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御仁
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ごじん
ふりがな文庫
“
御仁
(
ごじん
)” の例文
甚
(
はなは
)
だ
唐突
(
とうとつ
)
でありまするが、昨年夏も、お一人な、やはりかような事から、
貴下
(
あなた
)
がたのような
御仁
(
ごじん
)
の
御宿
(
おやど
)
をいたしたことがありまする。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お見うけするような
御仁
(
ごじん
)
でございましたので、私たちにいたしますれば、
正
(
まさ
)
しく、一つの事件には相違なかったのでございます。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
「しかも、同じくこの上野原の宿屋へ今日泊り合せた客人に、同じく駒井能登守殿の家中にて、和田静馬と名乗る
御仁
(
ごじん
)
がござる」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かの
御仁
(
ごじん
)
も天文人相に詳しいので、とかくに
彼女
(
かれ
)
を疑うて、さきの日わしに行き逢うた折りにもひそかに囁かれたことがある。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「待った! 待った! とんだ気ばやの
御仁
(
ごじん
)
じゃ。わしは、ただ、殿の言いつけでまいっただけで、近ごろもって迷惑至極!」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
「さっそく、今朝は自分たちも、お暇をつげたく存じますが、ここの毛利時親どのとは、そも、いかなる
御仁
(
ごじん
)
か、お聞かせおき下さるまいか」
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
イカは白い、などという
御仁
(
ごじん
)
は、イカを知らぬ人だ。イカは決して白くはない。あれは、腐りかけているイカの死がいだ。イカは透きとおっている。
海の青と空の青
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
人によって言葉を選まないから、或る人は威厳のある先生様だと思い、或るものは、分らない事を云う
御仁
(
ごじん
)
だと思う。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
もっとも、なかには、わたくしという人間を誇張したがっておる
御仁
(
ごじん
)
もありますがな。これはミウーソフさん、あんたに当てて言ってることですよ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
徳川殿の
御感
(
ぎょかん
)
にあずかった
御仁
(
ごじん
)
こそ、別人ならぬその田中兵部大輔殿でござることを、よもお忘れはなさりますまい。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
へえ、わたくしは正武隊付きで、
兵糧方
(
ひょうろうかた
)
でございましたから、よくも存じませんが、重立った
御仁
(
ごじん
)
で助けられたものは一人もございませんようです。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
御前へ
召
(
めさ
)
れ汝必ず
輕擧
(
はやま
)
る事
勿
(
なか
)
れ
未
(
いま
)
だ其者
刑罰
(
けいばつ
)
に行はざれば
再應
(
さいおう
)
取調
(
とりしら
)
べ此後
迚
(
とて
)
も
出精
(
しゆつせい
)
相勤
(
あひつと
)
むべしと上意有しかば大岡殿
御仁
(
ごじん
)
惠の御
沙汰
(
さた
)
畏
(
かしこ
)
まり
奉
(
たてま
)
つると
感涙
(
かんるゐ
)
を流され御前を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「いやはや、息子殿も変った方じゃったが、その父御もいずれ劣らぬほど変った
御仁
(
ごじん
)
にござる。」
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
閣下のような登りつめて上のない
御仁
(
ごじん
)
は平気で頭を光らせていられましょうが、腕一本で妻子を養って行く会社員は然う参りませんと言ってやったんです。憤りましたよ
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
まったく、どこの税関でもお
関
(
かま
)
いなしに通れる、結構なご身分というもんさ。こっちも、そういう
御仁
(
ごじん
)
相手でなけりゃ話しても無駄だし、また、大将なら乗ってくれるだろう。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自国宰相
(
じこくさいしょう
)
の
面影
(
おもかげ
)
に生きうつしで、影武者に最適なりとの評判高き
御仁
(
ごじん
)
で、そのままの御面相でうろつかれては、宰相と間違えられていつなんどき
面倒
(
めんどう
)
なことが発生するやも知れず
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ところで、読者の中には定めし、手箱の構造から内部の
