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今を去ること一八〇〇年前オーグストス・シーザーがローマ帝王の位にくや、その四境を守衛するの兵士は五十万に出でざりしも
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
考へも自然に内攻し餘りに自分にき過ぎてゐることが自分にもわかつたが、容易にさういふ状態から脱け出ることが出來なかつた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
九州を征服し、山陽山陰をき、正成、義貞に勝って、思うきみ御位みくらいかせ、身は大御所、大将軍とあがめられている栄位にある。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日初太子王位にいて、継母達摩后姙娠中の子は行く行く王を殺して代り立つと相師が言ったから、今の内に后を殺すべしといきまく。
「私欲」を去って「天意」にくことが畢竟「煩悩」を断じて「仏意」に従うことに帰着すべきであることを、説こうとはしない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼らは機械体操をする人形のように、足をピンピンさせながらマストから、離れず、かずのところで仕事をしなければならなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
もし法王が位にいた時とか、あるいは御出生ごしゅっしょう御薨去ごこうきょというような場合は例外で、普通の僧侶でも一人二十円内外の収入があるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
後堀河天皇が位にかれると、西園寺公経が内大臣になり、ついで太政大臣になり、ややおくれて、嫡男実氏が内大臣になった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
「出ではしり去ななともへど」というあたりの、朴実とでも謂うような調べは、憶良の身にまとったものとして尊重していいであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
仁宗立ってそのとし崩じ、仁宗の子大位にくに及びて、ついに反す。高煦の宣徳帝せんとくていけるは、なお燕王の建文帝に於けるが如きなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれはこの能力のために、今日まで一図に物に向って突進する勇気をくじかれた。かず離れず現状に立ちすくんでいる事がしばしばあった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女流作家の恋歌は、如何にあはれに、如何に世の常ならず焦るゝかを表さうとして、心理解剖に陥つてゐるが、尚自分にけて歌うてゐる。
僭越ながらも自ら神命を受けたりと称し、神に誓って国王の位にくものが、かかる非人道的の行為を為すを忍ぶとは心得ぬ。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
各地方の大酋長だいしゅうちょうにして、此の五つの称号の全部、もしくは過半数を(人望により、或いは功績により)得たる者、推されて王位にくなり。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
はじ天皇てんのう、帝位におきになろうとしました時に御辭退遊ばされて「わたしは長い病氣があるから帝位にくことができない」
しかしそれは御互にき過ぎて、相殺作用を起す場合の話であろう。この場合のほととぎすは琴を妨げず、琴もまたほととぎすを妨げない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
小説を「かず離れず」の芸術として既に形式の完成されたものと見る考え方が、近代小説の可能性の追求の上位を占めてしまったのである。
可能性の文学 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
日本で最初の女性の天皇が位にかれ、政治に参与せられたろうと推測せられるウマヤドの皇子は天皇とはなられなかった。
無論一旦臣籍を継いだものが、天位にきうべき資格のあろう筈はない。したがって清麻呂が「臣を以て君と為す未だかつてこれあらざるなり」
道鏡皇胤論について (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
それから新道にいたり離れたりしながら翠緑鮮かな松林の中を穿つて通じてゐる舊道の細徑を傳うて小涌谷に達する間。
箱根の山々 (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
女は座席にくと悠々小田島のシガレットケースから煙草たばこき出してふかし始めた。そして胡散臭うさんくさそうに女を見乍らあつらえを聞く給仕男へ横柄に
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だが、今日は兵馬が、道行の道中の時のように、かず離れずの煮え切らない受け答えはしない、いよいよ言葉を改めて、いよいよきっぱりと
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後ろからそれを追う男が一人、かず離れずに来るのを、お静は知ってか知らずか別に気にとめる様子もありません。
バスの音とソプラノの音とが、かずはなれずに縺れ合つて、高くなつたり低くなつたりして漂ふ間を、福富の肉聲が、浮いたり沈んだりして泳いでゐる。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
