たつ)” の例文
人間界にんげんかいではないものを……と、たついま亭主ていしゆなれたやうなこゑをして、やさしい女房にようばうなみだぐむ。おもひがけない、可懷なつかしさにむねせまつたらう。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何処どこか近くの家で百萬遍ひやくまんべん念仏ねんぶつとなへ始める声が、ふと物哀ものあはれに耳についた。蘿月らげつたつた一人で所在しよざいがない。退屈たいくつでもある。薄淋うすさびしい心持こゝろもちもする。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なんぢ覺悟かくごをせよ』女王樣ぢよわうさま唐突いきなりこゑいからし、ひながら地韛踏ぢだんだふんで、『あたまねるが、宜いか、たついま!さァ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たつた一人彫刻家の藤井浩祐かうすけ氏のみには適当な役が無かつたが、さいはひ藤井氏は物言ひをつける事が巧かつたし、物言ひをつけなければ勝目のない競技ゲームも多からうといふので
それ其筈そのはづ実家さと生計向くらしむきゆたかに、家柄いへがら相当さうたうたかく、今年ことし五十幾許いくつかのちゝ去年きよねんまで農商務省のうしやうむしやう官吏くわんりつとめ、嫡子ちやくし海軍かいぐん大尉たいゐで、いま朝日艦あさひかん乗組のりくんでり、光子みつこたつ一人ひとり其妹そのいまうととして
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
阿関はつむりの先より爪先つまさきまで眺めていゑいゑ私だとて往来で行逢いきあふた位ではよもや貴君あなたと気は付きますまい、たつた今の先までも知らぬ他人の車夫くるまやさんとのみ思ふてゐましたに御存じないは当然あたりまへ
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
空は鏡のやうにあかるいのでそれをさへぎつゝみ木立こだちはます/\黒く、星はよひ明星みやうじやうたつた一つ見えるばかりでこと/″\く余りにあかるい空の光にき消され
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なんにしても、わたしまゐりません、かく』とつて愛ちやんは、『のみならず、それはたゞしい規則きそくではありません、たついま考案かうあんされたのですもの』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
づ……ひとねんのためにまをさうに……われらがりますこれなる瓦斯燈がすとうたついま、お前樣まへさま呼留よびとめましたなり、一歩ひとあしとてあとへもまへへもうごきませぬ……これ坂下さかしたからはじめまして
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
阿關おせきつむりさきより爪先つまさきまでながめていゑ/\わたしだとて徃來わうらい行逢ゆきあふたくらゐではよもや貴君あなたきますまい、たついまさきまでもらぬ他人たにん車夫くるまやさんとのみおもふてましたに御存ごぞんじないは當然あたりまへ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
………人は幾度いくたびも戀する事が出來るだらうか。たつた一度しか出來ないと、女性は必ず云ひ張るに違ひない。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
と……なにしろひどつてげたんです。たついまことなんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たつひとつの邪魔者じやまもの
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たつふたつ……」
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)