思切おもひき)” の例文
それでも思切おもひきツて其の作を放擲ツて了うことが出來ぬから、何時いつまでも根氣こんき無駄骨むだほねツてゐる、そして結局なさけなくなるばかりだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いえ/\これさだまる約束やくそく。……しかし、なつかしい。奥様おくさま思切おもひきり、てゝもわたしそばいのちをかけてやうとおつしやる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんだか見無いでもいものを見る様な気が為て、こはく成つたが、思切おもひきつて引くと、荒い音もずにすつと軽くいた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
すこ身體からだ工合ぐあひわるいから、今日丈けふだ宿やどのこつてゐると、つひ思切おもひきつてともふたのでつた、しかるにミハイル、アウエリヤヌヰチは、れぢや自分じぶんいへにゐることやう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だれだとおもふ、かゝあながわづらひでなけりや、小兒がきなんぞれちやねえ。う、やつこ思切おもひきつて飛込とびこめ。生命いのちがけで突入つツぺえれ! てめえにやあついたつて、ちやんにはぬるいや。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うさ、氣紛きまぐれでもなけア、おれにはお前を虫干にしてる同情さへありやしない。正直なところがな。」と思切おもひきツていふ。感情がたかまツて來たのか、まぶたのあたりにぽツとべにをさす。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
にしたかひなを、思切おもひきつたしるしに、たゝきつけやうとして揮上ふりあげた、……こぶしれて、ころ/\とさいこぼれて。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
断念あきらめます、……断念あきらめる……わたくしはおうら思切おもひきります。うぞ、かはり、ゆめでもい、ゆめなら何時いつまでもめずに、わたくし此処こゝに、貴女あなたそばにおください。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はツとつばをのみ、むねそらして退すさつたが、やがて思切おもひきつてようしてるまでは、まづ何事なにごともなかつたところ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
思切おもひきつて坂道さかみちつてかゝつた、侠気をとこぎがあつたのではござらぬ、血気けつきはやつたではもとよりない、いままをしたやうではずつとさとつたやうぢやが、いやなか/\の憶病者おくびやうもの
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
冬分ふゆぶん往々わう/\敦賀つるがからふねが、其處そこ金石かないはながら、端舟はしけ便べんがないために、五日いつか七日なぬかたゞよひつゝ、はて佐渡さどしま吹放ふきはなたれたり、思切おもひきつて、もとの敦賀つるが逆戻ぎやくもどりすることさへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思切おもひきつてもどらうとして、いしはなれておこした、背後うしろから一ツ背中せなかたゝいて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うです……のおあつさは。」と思切おもひきつて、言受ことうけする。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)