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尋常
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よのつね
ふりがな文庫
“
尋常
(
よのつね
)” の例文
こは深き憂に
中
(
あた
)
れるが爲めなるべけれど、その憂は貧か戀か、そも/\別に
尋常
(
よのつね
)
ならざる祕密あるか。これを知るもの絶て無しとぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その両の手のふるへざまも、
尋常
(
よのつね
)
の事ではござるまい。おう、伴天連のからびた頬の上には、とめどなく涙が溢れ流れるぞよ。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まず材をよく磨きてのち、
鉛丹
(
たん
)
に
膠水
(
にかわ
)
、または
尋常
(
よのつね
)
の
荏油
(
えのゆ
)
仮漆
(
かしつ
)
を
和
(
あわ
)
せたる、黄赤にしてたいまい色をなすところの
元料
(
もと
)
を塗る。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すでに日も経ているらしいが、その装束も
尋常
(
よのつね
)
の
女性
(
にょしょう
)
とは思われないし、なお、生けるままな
容貌
(
かんばせ
)
は
白玕
(
はっかん
)
のように美しかった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この時、今十五分も一緒に話し合ったならば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は
艶
(
なま
)
めき、態度がいかにも
尋常
(
よのつね
)
でなかった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
尋常
(
よのつね
)
の犬なりせば、その場に腰をも
抜
(
ぬか
)
すべきに。月丸は原来心
猛
(
たけ
)
き犬なれば、そのまま虎に
噉
(
くっ
)
てかかり、
喚
(
おめき
)
叫んで
暫時
(
しばし
)
がほどは、力の限り
闘
(
たたか
)
ひしが。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
知らぬ知らぬで、事は済む、問われる方が焦れたくらい、
言数
(
ことばかず
)
を尽すだけ、問う方の
苛立
(
いらだ
)
ち加減は
尋常
(
よのつね
)
ではない!
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さらぬも
尋常
(
よのつね
)
の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいかにか見けむ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
さて
樹叢
(
こむら
)
に身をひそめて、そが来むをりをこそ俟てりしか。こたびは彼の女人、紅裳のひとりを偕ひ来と見ゆるに、そのすがた
尋常
(
よのつね
)
ならず艶だちたり。やうやう近うなりぬ。
『聊斎志異』より
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
昔を守ることばかりはいかついが、新しいことの考えは唯、
尋常
(
よのつね
)
の婆の如く、愚かしかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
前庭の
洒掃
(
さいさう
)
浄らかにして一草一石を止めず。雨戸を固く
鎖
(
とざ
)
したる本堂の扁額には
霊鷲山
(
りやうじゆさん
)
、
舎利蔵寺
(
しやりざうじ
)
と大師様の達筆にて草書したり。方丈の方へ廻り行くに泉石の按配、
尋常
(
よのつね
)
ならず。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「旅の御僧、もはやそなたへの疑いは晴れ申したが、さるにても、
斯様
(
かよう
)
は怪物を見事に御退治めされたとは、
尋常
(
よのつね
)
の出家ではござるまい、お差しつかえなくば、
俗名
(
ぞくみょう
)
をうけたまわりたい」
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
あの
追放人
(
おひはらはれ
)
の
無頼漢
(
ならずもの
)
が
住
(
す
)
んでゐるマンチュアに
使
(
つかひ
)
を
送
(
おく
)
り、さる
男
(
をとこ
)
に
言
(
い
)
ひ
含
(
ふく
)
めて
尋常
(
よのつね
)
ならぬ
飮物
(
のみもの
)
を
彼奴
(
あいつ
)
めに
飮
(
の
)
ませませう、すれば
即
(
やが
)
てチッバルトが
冥途
(
めいど
)
の
道伴
(
みちづれ
)
。さうなれば
其方
(
そなた
)
の
心
(
こゝろ
)
も
慰
(
なぐさ
)
まう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
天に二つの日を掛けたるがごとし、
双
(
なら
)
べる
角
(
つの
)
の
尖
(
するど
)
にして、冬枯れの森の
梢
(
こずえ
)
に異ならず、
鉄
(
くろがね
)
の牙上下に
生
(
お
)
ひ
差
(
ちご
)
ふて、紅の舌
炎
(
ほのお
)
を吐くかと怪しまる、もし
尋常
(
よのつね
)
の人これを見ば、目もくれ魂消えて
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
につと笑ふて、右手に持ち、こちへこちへとお園を呼びて、
尋常
(
よのつね
)
ならぬ涙声
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
しかしさような宝を
手頼
(
たより
)
にいたすは
尋常
(
よのつね
)
で
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
その
聲音
(
こわね
)
は
尋常
(
よのつね
)
ならず、譬へば泉下の人の假に形を現して物言ふが如くなりき。我即興詩は
漫
(
みだ
)
りに混沌の
竅
(
あな
)
を
穿
(
うが
)
ちて、少女に宇宙の美を教へき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
酒宴の席に、
劉泌
(
りゅうひつ
)
はひとりの美少年をつれていた。玄徳がふと見ると、人品
尋常
(
