めい)” の例文
いくらめいだと云っても、あまり下さらない女をもらってしまって、一体自分等は、どうする気なんだろうと云う様な事を思って居た。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おいめいの白痴であることを話しだし、どうにかしてこれにいくぶんの教育を加えることはできないものかと、私に相談をしました。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
僕はこの夏新潟へ帰り、たくさんの愛すべきめい達と友達になって、僕の小説を読ましてくれとせがまれた時には、ほんとに困った。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
先生には奥様と男のおが二人、めいのお米、外見を張るだけに女中も居ようというのですもの、お苦しかろうではございませんか。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから一時間ほどして、目賀野は医師やら博士のめいの秋元千草という麗人れいじんや博士の助手の仙波学士を伴い、自動車で駆けつけた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と言って、めいは幾人もの子供を生んだことのある乳房ちぶさを小さなものにふくませながら話した。そんなにこの人は気の置けない道づれだ。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
アンドレーセン子爵にかたづいているめいのソールヴェイグ夫人、その母親のフロム夫人、それらの人々ともどもホール入口で客を迎えて
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
わたくしのめいで、娘時代に郷里から出て参りまして、わたくしの監督を受けながら神戸の女学校を卒業しました者がございますの。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
せめてはめいの迎え(手放し置きて、それと聞かさば不慮の事の起こりもやせん、とにかく膝下しっかに呼び取って、と中将はおもんばかれるなり)
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
関羽がたたずんでいると、ほど近い木の間を、誰か、楚々そそと通る人があった。見ると、劉恢のめいとかいうこの家の妙齢な麗人であった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小さなめいの首の火傷やけどに蠅は吸着いたまま動かない。姪ははしを投出して火のついたように泣喚なきわめく。蠅を防ぐために昼間でも蚊帳かやられた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
その翌日あの大地震があったのだが、まとめていっためいの縁談が、双方所思おもわくちがいでごたごたしていて、その中へ入る日になると
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
背の高い、り身な、色の白い、額の広い女で祖母のめいだけに何処どこかよく似ていた。辻車に乗って来て、気分がわるいと言った。
他に東京の女学校を出た養子の娘さんがいた。奥さんのめいにあたるので、部落の方にその実家があり、しょっちゅうそっちへ行っていた。
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
家主の婆あさんのめいというのが、毎晩肌襦袢はだじゅばん一つになって来て、金井君の寝ている寝台のふちに腰を掛けて、三十分ずつ話をする。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
=同= 同婦人は、めいはまなる実家に、近き親戚のすくなき旨を洩らせるが、田舎の富家には往々にして此の如く血縁的に孤立せる家系あり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寝入りばなと見えて、門をたたけど呼べど叫べど醒めてくれぬ。つい近所にめいの家があるが、臨月近い彼女を驚かすのも面白くない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
平一は今朝妹とめいとが国へ帰るのを新橋まで見送って後、なんだか重荷を下ろしたような心持になって上野行の電車に乗っているのである。
障子の落書 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かの紳士は僕のよい友達ではあるが、彼にたいしておまえのめいをくれと言い出すのは、僕以上の大胆な男でなければ出来ないことであった。
生れてすぐ引取ったということだし、おたねには血を分けためいだから、しんみの親子と変らない情愛がかよっている筈である。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、足が酷く汚れていたのでひざめいの寝ているらしい奥の間の方へした。黄色い坐蒲団ざぶとんまるめたようなものが見えた。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
こういう間にお島の部屋では、お島にとってはめいにあたる、八歳のお京という可愛らしい娘が、お島に向かって甘えていた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヘロデヤはヘロデ大王の子アリストブルスの娘で、すなわちヘロデ・アンチパスや、自分の夫ピリポのめいにあたったのです。
尊はしわだらけな顔に苦笑を浮べて、今はさらに拡がったらしい火の手を遥に眺めながら、黙ってふるえているめいの髪をいたわるようにでてやった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「もう沢山、そんないやなんじゃありませんよ。この節あっしと親しくなったのは、金沢町の近江屋半兵衛のめいお栄——」
