)” の例文
旧字:
そしてれ言をかわしながらどっとそこで一つ笑うと、声もすがたも、たちまち四明颪しめいおろしにつつまれて暗い沢の果てへ去ってしまった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず、窓際へゆっくり席をとって、硝子窓がらすまどを思いッきり押しあける。と、こころよい五月の微風びふうが、れかかるように流れこんで来た。
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そうして今はほぼ忘れた人も多かろうが、このツビまたはスビというのが、じつはよっぽど可咲おかしいれの名だったのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
芝生の花壇で尾籠びろうなほどなまの色の赤い花、黄の花、紺の花、赭の花が花弁を犬の口のように開いて、れ、み合っている。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
というがあるくらいですから、江戸八百八町に加えてもさしつかえはなかろうと思われるのに、大木戸を一歩外へ出るともう管轄違いです。
その時に「景清」の「松門謡」に擬した次のようなうたいが出来たといって、古い日記中から筆者に指摘して見せた。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
当時、なんぴとの構へたれ事でございませうか、天狗てんぐ落文おとしぶみなどいふ札を持歩く者もありまして、その中には「徹書記てっしょき宗砌そうぜい、音阿弥、禅竺、近日此方こちらきたシ」
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ものの、化身の如き、本家ほんけの婦人の手すさびとは事かわり、口すぎの為とは申せ、見真似のれ仕事。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れ絵のように、儀礼的な刑事部屋で、あぐらをかいた白毛のまじった老警部が私に言った。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
どこでも、自由に散歩ができるし、おりには、艦長ともれ口を投げ合う。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山鹿の死骸も、田母沢源助のけて寝た体も、運び出す暇はなかった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
天平後期の歌はうたでないまでも一体にこの種の弛緩があった。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
父親は微笑しながら、れめく口調で言うのだった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ればみを。尾羽をばがろさのともすれば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
か密書か?
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
などと揶揄からかったりしていたが、やがて、その人々のぐちも、裏垣根の門から駈け込んで来た一人の男のことばに、冗談口をふさがれて
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トボケルと今ならばうところで、古くはシレル・シレモノと謂い、それから移ってジラコクまたはジラなどともなり、れという語も是とよほど近かった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
当時、なんぴとの構えたれ事でございましょうか、天狗てんぐ落文おとしぶみなどいう札を持歩く者もありまして、その中には「徹書記てっしょき宗砌そうぜい、音阿弥、禅竺、近日此方こちらきたシ」
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
まこと旗本ならばあのようなれ看板せずともよい筈、喧嘩口論白刄くぐりが何のかのと、無頼がましゅうひょうげた事書いて張ったは、隠密の素姓かくす手段てだてであったろうがッ。
そして、落首やれ絵で小さな反逆の中に遊びながら、犬を、犬と呼び捨てにせず、「お犬さま」と敬称するのを忘れなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢いせ荒木田守武あらきだもりたけのように、徹頭徹尾れの句ばかりを続けた人も無いではないが、本来は長ったらしい連歌の間へ、時々頓狂とんきょうな俗な句や言葉を挟むのが興味であったことは
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
当国三河で下々の者共が申すでな、つまりはお茶の濃い薄いじゃ、あめのごとくにどろどろと致した濃い奴を所望致すみぎりに、ねじ切って腰にさすがごとき奴と、このように申すのでな
決して、ただしざまに申したり、ぐちもてあそんだ次第ではありませぬ。どうぞ、烏滸おこがましい女の取越し苦労と、お聞き流し下さいませ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただし黄金三合というれの誇張に対して、米の三合をこうというのはただ空想でなく、或いはもとこの踊の所作しょさとものうて、何かそういう行事があったのかと思われるふしがある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
