓の音がのべつ陽気に聞えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
醜悪な妻が有りもしない衣裳を何処からか引き出して来、
斑
(
まだ
)
らな髪を
真点
(
まんまる
)
な丸髷に結い亭主の留守を見済ませて、密夫と逢曳を遂げるなどと云う事は、或いは不可能な又は奇蹟かも知れません。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
その歌は、「この路に錦
斑
(
まだ
)
らの虫あらば、山立姫に
告
(
い
)
ひて取らせん」。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
作者は細かに見て居ないのではなく、女の顔の涙の後の色の
斑
(
まだ
)
らな薄紅の美を聯想したことで其れを現して居るのである。野の蓼の弱弱しい、
然
(
し
)
かも若さの溢れたやうな姿は作者の好んだ所である。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
斑
(
まだ
)
ら雪山には凍れ
伐
(
き
)
りし杉はなまなまと積みてみな棚にせり
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
斑
(
まだ
)
ら模様の肩掛をした、年の頃三十前後の婦人であった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
すると向うの窓硝子は
斑
(
まだ
)
らに外気に曇つた上に小さい風景を現してゐた。それは黄ばんだ松林の向うに海のある風景に違ひなかつた。
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
梧桐
(
あおぎり
)
の緑を
綴
(
つづ
)
る間から西に傾く日が
斑
(
まだ
)
らに
洩
(
も
)
れて、幹にはつくつく
法師
(
ぼうし
)
が懸命にないている。晩はことによると一雨かかるかも知れない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
斑
(
まだ
)
ら
生
(
ば
)
えのしたかたくなな雑草の見える場所を除いては、紫色に黒ずんで一面に地膚をさらけていた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
雪は中垂るみの形で、岩壁をグイと刳ぐり、
涸谷
(
からたに
)
に向いて、扇面のように裾をひろげている、その末はミヤマナナカマドの緑木が、
斑
(
まだ
)
らに黒い岩の上に乗しかかって、夕暮の谷の空気に
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「お法師さま」六条のお
牛場
(
うしば
)
のあたりを、二人は、見まわしていると、かつて、その辺の空地に寝ころんでいた
斑
(
まだ
)
ら
牛
(
うし
)
や、牛の
糞
(
ふん
)
に群れていた
青蠅
(
あおばえ
)
のすがたは一変して、どこもかしこも
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは
業病
(
ごふびやう
)
の
徴候
(
しるし
)
だよ、その
斑
(
まだ
)
らなところは、突いても切つても痛くはない筈だ、——それから、その人の鼻の穴の中を見なかつたかな、——たゞれがあるかも知れない、氣の毒なことぢや
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その視線を反射的にたどつて、少年は奇妙なものを発見した。浅い盥の向うに、美代の前面がぴんと張りひろげられ、そこに小鳥が一羽、点々と白い
斑
(
まだ
)
らのある黒い羽なみを立ててゐるのだつた。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
痩
(
や
)
せて、眼がおち
窪
(
くぼ
)
んで、唇の色も白く、尖った肩を
前跼
(
まえかが
)
みにして、いかにもうち砕かれたような姿である。明るく晴れた空から、木洩れ日が彼の顔に
斑
(
まだ
)
らの光紋を投げ、また消えては投げする。
めおと蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
風烈しき高畑越えて耳
柔
(
やわ
)
き
斑
(
まだ
)
らの仔牛道はかどらず
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
盃の底に残れる赤き酒の、
斑
(
まだ
)
らに床を染めて飽きたらず、
摧
(
くだ
)
けたる
觥片
(
こうへん
)
と共にルーファスの胸のあたりまで跳ね上る。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現に僕の左隣りには
斑
(
まだ
)
らに頭の
禿
(
は
)
げた老人が一人やはり
半月形
(
はんげつがた
)
の窓越しに
息子
(
むすこ
)
らしい男にこう言っていた。
冬
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
血は皮膚の脂肪にはじかれて
斑
(
まだ
)
らに残つた。これで落着くかと彼女は思つた。明子には
先
(
ま
)
づこの血に満ちたコップをどう処置するかが非常に重要なことに考へられて、ぢつとそれを握りしめてゐた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「身體が
斑
(
まだ
)
らになつてますね、親分」
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
身体
(
からだ
)
が
斑
(
まだ
)
らになってますね、親分」
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“斑”の解説
斑(はん)は、皮膚疾患などでみられる皮疹の一つ。皮膚の表面は盛り上がっておらず平坦で、かつ限局した病的な変化である。
(出典:Wikipedia)
斑
常用漢字
中学
部首:⽂
12画
“斑”を含む語句
斑々
斑紋
斑猫
白斑
斑馬
斑点
虎斑
斑鳩
斑點
黒斑
斑雪
石斑魚
斑犬
紫斑
赤斑
斑痕
斑入
一斑
斑牛
斑白
...