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妄執
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もうしゅう
ふりがな文庫
“
妄執
(
もうしゅう
)” の例文
急がずにその道を御研究になることになさいまして、そのほかの方法で故人の
妄執
(
もうしゅう
)
を晴らさせておあげになることをなさるべきです。
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
水星がネットリと粘っている。何んだこの眼は!
魘
(
うな
)
されているようだ! ああ可哀そうにこの侍、
妄執
(
もうしゅう
)
を払うことは出来そうもない。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは
囚
(
とら
)
われの繩を解かれたような、
妄執
(
もうしゅう
)
がおちたような、その他もろもろの
羈絆
(
きはん
)
を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もうそこには死生を
瞑想
(
めいそう
)
して自分の
妄執
(
もうしゅう
)
のはかなさをしみじみと思いやった葉子はいなかった。我執のために緊張しきったその目は怪しく輝いた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「まだ迷いの夢がさめぬかッ。早乙女主水之介、恐れながら祖師日蓮に成り代り奉って、
妄執
(
もうしゅう
)
晴らしてくれようぞ」
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
人相書も付随しているので、一時警視庁は、それに
該当
(
がいとう
)
する人物の探査に全力を
傾注
(
けいちゅう
)
した。モスコーの犯人の動機は、宗教上の狂信的な
妄執
(
もうしゅう
)
からだった。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
本能というか、愛というか、われながら分らない
妄執
(
もうしゅう
)
がつのっている。——いや、その妄執の真の
相
(
すがた
)
は、この子にあるのではなく、お袖にあるのであろう。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このまま御主君の
妄執
(
もうしゅう
)
も晴らさずにおいては、家中の者の
一分
(
いちぶん
)
立
(
た
)
たずと、御城代大石内蔵助様始め、志ある方々が集まって、寄り寄り仇討の相談をなされた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「拙者は
竹腰藤九郎
(
たけのこしとうくろう
)
でござる、お
首
(
しるし
)
を
頂戴
(
ちょうだい
)
して、
先君
(
せんくん
)
道三
入道殿
(
にゅうどうどの
)
の
修羅
(
しゅら
)
の
妄執
(
もうしゅう
)
を晴らす存念でござる」
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
役人に引渡された怨みを
陳
(
の
)
べ、この
妄執
(
もうしゅう
)
を晴らすため、成瀬屋の者を一人一人、残らず殺してやる、といった凄まじいことが、少しくどい調子で書いてあるのです。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
よしや我身の
妄執
(
もうしゅう
)
の
憑
(
の
)
り移りたる者にもせよ、今は恩愛
切
(
きっ
)
て
捨
(
すて
)
、迷わぬ
初
(
はじめ
)
に
立帰
(
たちかえ
)
る珠運に
妨
(
さまたげ
)
なす
妖怪
(
ようかい
)
、いでいで仏師が腕の
冴
(
さえ
)
、恋も未練も
段々
(
きだきだ
)
に
切捨
(
きりすて
)
くれんと
突立
(
つったち
)
て
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこには死人の恐るべき
妄執
(
もうしゅう
)
が、如何なる名画も及ばぬ鮮かさを以て、刻まれているのだ。
何人
(
なんぴと
)
も一目見て顔をそむけ、二度とそこへ目をやろうとはしない程であった。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
恐ろしき
眼
(
まなこ
)
を見張り、「爾は昨日黒衣がために、射殺されたる野良犬ならずや。さては
妄執
(
もうしゅう
)
晴れやらで、わが
酔臥
(
えいふ
)
せし
隙
(
ひま
)
に
著入
(
つけい
)
り、
祟
(
たたり
)
をなさんず心なるか。
阿那
(
あな
)
嗚呼
(
おこ
)
の
白物
(
しれもの
)
よ」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
俗物源十郎の
妄執
(
もうしゅう
)
、炎火と燃えたってついにお艶におよばないではおかないのであろうか?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すべて、それが魔法なので、貴女を魅して、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の
境
(
きょう
)
に乗じて、その
妄執
(
もうしゅう
)