女学校へやっているめいの顔を見ても腹がたって、「税金が増えるのよ、怖かないか」と云うと、怖いと同情してくれた。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
なんですか、小田切のだんなのめいの姪に当たるとか、いとこの娘だとかで、ともかくも血筋引いてるといいましたからね
叔母おばめいだったのではないか、女房になって仕えていたという点で、自分の生んだ姫君は宮の女王の一人に数えられず私生児として今度のように
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
近江国では、浅井の岡が胆吹山いぶきやまと高さくらべをした時に、浅井の岡は胆吹山のめいでありましたが、一夜の中に伸びて、叔父さんに勝とうとしました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上に擧げたタヂマヒタカがそのめいのユラドミと結婚して生んだ子が葛城のタカヌカ姫の命で、これがオキナガタラシ姫の命(神功皇后)の母君です。
かかとのまがった靴をいて、紫色のはかまを引きずって、髪を算盤珠そろばんだまのようにふくらまして勝手口から案内もわずにあがって来た。これは主人のめいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古寺ふるでら見たような家に老母と小さいめいとタッタ二人残して出て行くのですから、流石さすが磊落らいらく書生もれには弱りました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
母のめいのおかやと云う年二十六になる、器量は余り宜しくないが屋敷育ちで人柄な心掛のよい女を嫁にやろうと云うと、喜代之助は大きに喜びまして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伝八の女房のめいだということで、以前は江戸に住んでいたが、去年の春ごろからここへ引っ込んで来たのである。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これはお若の父も亡くなり、間もなく母も世を去ってたよりなき孤児みなしごとなったので、引き取り養女としたのであった(お若は金谷善蔵夫婦からはめいに当る)
たぶん妹か、めいらしい女のに声をかけると、曼珠沙華ひがんばなのようにあかちゃけた頭髪はくるッと振りむいて、ひどくいきどおった顔色で「赤ンベイ」をしてみせた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
この女のところに遠縁の娘、たしかおしでつんぼだったと思いますが、年のころ十五か、ひょっとすると十四くらいかもしれない、めいが一人おりました。
それにこの間も私の内(夫を指していう)が話したことだが、もしあのラマが俺のめい婿むこに成らないようであれば、ほふって喰物にするという話であった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もうせんから、とりかかっていたおツルちゃん(めい)のモンペが出来あがったので、あの日、学校の帰り、それをとどけに中野の叔母さんのうちに寄ったの。
雪の夜の話 (新字新仮名) / 太宰治(著)
叔母たちはまた、若いころ、たいした浮気もので、蓮葉女はすっぱおんなだったから、めいの操行を油断なく見張り、厳しく取りしまるには全く見事に適当だと思われていた。
「それにしても、君のめいの燁代さんはえらいね。女のくせに、こんなところへやって来るなんて、凄いぞ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
「あれは、君、和尚さんのめいだよ。夏休みに東京から来てるんだよ。どうも、田舎いなかの土臭い中に育った娘とは違うねえ。どこかハイカラのところがあるねえ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
伯父は幾分いくぶんか眉をひそめてその思慮無はしたなきをうとんずる色あれども伯母なる人は親身しんみめいとてその心根こころねを哀れに思い
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
めいの室に人がきているというので、貴君とは知らずに大変無礼をいたした。時に貴君は何方どちらの生れです」
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おかしなことには、この善良な紙屋はごく信心深いめいといっしょに暮らしていて、その自由になっていた。
私のめいだが、明日あしたまで預っていてくれ、と耳にどなってやりましょう。そしてまた娘さんはあなたといっしょにここにはいってくるようにしたらいいでしょう。
祖母、母、今年十二歳になるめいの律子などが珍らしがって我慢なくそこへどやどやとやって来た。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
が、そなたの気持が、まんざら、わからぬ拙者でもござりませぬぞ、それにしても、なぜ、子供のときから、いわば伯父おじめいのようにも親しんで来た、拙者どもに、心の中を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さっそく弁護士の方からパトリック・マンディのめいの結婚をしらせてその金を送ってよこすように言ってやると、伯父がぐずぐず言い出してやはり弁護士を代理に立てたが
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
(アーニャの顔や手にキスする)わたしの子……(涙ごえで)お前はめいどころじゃない、わたしのエンジェルだ、わたしの一切だ。信じておくれ、わたしを、ほんとだよ……
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)