トン)” の例文
「地下鉄会社が買入れた独逸ドイツ製の穴掘り機械だ。地底の機関車というやつだ。三トンもある重い機械が綺麗きれいになくなってしまったんだ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「昨日ノ朝、妙ナ船ニ会イマシタ、三本帆檣マストノ二千トンバカリノ奴デス。船内ニハ誰モ居ナイ様子デ……何処どこ彼処かしこモ血ダラケデシタ」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
速射砲の設備整然たる五百トン級、乃至ないし二百噸級の水雷駆逐艇が五艘、九十線の銅版キメ細やかに浮き出しているとは夢にも知らずに
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
駒井甚三郎の無名丸は八十トン、六十馬力の、駒井独創の和洋折衷形なのであります。人間で言えば五十人の人を乗せるに適している。
××もまた同じことだった。長雨ながあめの中に旗をらした二万トンの××の甲板かんぱんの下にも鼠はいつか手箱だの衣嚢いのうだのにもつきはじめた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
濛々もうもうと天地をとざ秋雨しゅううを突き抜いて、百里の底から沸きのぼる濃いものがうずき、渦を捲いて、幾百トンの量とも知れず立ち上がる。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長距離攻撃のため投下弾積載量ははなはだしく制限されてはいたが、しかもなお各機優に一トン余の爆弾、焼夷弾を抱いていたのである。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、六千トンもある船が晴雨計バロメイタアの針が逆立ちしようと出港地へ帰航するようなことのないのは海で育った彼が先刻承知の筈だった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
洞窟の奥には、糧食庫や、弾薬庫があり、岩をくり抜いた重油タンクの中には、どろどろした赤黒い重油が、一万トン貯蔵されているのだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
一万トン級が入る第一号ドックを前にして、職工長やパイロットがいる事務所があり、それに隣してトタン屋根の船具部があった。
基準排水量わずかに七百五十トンびょうたる一駆逐艦の身でありながら科学独逸の粋を集めていかなる秘密装備を施したものか、経済速力二十七ノット
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その時の福沢先生は和蘭オランダ政府から将軍政府に送ったところの軍艦、軍艦といえば大きいようであるが、わずかに千トン以下の「ガンボート」である。
滝口坑はこの夏までに十万トンの出炭をしなければならない。僅かの変災のために、全盤の機能が遅滞することは一分間といえども許されなかった。
坑鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
たんがよいの船であろう、「紀淡丸」と記した汽船が桟橋さんばしを離れて行くのだが、四五百トンにも足らないほどの船体がぐるりと船首を向き変えるとき
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「一立方呎は一斗五升、又水一立方呎は六十六封度ポンド半の重量がありますから、水約三十六立方呎で一トンになります」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
七十トン縦帆船スクーナーは、マルケサス・パウモツ・タヒティ・ハワイ・ギルバァトを経て一年半に亘る巡航の後、一八八九年の終にサモアのアピア港に着いた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
小豆島と高松を往復する一〇〇トン足らずのボロ汽船であったが、彼の石炭のいれ方がちゃちだから船が進まんと、かまの前でへっぴり腰を蹴り飛ばされた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
混凝土混合機コンクリート・ミキサーの担当者が、切取の穴の中で、野崎軍属が働いていることに気がつかずに、コンクリートの溶体を二トンばかりドッと流しこんでしまったんだ
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けれども大船おおふねに救い上げられたからッて安心する二葉亭ではないので、板子いたご一枚でも何千トン何万噸の浮城フローチング・キャッスルでも
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
東京から農具を買い集めに来た見知らぬ一人の男が、参右衛門の所へ薪買いに来て、東京へ貨車を買切りで帰るのだが、荷のトン数が不足して貨車が出ない。
片帆の力を借りながら、テンポの正規的な汽鑵きかんの音を響かせて、木下の乗る三千トンの船はこの何とも知れない広大な一鉢の水の上を、無窮に浮き進んで行く。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ふと岩蔭の窪みに、見馴れぬ船がもやっているのに気づいた。十トンぐらいの白色に塗られたスマートな船だ。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
卿等は百万トンの甲鉄艦にも増し、百インチの砲弾にも優る、男子排斥の一大武器たる肱鉄砲を有するに非ずや。
肱鉄砲 (新字旧仮名) / 管野須賀子(著)
碇泊中の船舶では二万トンのマンチユリアの灯火がもつとも光彩を放つて居た。サンパンに乗つた支那娼婦いはゆる「水妹すゐまい」が薄暗い灯火あかりけて湾内を徘徊して居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第二京丸は三百四十トン、昨年の十月から今年の四月まで捕鯨母船極洋丸と共に南極の洋へ遠征し、キャッチャーボートとして百七十頭の巨鯨をとった手柄の船だ。
鯨を釣る (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
