いさみ)” の例文
初めお勢が退塾して家に帰ッた頃「いさみという嗣子あととりがあッて見ればお勢は到底どうせ嫁に遣らなければならぬが、どうだ文三に配偶めあわせては」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これに気を得ていさみをなし、二人の書生は腕を叩きこぶしふるうて躍懸おどりかかれば、たれぬさきに、「あいつ、」「おいて。」と皆ばたばた。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腕を突張つッぱおれは強いと云う者が、開けない野蛮の世の中には流行はやりましたもので、神田の十二人のいさみは皆十二支を其の名前に付けて十二支の刺青ほりものをいたしました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼はそのいつはりまこととを思ふにいとまあらずして、遣る方も無き憂身うきみの憂きを、こひねがはくば跡も留めず語りてつくさんと、弱りし心は雨の柳の、漸く風に揺れたるいさみして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文太郎は上京後萬事好都合に運ぶのに頗るいさみを爲して居つたが此忠告を聞いた時は一時大いに落膽した。
鋭い声がしたので、その方を見ると、近藤いさみせがれ、周平が、白い鉢巻をして、土方を睨んでいた。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
『サア、これから獅子狩しゝがりだ/\。』といさみすゝめるのを、わたくしやうやくこと押止おしとめたが、しからばこのしま御案内ごあんないをといふので、それから、やまだの、かはだの、たにそこだの、深林しんりんなかだの
なしてもとの如く風呂敷に押包せ丁稚でつち脊負せおはいさみすゝんで歸りけるが和吉は霎時しばらくかたへに在て二個ふたりが話しを熟々つく/″\きゝ主個あるじの息子が昨日きのふこゝより歸りしわけも今日は又態々わざ/\こゝまで忠兵衞が來りてむさうちをもいとはず酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いさみのそれに対する孝心というものは、それは実に他の見る眼もいじらしいくらいで、事あれば必ず江戸に残した父に報ずる、立身したからと言っては父に、功名したからと言っては父に——それから
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
姉をおせいと言ッて、その頃はまだ十二のつぼみおとといさみと言ッて、これもまた袖で鼻汁はな湾泊盛わんぱくざかり(これは当今は某校に入舎していて宅には居らぬので)
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この頃は病気やまいと張合ういさみもないで、どうなとしてくれ、もう投身なげみじゃ。人に由っては大蒜にんにくえ、と云うだがな。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此處ここへと申にぞ其儘そのまゝに差出せばいそふう押開おしひらきて是は三五郎の手跡しゆせきなり此文體ぶんていにては紀州表の調しらべ行屆ゆきとゞきたりと相見えいさみたる文段なりさりながら兩人のちやく是非ぜひ晝過ひるすぎならん夫迄は猶豫いうよ成難なりがた餘念ざんねんながら是非に及ばずせがれ忠右衞門おくれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
酒代さかてをしまぬ客人きやくじんなり、しか美人びじんせたれば、屈竟くつきやう壯佼わかものいさみをなし、曳々聲えい/\ごゑはせ、なはて畦道あぜみちむらみちみにんで、三みちに八九時間じかん正午しやうごといふのに、たうげふもと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一時頃にいさみが帰宅したとて遊びに参ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
見てざるはいさみなしとか惡とはしれども一工夫ひとくふう仕まつて見申べしとやゝ暫く思慮しりよに及びけるが人々に向ひまづ天一殿の面部は當將軍家の幼稚をさなだち御相恰ごさうがふよくしのみか音聲おんじやう迄も其儘なれば十が九ツ此企このくはだて成就せんと云に皆々打よろこび茲に主從しうじうの約を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いさみが出た。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)