を晴しました。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さあ、どうぞ、これへお越しやして、朝霧の
妄執
(
もうしゅう
)
のために一片の
御回向
(
ごえこう
)
を致し下さいませ、重清がためにもこの上なき供養となりまするのでござります、いやもう御奇特なことで」
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また同時に、オリヴィエの思い出、オリヴィエの死から来る絶望の念、満たされ得ない創作の
妄執
(
もうしゅう
)
、虚無の
深淵
(
しんえん
)
の前に荒立つ自負心、などもあった。あらゆる悪魔が彼のうちにあった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
トルストイやゲーテのように、中年期を過ぎてまでも、プラトニックな恋愛を
憧憬
(
しょうけい
)
したり、モノマニアの理想に
妄執
(
もうしゅう
)
したりするような人間は、すくなくとも僕らの周囲にはあまりいない。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
残念さ、
嫉視
(
しっし
)
妬
(
ねた
)
ましさ! すべての悪の根源をなす
修羅
(
しゅら
)
の
妄執
(
もうしゅう
)
であったろう。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
阿難 ——苦なる
哉
(
かな
)
。苦なる哉。わたしは
遂
(
つい
)
に妖術に縛られて生ながら青銅の像となる。この
生恥
(
いきはじ
)
はまだ堪えよう。出家の身として、
衆生
(
しゅじょう
)
の眼へ逆に
妄執
(
もうしゅう
)
の姿となって永劫に留まることの恐ろしさ。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「何というだらしないこと、ここまで来て未だに
妄執
(
もうしゅう
)
がつきぬとは」
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
いつかはまたもっと手ひどく仇を受けるじゃ、この身終って次の
生
(
しょう
)
まで、その
妄執
(
もうしゅう
)
は絶えぬのじゃ。
遂
(
つい
)
には共に
修羅
(
しゅら
)
に入り
闘諍
(
とうそう
)
しばらくもひまはないじゃ。必らずともにさようのたくみはならぬぞや。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それは
囚
(
とら
)
われの
縄
(
なわ
)
を解かれたような、
妄執
(
もうしゅう
)
がおちたような、その他もろもろの
羈絆
(
きはん
)
を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
子としての道を歩もうとすれば、母親の
臨終
(
いまわ
)
の
妄執
(
もうしゅう
)
を未来
永劫
(
えいごう
)
解
(
と
)
くことが出来ず、浮かばれぬ母親の亡魂をいつまでも地獄へ落として置かねばならぬ
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……何のために今まであってないような
妄執
(
もうしゅう
)
に苦しみ抜いてそれを生命そのもののように大事に考え抜いていた事か。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あるいは、その
妄執
(
もうしゅう
)
が妖星となって、こうして迷い歩いている、私に
尾
(
つ
)
いて廻っているかも知れない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四十年の恨みを、俺の父と母とのあの血みどろの
妄執
(
もうしゅう
)
を、今こそはらすことが出来たのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
去年三月殿中において高家の筆頭吉良上野介に
斫
(
き
)
りつけ、即日切腹、お家断絶となった主君浅野内匠頭の泉下の
妄執
(
もうしゅう
)
を晴さんために、昨夜吉良邸に乗こんで、主君の仇上野介の
首級
(
しるし
)
を揚げ
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
飛んで星移り、当時は
何某
(
なにがし
)
の家の土蔵になったが、切っても払っても
妄執
(
もうしゅう
)
は
消失
(
きえう
)
せず、金網戸からまざまざと青竹が見透かさるる。近所で(お
竹蔵
(
たけぐら
)
。)と呼んで
恐
(
おそれ
)
をなす白壁が、町の表。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのような
無稽
(
むけい
)
な申し立て、此処では通らぬぞ、察するにその方、僧侶の身にあるまじき
殺生
(
せっしょう
)
を犯した故、死者の
妄執
(
もうしゅう
)
晴れやらず、それへ
止
(
とど
)
まっておるに相違あるまい、
処
(
ところ
)
の法に照らして
所刑
(
しおき
)
する
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
少し血に汚れているが、洗い
浄
(
きよ
)
めて旧主芸州侯にお
還
(
かえ
)
し申上げ、せめて亡き父上の
妄執
(
もうしゅう
)