傾城けいせいぐちならば咎めるまでもないが、なにか心得があっていうことならば、これも聞き捨てにならないことと彼は思う。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼をふさぐと、帝の寵妃ちょうひ廉子やすこが浮かぶ。また、大酔した帝と佐々木道誉とのふしぎなごとがあたまの中を通って行く。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、酔うた振りして謝りぬく秀吉の唇へ、むりにそれを押しつけたりして、さながらちんと狆のようにっていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、半ば不安に駆られていながら、しかも虚勢を失わず、彼らの通有性であるごと揶揄やゆを露骨な態度に示したまま、黒々と人波をゆるがしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、ほんものの神主にしては、すこしおかしい。誰かの、酒興だろう。何か、れ事を、始めるつもりだろう」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう聞くと、若者たちは、みな具足の着込みであったが、一斉に坐り直して、もうぐちもひそめてしまった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前日のごともあることだし、彼女がはっと、きびしい居ずまいを示したのも、無意識にせよ無理ではない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、それが御不満でございましたのか。じつは余りにごとめいた答弁なので、わざと、そこだけ申し控えておいたまでで、べつな存意ではございませぬ」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
苦患があればこそ、世も面白うござるものを、などとじり、お慰めを申したわけでございました
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おもしろい。まさしゅう、ここでは釜は鍋に先を越されたわ。だが、凡下ぼんげどものごとは、吉兆だぞ。高氏にはありがたい声だ。天が人を以ていわしめるものか」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
栂尾とがのおの山も、そろそろ寒うなったので、わしも、鳥羽の庵にうつり、冬じゅうは、など描いて、こもしてあるほどに、まれには、遊びにわたられいとな。……
この辺に、夜鷹よたかが出るということや、夜鷹の相場や、夜の女の様々のれ話は、いつも部屋の者が話すのを聞かない振りをしつつ、ある好奇心が熱心に覚えさせていた。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう骨のない頸筋くびすじの持主みたいに「ついつい、つまらぬごとを口にしますので、村人からも、あれは半気狂いじゃ、ほら吹きよと、とかく嫌われておりまする私なので」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ逆に、非情ななぶりごとを吐いて、運命に疲れた不運な者をおもちゃにする路傍のごと並みにもそれは受け取られて、つい、くやしげな涙につき上げられた風でもある。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水仕部屋の障子の内で、お下婢はしたのひとりが言った。けれど、野狐かむささびの悪戯わるさぐらいに思われたことなのだろう。また、にぶい明りとれ声を元のように、閉じこめている。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人中の——しかも十三、四歳から水茶屋にもいて、苦労にもまれ、れ男たちにまれてきたお袖と、型どおりな、やしき育ちのお縫とでは、ほとんど、太刀打たちうちにならないのである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お腹立ちでもございましょうが、どうぞ堪忍してあげて下さい。この人は、誰にむかってもこんな口をきくのです。決してあなた様ばかりへ、こういうぐちをいうのではございません」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして何かぐちおもしろ気に、この日盛りの汗を拭きあっているものらしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又、いつぞやの晩の源五右衛門のれ言も、戯れ言ではなかったかと思い当る。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐちたたくな。ここは先帝のご幽室に近いぞ。道誉もまた、重任の身だ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとおとといの辻猿楽つじさるがくで、仲間の役の一人が、楮幣ちょへいに引ッかけて、楮幣もじりのいをッたところ、お客には大受けに受けたものの、そのあとは、たいへんな事になってしまってね
「誤っているかどうか。それが今こそはっきりしよう。これまではまあ男と男のごとに似たようなもの。したがここは土壇場の対決だ。高氏にしろ彼にしろ、生涯の勝負のきめどころよ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は、宿世すくせのふかい縁などとは元より思いもしなかったが、時経て、まして黒衣に身をつつんで後は、そうしたごとに似たことも、戯れ事とはなしれない、罪業を胸に詫びていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また責任のない居候どのが、口に年貢ねんぐのいらぬごとをいうな、とその時は、啓之助も笑っていたが、これをみると、竹屋三位卿、ほんとに、剣山の迷信へ、槇葉まきばやじりをうちこんでしまった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紅梅ノ辻子つじ、そのほか方々の妓家ちゃやからよび集められた一流の遊君たちが、ここをうずめていたばかりでなく、脂粉しふんその狼藉ろうぜきをきわめ、酒に飽き、ぐちに飽き、芸づくしに飽き、やがては
「よけいなぐち。うぬ。城太といい合せて、わしを揶揄からかいに来おったの」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)