叔父上が位にいて下さって、僕はどんなに助かるかわからない、とも申して居りました。ハムレットさまは、現王の愛情を信じていらっしゃるのです。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
吾々はある意味に於ては、かなければならない。ある意味に於ては、離れなければならない。しかし、吾々は即くばかりで生きてをられるものではない。
新しい生 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
御位みくらいにおきにならずに一臣下で仕えていらっしゃるのは、大納言さんがもう一段出世ができずにおくれになって、お嬢さんが更衣こういにしかなれなかった
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そこへはねの白いちょうがいちはやく訪れて来て、ひらひらと羽ばたいて、花にいたり花を離れたりして、いつまでも花のあたりを去りかねて飛び廻っている。
率直にその働きにいているのである。桂の離宮の建築は、日本の美の伝統にあるところの、素直さによって、この美しさに到達しているともいえるのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
で、この綜合感と個々の感じとは、き、離れ、即き、離れつつ諧調をなし、破調をなして旋回するのだ。
二人は、友人であるといってもよいし、愛人同士であるといってもよいような、かず離れずの間だった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
元来栄達に志す人ではなかったから、位にいた後、種々の善政を布き、良法を設けて、市民の信頼に報いわり、直ちに位をつること弊履へいりの如くであった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「彦のこった、大丈夫かねの脇差し——かず離れず見え隠れ、通う千鳥の淡路島、忍ぶこの身は——。」
「しかし簡単に勝ってしまうと、感情を害しますから、かず離れずというところを行く方針です」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
要約すれば平行線の定理なのである。私は私の人生の座標をもち、彦山夫人には夫人の座標がある。留さんも同じことであって、おのおのはその人生の座標にいて生きている。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一方、こうして此頃のように自分がそれにかずはなれずの気もちでいられるようになってから、漸く宮仕えと云うものの趣を自分でも分かりかけて来たような気もしないではなかった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
とあるごとく、最後の審判において権威の座にき給うキリストをさす言葉です。これを「人の子」というのは、地上の勢力を獣に象徴し、これに対して人間らしき人間という意味です。
俗書では、天皇が女帝と道鏡の肉体的な関係をいさめて女帝の怒りをかったとあるが、そんなことが考えられるであろうか。女帝は自分を選んで帝位にけてくれた生れながらの現人神あらひとがみである。
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
今の独帝カイゼルは人一倍この遊びが好きで、皇帝の位にいてからも、大晦日の晩になるとこつそりお忍びで市街まちへ浮れ出し、擦れ違ひざまに他人ひとの隙を見ては、ぽかりぽかりと擲りつけたものだ。
眞にく縁のものなら即き、離る縁のものなら離るべしといふのであつたが、しかし、長く尾を引くに違ひない後に殘る悔いを恐れる餘裕よりも、二人の一日の生活は迫りに迫つてゐたのである。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
三とせをわたりてもなほ果つべくもあらぬを、菟道うぢきみ深くうれひ給ひて、あに久しくきて天がしたわづらはしめんやとて、七四みづから宝算よはひたせ給ふものから、罷事やんごとなくて兄の皇子みこ御位みくらゐかせ給ふ。
代々の帝の御位みくらいかせ給うは、天の日をぐということにて、天津日嗣あまつひつぎといい、また宮仕えし給う人を、雲の上人うえびとといい、都を天といい、四方の国、東国よりも、西国よりも、京へ上るといえり。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だから、拘泥しちゃいけない、きすぎちゃあいけない……。
不肖の兄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
位にいてそのままに、何千何万何億と
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
その玉座にはいやでも早くかれるのだ。
奢侈は荘麗の位にく肉感の祭典。
元々、彼は身の程も知らず、帝位にこうとする野心があるので、それには、玉璽をわが物にしなければと考えておるものらしい
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八十歳の高齢で虎に食われたまいしと記憶する、さしも九五きゅうごの位にきたもうべかりし御方の虎腹に葬られたまいしは誠に畏れ多き事だが
帖木児チモルが意を四方に用いたる知る可し。しからばすなわち燕王の兵を起ししよりついくらいくに至るの事、タメルランこれを知る久し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
公正の情熱によって「私」を去ろうとする努力の傍には、超脱の要求によって「天」にこうとする熱望があるのであった。
夏目先生の追憶 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)