仕組
(
しくみ
)
まで知りたいと思うほど、実に物好きな
御仁
(
ごじん
)
がおられることと思う。よろしい、その望みを叶えて進ぜて悪かろう筈はない。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この
御仁
(
ごじん
)
は、如何なるお人であるのだろう? 如何にもあの時の、わたしの構えは、あの刀が振り下ろされたら、
躱
(
かわ
)
したと見せて、咽喉元を、銀扇の
要
(
かなめ
)
で、突き破ってやるつもりだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
さる程に、かゝる折柄、此の唐津藩の御家老職、雲井なにがしと申す人、此事を聞き及ばれ候ひて、御三男の喜三郎となん云へる
御仁
(
ごじん
)
をば、妾が婿がねに賜はり、名跡を
嗣
(
つ
)
がせらる可き御沙汰あり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
尤
(
もっと
)
も
彼処
(
あすこ
)
へは、去年の秋、細君だけが
引越
(
ひきこ
)
して参ったので。
丁
(
ちょう
)
ど
私
(
わたくし
)
がお宿を致したその
御仁
(
ごじん
)
が……お名は申しますまい。」
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「わしがところにおる吉田竜太郎と申される
御仁
(
ごじん
)
が、これも近いうち関東へ立つ、次第によりて同行を願うてみたら——」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かつての歴代の町奉行にはなし
能
(
あた
)
わぬ市政や旧弊改革も、あの
御仁
(
ごじん
)
は、やると信念しておられる。……だから、惜しいのだ
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
入れて、グンと押すと、しゃっきり立てなおるってえじゃアげえせんか。いや、なんにしても、えらい
御仁
(
ごじん
)
があったものだ
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「たとい御内の
御仁
(
ごじん
)
であろうとも、わしは女子に逢わぬことに決めている。対面はならぬと伝えてくりゃれ。それは関白殿にもよう御存じの筈じゃ」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
頓
(
とん
)
と物が美味しく食べられないという変った
御仁
(
ごじん
)
がざらにあるもので。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「そなたはその
御仁
(
ごじん
)
が生きていられるとお思いか。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ハハハハ、あの
御仁
(
ごじん
)
は哲学者じゃよ
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何
(
なに
)
かな、
御身
(
おみ
)
は
遠方
(
ゑんぱう
)
から、
近頃
(
ちかごろ
)
此
(
こ
)
の
双六
(
すごろく
)
の
温泉
(
をんせん
)
へ、
夫婦
(
ふうふ
)
づれで
湯治
(
たうぢ
)
に
来
(
き
)
て、
不図
(
ふと
)
山道
(
やまみち
)
で
其
(
そ
)
の
内儀
(
ないぎ
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
半狂乱
(
はんきやうらん
)
に
捜
(
さが
)
してござる
御仁
(
ごじん
)
かな。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
答「いや、それも誤りではありません。悪と善、鬼と仏、
相反
(
あいはん
)
する二つのものを一体のうちに交錯して持つふしぎな
御仁
(
ごじん
)
」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「控えろッ大作! これなるは余の親友、名は言われんが大奥
隠密
(
おんみつ
)
の要役を承る大切な
御仁
(
ごじん
)
じゃ! やにわに真槍をもって突きかけなんとする? 引けい!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
入道殿ほどの
御仁
(
ごじん
)
がそのような
讒口
(
ざんこう
)
を
真
(
ま
)
に受けらるる筈はなし、
且
(
かつ
)
は日頃から疑いの眼を向けている玉藻の訴えじゃで、まずよいほどに会釈して追い返されたそうなが
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「直心陰は
至極
(
しごく
)
の流儀じゃ。して、御身の師とお頼みなされしは何と申される
御仁
(
ごじん
)
か」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「あの水鳥を射止めた
御仁
(
ごじん
)
に橘を進じ申そう。」
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
実は先刻お
話
(
はなし
)
申した、ふとした御縁で、
御堂
(
おどう
)
のこの下の
仮庵室
(
かりあんじつ
)