を晴らしたいと、それは誰はばかる者もなく持ち帰り、本日はこれから、霞ヶ関御屋敷に参上するところであった
銭形平次捕物控:101 お秀の父
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分を縛っているこの
妄執
(
もうしゅう
)
を断ち切らなければ、この状態からぬけだすことはできない。これが足掛りだ、と彼は心をきめた。
古今集巻之五
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
兄さん、兄様、ただ一言謀反やめると云うてくださらぬか! このまま死んでは
妄執
(
もうしゅう
)
残り、
臨終
(
いまわ
)
の妄執は五百生、生き代わり死に代わり未来
永劫
(
えいごう
)
浮かぶせないと申します。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
権力
(
けんりょく
)
や栄花に
妄執
(
もうしゅう
)
した貴族心理は、われら庶民の理解には、遠すぎて、
縁
(
えん
)
なきもののようですが、次に、
地下
(
ちげ
)
から
擡頭
(
たいとう
)
した新興勢力の平家一門も、また源氏の野人も、次々に
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凝
(
こ
)
り固った五十年の
妄執
(
もうしゅう
)
が、生命なき
髑髏
(
どくろ
)
を歩かせたのであろうか。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妄執
(
もうしゅう
)
のすさまじさといったものが、おくにの表現がむぞうさであるだけよけいに、まざまざとあらわれているように思えた。
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ややもすれば、この
業
(
ごう
)
が煮えたぎるように、そなたの体のうちへも、道誉という男を
烙
(
や
)
きつけねば、一生、
妄執
(
もうしゅう
)
は晴れやるまい。藤夜叉、これほど男からいわれたら、もう眼を
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生々世々浮かぶ時なく悲しいことではござんせぬか! 兄一人妹一人他に親も
親戚
(
みより
)
もないのはこういう時には何より幸い、この世に残る
妄執
(
もうしゅう
)
もなく、笑って死んで行けまする。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「若い者といっしょに風呂へはいると肌が若くなるんだそうだ、誰かに聞いたもんだから、早速ためすつもりさ、あの年になってまだそんな
妄執
(
もうしゅう
)
があるんだから」
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
常に常に、剣に
恃
(
たの
)
み剣に迷い剣に執着しておられる。それに反して、伊勢守はとくより剣を捨てておる。剣は持てど、剣に
恃
(
たの
)
まず、剣に
妄執
(
もうしゅう
)
せず、無刀の心をもって、体としておる。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おそらく
修羅
(
しゅら
)
の
妄執
(
もうしゅう
)
も、これで晴れたことでございましょう。……では、どうして敵と出会い、どんな具合に討ち止めたか、お話しすることに致します。なかばは偶然でございました。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それはやがて、
妄執
(
もうしゅう
)
のごとき信念となり、かれみずから、おのれを壮士なりと確信させた。
蘭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この
桧垣
(
ひがき
)
の家を中心に、上皇は
下淫
(
げいん
)
を愛し、かれは
上淫
(
じょういん
)
に
妄執
(
もうしゅう
)
していたかたちだった。朝に夕につけまわし、覚然はついに悪僧の本領をあらわして、暴力による思いをとげてしまった。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奪い、一つには我らの先輩ともいうべき、慶安義挙の人々の、修羅の
妄執
(
もうしゅう
)
を晴らすがよく、二には我らが義党の多数を、生け捕りいたした暴状への返報、これを致すがよろしゅうござる!
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すでに一命のないところを、こうして助けていただきながら、なお勝手な
妄執
(
もうしゅう
)
を
吐
(
ほ
)
ざくようですが、毛家のおやじと、せがれの毛仲義、あいつら親子を思い出すと、どうでも腹がおさまりません。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
臨終
(
いまわ
)
の
妄執
(
もうしゅう
)
五百生
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“妄執”の解説
妄執(もうしゅう)とは、妄想がこうじて、ある特定の考えに囚われてしまう事、またはその状態を指す。
(出典:Wikipedia)
妄
常用漢字
中学
部首:⼥
6画
執
常用漢字
中学
部首:⼟
11画
“妄”で始まる語句
妄
妄想
妄念
妄動
妄信
妄説
妄言
妄誕
妄語
妄漫