よのつね
)
でなく、才華玉の如きものがある。で、劉泌にそっと訊ねてみた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
加之
(
しかのみならず
)
牛に養はれて、牛の乳に
育
(
はぐく
)
まれしかば、また牛の力量をも
受得
(
うけえ
)
て、けだし
尋常
(
よのつね
)
の犬の猛きにあらず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
さらぬも
尋常
(
よのつね
)
の
動植金石
(
どうしょくきんせき
)
、さては風俗などをさえ珍しげにしるししを、心ある人はいかにか見けん。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
渠の
形躯
(
かたち
)
は貴公子のごとく
華車
(
きゃしゃ
)
に、態度は
森厳
(
しんげん
)
にして、そのうちおのずから
活溌
(
かっぱつ
)
の気を含めり。
陋
(
いや
)
しげに日に
黧
(
くろ
)
みたる
面
(
おもて
)
も
熟視
(
よくみ
)
れば、
清※明眉
(
せいろめいび
)
、
相貌
(
そうぼう
)
秀
(
ひい
)
でて
尋常
(
よのつね
)
ならず。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔を守ることばかりはいかついが、新しいことの考へは唯、
尋常
(
よのつね
)
の姥の如く愚かしかつた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
わざわざ御自身でおいでくだされて、あの
痴
(
うつ
)
け者を
婿養子
(
むこようし
)
にとのお言葉さえあるに、恐れ入ったただいまの
御仕儀
(
ごしぎ
)
。これが
尋常
(
よのつね
)
の兄じゃ弟じゃならば、当方は蔵前取りで貴殿は
地方
(
じがた
)
だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
家は
丁度
(
ちやうど
)
尾谷川に臨んだ一帯の平地にあつて、
樫
(
かし
)
の
疎
(
まば
)
らな
並樹
(
なみき
)
がぐるりと其の周囲を囲んで居る奥に、一
棟
(
むね
)
の
母屋
(
おもや
)
、土蔵、物置と、
普請
(
ふしん
)
も
尋常
(
よのつね
)
よりは堅く出来て居て、村に何か事のある時には
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
カピ長
日
(
ひ
)
が
沈
(
しず
)
むと
露
(
つゆ
)
が
降
(
お
)
りるは
尋常
(
よのつね
)
ぢゃが、
甥
(
をひ
)
の
日沒
(
ひのいり
)
には
如瀧雨
(
どしゃぶり
)
ぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
わが崇拜の念はいかなりしぞ。さるを今はこの
尋常
(
よのつね
)
なる容色にすらけおされ
畢
(
をは
)
んぬ。あはれ、薄倖なるベルナルドオは身病み色衰ふるに及びて君を棄てしか。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
黄金丸は
柴門
(
しばのと
)
に立寄りて、
丁々
(
ほとほと
)
と
訪
(
おとな
)
へば。中より「
誰
(
た
)
ぞ」ト声して、
朱目
(
あかめ
)
自ら立出づるに。見れば耳長く毛は
真白
(
ましろ
)
に、
眼
(
まなこ
)
紅
(
くれない
)
に光ありて、
一目
(
みるから
)
尋常
(
よのつね
)
の兎とも覚えぬに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
しかし彼の場合は、
尋常
(
よのつね
)
の人の年齢や肉体と
較
(
くら
)
べては考え得られないものがある。それはそうした皮膚や筋肉とはまったく別箇のものみたいにある
絶倫
(
ぜつりん
)
な精力だった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古風
(
いにしえぶり
)
を存ぜる
弔燭台
(
つりしょくだい
)
の
黄蝋
(
おうろう
)
の火遠く光の波を
漲
(
みなぎ
)
らせ、数知らぬ勲章、肩じるし、女服の飾などを射て、祖先よよの
油画
(
あぶらえ
)
の肖像の間に挾まれたる大鏡に
照反
(
てりかえ
)
されたる、いへば
尋常
(
よのつね
)
なり。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
いや別に何が起ったというわけではないが、都を立つ時、特に魏王から
戒
(
いまし
)
めのお使を派せられ、関羽は智勇の将、
尋常
(
よのつね
)
の敵と思うて
侮
(
あなど
)
るなと、くれぐれ念を押されたことであった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
當時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもへば、
穉
(
をさな
)
き思想、身の程知らぬ放言、さらぬも
尋常
(
よのつね
)
の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
古風
(
いにしえぶり
)
を存ぜるつり
燭台
(
しょくだい
)
の
黄蝋
(
おうろう
)
の火遠く光の波をみなぎらせ、数知らぬ勲章、肩じるし、女服の飾りなどを射て、祖先よよの曲画の肖像の間にはさまれたる大鏡に照りかえされたる、いえば
尋常
(
よのつね
)
なり。
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「玄徳は
尋常
(
よのつね
)
の人物ではない。軽々しく見ては間違いでござる」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これは一体、どこを通ってきた軍勢か。
尋常
(
よのつね
)
のことではない」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(これはよい人物らしい。
尋常
(
よのつね
)
の武骨ではない)
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尋
常用漢字
中学
部首:⼨
12画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“尋常”で始まる語句
尋常事
尋常一様
尋常科
尋常人
尋常茶飯
尋常外
尋常漢
尋常茶飯事
尋常体
尋常時