へお宿をいたしました、その
御仁
(
ごじん
)
なのでありますが。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「構うな、構うな。女の腐ったような
御仁
(
ごじん
)
じゃわい」
猪股小膳
(
いのまたこぜん
)
という色の黒い男が、そばから口を出した。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
押司
(
おうし
)
っ。……覚悟しました。ほかならぬ
御仁
(
ごじん
)
の手にかかれば本望だ。さ、お縄をいただきましょう」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岩倉三位ともいわれる
御仁
(
ごじん
)
が、あんな献上物を持込まれなければならないのか、また何の由であの奴らが、こんな献上物を持込んだのか、何が何やら、
煙
(
けむ
)
に捲かれ通しで、居ていいか
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お身はいずこのいかなる
御仁
(
ごじん
)
で、またいかなる子細でかの四国遍路をかたきと怨まれるか、それを承った上でなければ何とも御挨拶は出来ないと答えたが、相手はそれを詳しく説明しないで
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まことの挑戦状なら、何であのように
艶
(
つや
)
めかして書こうぞ。それとお
判
(
はん
)
じがつかなんだとは、さても婆娑羅を知らぬ一徹な
御仁
(
ごじん
)
かな——と、また腹を抱えて笑いおった
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
作阿弥という
御仁
(
ごじん
)
があったが、いつからともなく
遁世
(
とんせい
)
なされて、そのもっとも得意とする馬の木彫りも、もはや見られずなったとは、ま、誰でも知っておるところで……
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
……よくよくの名僧智識か、豪傑な
御仁
(
ごじん
)
でないと、聞いてさえ下さりませぬ。——この
老耄
(
おいぼれ
)
が生れまして、六十九年、この
願望
(
がんもう
)
を起しましてから、四十一年目の今月今日。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「仏頂寺弥助という
御仁
(
ごじん
)
は知りませんが、仏生寺弥助殿なら承っております」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「初めて
御意
(
ぎょい
)
得
(
え
)
申す。われらはあるじの兼好でござるよ。お身のような
御仁
(
ごじん
)
がなんの用ばしござって
尋
(
たず
)
ねられた。はは、ここは双ヶ岡じゃ、嵯峨野ではござらぬ。横笛どのが
門
(
かど
)
ちがいせられたのではござらぬかな。」
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
時に、この邸には、当月はじめつ
方
(
かた
)
から、別に
逗留
(
とうりゅう
)
の客がある。
同一
(
おなじ
)
境涯にある
御仁
(
ごじん
)
じゃ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いえ、宋江はこちらの
御仁
(
ごじん
)
です。てまえは、おなじく梁山泊の一員、
呉学究
(
ごがっきゅう
)
なので」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ほんに、そういった
御仁
(
ごじん
)
なら、たった今、西東の方へおいでなったのっし」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
通い廊下に藤の花を
咲
(
さか
)
しょうと、西洋窓に
鸚鵡
(
おうむ
)
を飼おうと、見本は
直
(
じ
)
き近い処にござりまして、
思召
(
おぼしめし
)
通りじゃけれど、昔
気質
(
かたぎ
)
の堅い
御仁
(
ごじん
)
、我等式百姓に、別荘づくりは
相応
(
ふさ
)
わしからぬ
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いつに変らず、世辞のよい
御仁
(
ごじん
)
。帰路には会いたい、父上へよろしくなどと」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「このあたりにて、宝蔵院流の槍をよくする
御仁
(
ごじん
)
は誰々でござろうな」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「田辺の
別当
(
べっとう
)
をめぐる一群の熊野衆には、尊氏方あり、
日和
(
ひより
)
見もありですが、われらがお会いした切目ノ
法橋
(
ほっきょう
)
どのは、われら楠木党へきつい肩入れの
御仁
(
ごじん
)
でございましたな。なあ助家どの」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“御仁”の意味
《名詞》
「他人」の尊敬語。お方。現代ではときに諧謔的。
(出典:Wiktionary)
御
常用漢字
中学
部首:⼻
12画
仁
常用漢字
小6
部首:⼈
4画
“御仁”で始まる語句
御仁体
御仁慈
御仁恕
御仁心
御仁恵
御仁惠
御仁政