前年亜米利加に行た時には小さな船で海上三十七日もかかったと云うのが、今度のコロラドは四千トンの飛脚船、船中の一切いっさい万事、実に極楽世界で、廿二にじゅうに日目に桑港サンフランシスコついた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その真紅な帆の帆前船ほまえせんが見えだしたのは、明治三十三四年ごろ、日本郵船会社の品川丸と云う古ぼけた千五百トン位の帆前船がドド根のあたりで沈没してから間もなくであった。
真紅な帆の帆前船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
七百トンばかりのもので、古い商船のやうですが、よく見ると、いかにもがつしりできてゐて、軍艦といつてもよいやうです。どこかに大砲などがかくされてゐさうです。
シロ・クロ物語 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
素人運転士の僕だが、白人を克服せんとする意気で、柔腕やさうでにもかかわらず、千五百トンの巨船が自由自在に動き、舵機だきも、スクリウも、僕の命ずるがままになってくれる。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
新潟から満洲航路の船もでるが、やうやく三千トンの小さなもので、乗りたがる人がすくない。
日本郵船会社にこほり寛四郎といふ老船長があつた。今は船から出て神戸の町外れとかに住んでゐるさうだが、日本人で一万トン以上の船に乗つたのは、この郡氏が最初だといふ事だ。
彼らはまず放射物質を含有する数百トンの鉱石を分解して放射物質を含んでいない部分を次々に除去してゆき、最後に、この莫大な鉱石の中から数グラムのラジウムを得たのであった。
ホオムズの探偵法 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
それは水上トン数約四百噸ばかりの沿岸艇で、オレンジ色に染め変えられた美しい船体は、なにか彩色でもした烏賊いかの甲のように見えたが、潜望鏡と司令塔以外のものはいっさい取り払われて
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
尤も千トン以下で船脚も遅かったが、おまけに風波が起って動揺が甚だしくなった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
船は八百トンの貨物船であるが、十人くらいの旅客を収容するだけの余裕があった。船室というほどではなくとも、第一運賃が安いし、海に馴れた旅客にはかえってこの方がいいのである。
風蕭々 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
静かな空気を破ってなまめいた女の声が先ほどから岸で呼んでいた。ぼんやりしたあかりをむそうに提げている百トンあまりの汽船のともの方から、見えない声が不明瞭になにか答えている。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
帰化英人アダムスをして百二十トンの大船を造らしめ、太平洋を横断して、墨西哥メキシコと交通せしめ、伊達政宗だてまさむねは、図南となん鵬翼ほうよくふるわんと欲して、その臣支倉はぜくら六左衛門をして、墨西哥にけいして
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ちつぽけな帆前や、たかが五百トンや千トンの船には、羅針盤が必要だ。が、三万とか四万とか云ふ大軍艦になると、羅針盤も何も入りやしない、大手を振つて大海が横行出来る。はゝゝゝ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ホルム氏は十月三日に、重量二トンの模造碑を特別製の馬車に載せて、金勝寺から鄭州へ送り出した。ホルム氏自身は三日後くれて、十月六日に西安を出發し、模造碑を追うて鄭州に向つた。
そこには長い大きな二本の鉄管が横たはつてゐた。それは旅順から分捕つた百トングレンの柱だと権八は私に説明した。やがてその一端の横穴から少年達は一人一人頭からひ込んで行つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
トン数、四百八十八噸。旅客定員、一等、二十名。二等、七十七名。三等、三百二名。賃銀、一等、三円五十銭。二等、二円五十銭。三等、一円五十銭。粁程キロてい、六十三粁。新潟出帆、午後二時。
佐渡 (新字新仮名) / 太宰治(著)
びょうがゆるみでもするように、ギイギイと船の何処かが、しきりなしにきしんだ。宗谷海峡に入った時は、三千トンに近いこの船が、しゃっくりにでも取りつかれたように、ギク、シャクし出した。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
満載時の重量は約七トン半なり。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
一万二千八百トン
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
アラスカ丸は七千トンだから荷物船カーゴボートでは第一級の大型だったが、たとい七千噸が七万噸でもあの波に引っかかったらも同然だ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
荒れくるう波が、ごおーっと音をたてて、八千五百トンの大艦『最上』も、やがてもうもうとたち上る水煙につつまれてしまった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
船の図を見ると、この船は何式で、何トンぐらいで、どの時代、どの国の建造にかかっているかということのみが主となりました。
空の帝王と呼ばれる途方もなく尨大ぼうだいな全鋼鉄の怪物で、爆弾だけでも、五十トン近く、積みこんでいるという物凄ものすごい飛行船だった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見ると、入江の中には五十トン位に見える伝馬てんまの親方みたいな帆かけ船がつないであり、外にも、汚い小舟が二三見えたが、人間は一人もいなかった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
船具部の仲間は、その日全員で、一号ドックに入渠中の一万トンちかい欧州航路信濃丸の外装塗工にあたっていた。