みつ)” の例文
が、或る日、閲武坊えつぶぼうの辻で、ひょっこり魯智深ろちしんと行き会った。彼とは、あれからも数回飲みあって、いよいよ交友みつなるものがあったが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此あたりは山近く林みつにして、立田たつたの姫が織り成せる木々の錦、二月の花よりもくれなゐにして、匂あらましかばとしまるゝ美しさ、得も言はれず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
春星しゆんせいかげよりもかすかに空をつゞる。微茫月色びばうげつしよく、花にえいじて、みつなる枝は月をとざしてほのくらく、なる一枝いつしは月にさし出でゝほの白く、風情ふぜい言ひつくがたし。
花月の夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
死ぬのはこれほどいやな者かなと始めてさとったように思う。雨はだんだんみつになるので外套がいとうが水を含んでさわると、濡れた海綿かいめんすようにじくじくする。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これくに厚利こうりもつてせば、すなはひそか其言そのげんもちひてあらは其身そのみてん。これらざるからざるなり。ことみつもつり、るるをもつやぶる。
しかしただ一人久保田さんが纎細せんさいみつ作品さくひんを書く人でありながら球突たまつきではひどく不器用ぶきようなのをのぞけばそれぞれに球突たまつきの中にも作品さくひんかんじがあらはれてくるからおも白い。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
琅玕らうかんもてけづり成せるが如し。これに登らんと欲すれば、巖扉みつに鎖して進むべからず。すゐするに、こは天堂に到る階級きざはしにして、其門扉は我が爲めに開かざるならん。
這麼こんなふう中坂なかさかしやまうけてからは、石橋いしばしわたしとが一切いつさい処理しよりして、山田やまだ毎号まいごう一篇いつぺんの小説を書くばかりで、前のやうに社にたいしてみつなる関係くわんけいを持たなかつた、とふのが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
小松こまつだ。みつだ。んでいる。それから巨礫きょれきがごろごろしている。うすぐろくて安山岩だ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その有様に密接すること、同居人が眠食をともにするが如くなるがゆえなり。その相接することみつに過ぎ、かえって他の全体を見ること能わずして、局処をうかがうに察々たるがゆえなり。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
朝廷ていもとむることみつなれば、帝深くひそみてでず。このとし傅安ふあんちょうに帰る。安の胡地こち歴游れきゆうする数万里、域外にとどまるほとんど二十年、著す所西遊勝覧詩せいゆうしょうらんしあり、後の好事こうずの者の喜び読むところとなる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いと高くいと暗くいとみつにいとほのかなる
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
五十の少壯誘ひ來てみつに埋伏の陣を布く。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
くちづけみつに、ささやきよく語りて
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
平和へいわ気温けぬるみつなる
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
かくて、一月、二月、三月——警固おさおさ怠りなく、げんみつに、山川草木さんせんそうもく、およそ中国の土にあるものはすべてを動員して来るべきものを待ちうけていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨は依然として、ながく、みつに、物におとを立てゝつた。二人ふたりは雨のために、雨の持ちきたおとために、世間せけんから切り離された。同じいへに住む門野からも婆さんからも切り離された。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれは阿波へ来る前まで、ふたりの仲がどれほどみつに深いものかを思ってみて、寝苦しい夜があった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、口でぞんざいに言い放しながら、胸では、何かみつな考えをめぐらしているふう。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれほどみつ祁山きざんを出てきたが、彼はもう我の麦を刈らんことをはかり知ったか。——さもあらば仲達にも不敗の構えあることであろう。我とて世のつねの気ぐみではそれに打ち勝てまい」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愛情のきずなをって三みつの雲ふかきみ山にかくれてゆかれたのであろう?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光圀は、なおも木蔭のみつな林の奥へ、そぞろに足を移していた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちん、大機のみつあり、直々じきじき、丞相に問わん、即時、成都にかえれ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)