こさ)” の例文
「皆んなと一緒に晩飯をやつて居ました、——腹をこさへなきや、一と働きする力も出ません。何しろ半日怒鳴つて居る商賣ですから」
「ようし。おれも大三だ。そのすきとほったばらの実を、おれがこさへて見せよう。おい、みんなばらの実を十貫目ばかり取ってれ。」
よく利く薬とえらい薬 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
飴屋の小父さんは、鶯が壊れたから、代りをこさえて、そして持ってけッて云ったんですよ。………私、それどころじゃないんですもの。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの今の宮崎さんの先代はこの橋の袂で安倍川餅を売ってあれ丈けの身上をこさえたそうでがん。人間、俥を曳いて坂を上る如し。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こんな事を言ひ/\、樵夫きこりやつ枯木かれきり倒すと、なかから土でこさへたふくろの形をした物が、三つまでころころと転がり出した。
助「そりゃア親方が丹誠をしてこさえたのだから少しぐらいの事では毀れもしまいが、此の才搥さいづちなぐって毀れないとはちっ高言こうげんすぎるようだ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
云いつけると、外交部から交付される筈の、外国へのパスポートまで、ちゃんと、印まで間違いのない印をしてこさえてきた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
彼処あそこへ避難所をこさいて置いて、ざといえば直ぐ逃げ出す用意はしていた。アナーキストでも地震の威力にはかなわない、」
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「それでは之でお別れです。」と立ち上りますと、少し待てと云つて、鍋の飯を握つて大きい丸飯ぐわんぱんを九つこさへて呉れました。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
然し村内に不幸があった場合には、必庭園の花を折って弔儀ちょうぎに行く。少し念を入れる場合には、花環はなわなどをこさえて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そら、いつか話したことがあるだろう。この四月に新しくこさえて、一度も手を通さねえで蔵入くらいりにした奴さ。秋風が立っちゃあ遣り切れねえから、御用人を
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ああ、いいよ。僕、早く見付けて、伯父さんのこさえたこの電話機でネ、東京に住んでいる人と話をしたいの」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そんなこと云えばあたいがくしゃっとまいってさ、くらがえしてでも三〇〇ぐらいのお金はこさえるだろう、って見当つけて来たんさ、子供だましだよまったく」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕は成功したら、鷹の城山のてっぺんへ高い高い塔をこさえて、そこへ兄さんを入れてあげるつもりや
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「爺さん? 五、六本ばかり熱くしてくれ。それから、みんなの分を何かご馳走ちそうこさえてくれよ」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「ええ、俺は殆ど二十年も信心して来た。こらえて来たんだ。縛られて生きて来た。バイブルに噛りついて来た。そして、気がついて見ると——こさえ事だ! 拵えごとだよ」
「ほんとに」と、吉弥も笑って、「指輪にこさえてやろうと思ってたら、取り返されてしまった」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「お上さんは莫迦に鉄火な女だっていうから、外套がいとうを一つこさえてもらおうと思うんだが……」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「このごろ大阪の相撲どもが、毛唐けとうの足払いと名づけてこさえよる、それを一本貰うて来た」
『こんな広い不便なものをこさえてどうする積りであろう。』などというつぶやきをきいたものだ。それが今はどうであろう。急行の出る前などは旅客が一杯で身動きがならぬ有様である。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
今の話のようなすげえところをこさえといて、その物欲しそうなつらの外国の金持ちを集めてしこたまふんだくって一晩引っ張り廻そう——てのが、つまり、これあわたしの、なげえあいだの、ま
「ああ、たべっちゃった。お父さんにだけ少しこさえてあげますべい」
新万葉物語 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「僕、如何してもこさえたい、直ぐにでも。」
鱗雲 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「いやに沢山結び玉をこさえやがったな」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
第一そんな重いものを穴の上に持上げるのは、一人や二人の力では出来ない。それに、あの仕掛けはツイ五日か三日前にこさえたものだ
