思想しそう)” の例文
彼は自分がまったく死にうせてしまわないようにと、自分の思想しそう一片いっぺんを自分の名もつけずに残しておくだけで、満足まんぞくしていたのである。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
あえてはえに限らず動植鉱物どうしょくこうぶつに限らず、人間の社会に存するあらゆる思想しそう風俗ふうぞく習慣しゅうかんについても、やはり同じようなことがいわれはしないか。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
で、わたくしおうとおもうのは、貴方あなたわたくしとが思想しそうするもの、相共あいとも思想しそうしたり、議論ぎろんをしたりするちからがあるものとみとめているということです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すなわちその思想しそうは純然たる古流こりゅうにして、三河武士みかわぶし一片の精神せいしん、ただ徳川累世るいせい恩義おんぎむくゆるの外他志たしあることなし。
ほとんど、なんのやかましい思想しそうつよ感情かんじようもないが、あかるい、にこにこした氣持きもちが、われ/\をこゝろそこからゆすりてるようにかんじないでせうか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ひと思想しそうも、なにかに原因げんいんするものか、以来いらいわたしは、地上ちじょうはなよりは、大空おおぞらをいくくもあいするようになりました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれはたかが犬をれていなかを興行こうぎょういて回る見世物師みせものし老人ろうじんではあったが、ひじょうに気位きぐらいが高かったし、権利けんり思想しそうをじゅうぶんに持っていたかれは
しかしてみづかべんじてはるゝは、作者さくしや趣意しゆいは、殺人犯さつじんはんおかしたる人物じんぶつは、その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
多年来たねんらい西洋の書をこうじて多少に得たるところのその知見ちけんも、今や始めて実物じつぶつに接して、おおい平生へいぜい思想しそう齟齬そごするものあり、また正しく符合ふごうするものもありて、これをようするに今度の航海は
外国がいこくのすすんだ文化ぶんか思想しそうをしょうかいし
そうして自分じぶん哲人ワイゼかんじている……いや貴方あなたこれはです、哲学てつがくでもなければ、思想しそうでもなし、見解けんかいあえひろいのでもい、怠惰たいだです。自滅じめつです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれどもこれは、和歌わかではまづ出來できない相談そうだんで、おそらくこのひとが、かういふふうな思想しそうあらはかたをする俳句はいくにも、興味きようみつてゐたから出來できたものなのでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あたらしい器械きかい発明はつめいされたとか、あたらしい思想しそう流行りゅうこうするとか、また、戦争せんそうなどということがあって、さかえた職業しょくぎょうが、きゅう衰微すいびしたり、また反対はんたい衰微すいびしていたものが
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
クリストフはそのえら音楽家おんがくかになりました。かれ音楽おんがくはいつも、かれ思想しそう感情かんじょうをありのままに表現ひょうげんしたもので、かれこころとじかにつながってるものでありました。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
人生じんせい解悟かいごむかっておる自由じゆうなるふか思想しそうと、このおろかなるさわぎたいする全然ぜんぜん軽蔑けいべつ、これすなわ人間にんげんのこれ以上いじょうのものをいまだかつてらぬ最大幸福さいだいこうふくです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日本につぽんうたには、意味いみ思想しそうからはなれて、また特別とくべつのねうちをつたものさへあるのです。そしてその代表的だいひようてきなものがこのうたです。まづ第一だいゝちに、調子ちようしたかいことをかんじるでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
わたしかんがえるに、そのむすめは、詩人しじんというものじゃ。宝石ほうせきよりそらほしうつくしいとは、いまどきには、めずらしい高潔こうけつ思想しそうじゃ。平常ふだんしずんでいるのも、ものをいわないのもよくわかるようながする。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)