お客様何でがすか、お前様、子守唄こさえさっしゃるかね。袋戸棚の障子へ、書いたものっとかっしゃるのは、もの、それかね。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羽織は最初に見捨てた女がこさへてくれたので、は薄かつたが、女の心よりは長持もしたし、値段も幾らか張つてゐた。
「そうだ。おら去年烏瓜の燈火あかしこさえた。そして縁側えんがわつるして置いたら風吹いて落ちた。」と耕一が言いました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今日はう仕事は出来はすまい、ムヽ仕事と云えばわしも一つ煙草盆をこさえてもらいたいが、何ういうのがいかな……これは前住せんじゅうが持って居ったのじゃが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
快くなったら姉の嫁した家へ遊びに行くと云って、彼女は晴衣をこさえてもらって喜んで居たが、到頭其れを着る機会もなかった。棺の上には銘仙のあわせおおうてあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「代りなどこさえてやらないがいいや、あんな面白くもない家に」と、吉弥は起きあがった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「高尚な翫具をこさえて、一儲けしようってんですがね……このちいさいのが水雷艇すいらいていです」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二年三年はおろか、たとい五年が十年でもわたしはきっと待っている。わたしの心に変りはない。お前も江戸の若い女子おなごに馴染などをこさえて、わたしという者のあることを忘れてくれるな。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「一刻ばかりまえですが」と治兵衛が話しだした、「うちのかかあかゆを持たせてよこすと、ええ、昨日のひるから寝ていたんで、粥をこさえて持って来させると、そこの仕事場で倒れていたんだそうです」
「姉さん……姉さん、田雀をこさえてくっだい、姉さんてば」
新万葉物語 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「ほんじゃ、ゆっくり休ませえ。薬もこさえで置ぎしから。」
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
申上げます、——皆んなブチまけてしまひますだよ、——この仕掛は亡くなつた主人の申付けで、この私がこさへたに違ひありません。
ゐのしゝきばこさへました、ほんにさいでござります、御覧ごらうじまし。』と莞爾々々にこ/\しながら、てのひららしてせたところを、二人ふたり一個ひとつづゝつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しゅうとが腹を立って追出すくらいでございますから、何一つもくれませぬ、それ故少しは身形みなりこさえたり、江戸へくには土産でも持ってかなければなりませぬ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「俺は俺、忰は忰さ。忰が一人酒を飲んだところで、俺が禁酒会員を二人こさへたら填合うめあはせはつく筈だ。」
飲酒家 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
炬火たいまつ如何どうだな。おゝ、ひささんが来た。久さん/\、済まねえが炬火をこさえてくんな」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(この餅こさえるのは仙台領せんだいりょうばかりだもな。)嘉吉はもうそっちを考えるのをやめて話しかけた。(はあ。)おみちはけれども気のさそうに返事へんじしてまだおもての音を気にしていた。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうち解けたような、また一物いちもつあるような腹がまえと、しゃべるたびごとにゆがむ口つきとが、僕にはどうも気になって、吉弥はあんな母親のこさえた子かと、またまた厭気がさした。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「いつ旅行するの。私着物をこさえて待っていたのに。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
離屋の壁の中に隱した小判は、極印がなくて使へないので、番頭の善七はたがねの極印をこさへて、その小判に打つつもりだつたんだらう。
はじめは、不思議ふしぎ機関からくり藩主様とのさま御前ごぜんせいふて、おしろされさしけえの、其時そのときこさへたのが、五位鷺ごゐさぎ船頭せんどうぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「俺は俺、せがれは忰さ。忰が一人酒を飲んだところで、俺が禁酒会員を二人こさへたら填合うめあはせはつく筈だ。」
邪魔になるといっても、富五郎の手に負いない、所が幸い安田一角がお前に惚れているから、一角をおいやって弘行寺の裏林で殺させて置いて、顔に傷をこさえてうちへ駈込んだが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それも許さん、金をこさへて來い! 金を拵へて來い!」
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「どうしてこさへたんだい。野葡萄を絞ってそれから?」
柳沢 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)