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二枚
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にまい
通りかゝつた
見知越の、みうらと
言ふ
書店の
厚意で、
茣蓙を
二枚と、
番傘を
借りて、
砂の
吹きまはす
中を
這々の
體で
歸つて
來た。
帯のなかに
金・
銀または
銭を
持つな。
旅の
嚢も、
二枚の
下衣も、
鞋も、
杖も
持つな。
視よ、
我なんじらを
遣すは、
羊を
豺狼のなかに
入るるが
如し。この
故に
蛇のごとく
慧く、
鴿のごとく
素直なれ。
と
町内第一の
古老で、
紺と
白の
浴衣を
二枚重ねた
禪門。
豫て
禪機を
得た
居士だと
言ふが、
悟を
開いても
迷つても、
南が
吹いて
近火では
堪らない。
給金をのこらず
夜具にかける、
敷くのが
二枚、
上へかけるのが
三枚といふ
贅澤で、
下階の
六疊一杯に
成つて、はゞかりへ
行きかへり
足の
踏所がない。
而して
誰も
居ない
八畳の
真中に、
其の
双六巌に
似たと
言ふ
紫縞の
座蒲団が
二枚、
対坐に
据えて
有つたのを
一目見ると、
天窓から
水を
浴びたやうに
慄然とした。
二人分、
二枚の
戸を、
一齊にスツと
開くと、
岩膚の
雨は
玉清水の
滴る
如く、
溪河の
響きに
煙を
洗つて、
酒の
薫が
芬と
立つた。
手づから
之をおくられた
小山内夫人の
袖の
香も
添ふ。
後で
見ると、
櫓の
兩脚からこたつの
縁、すき
間をふさいだ
小布團を
二枚黒焦に、
下がけの
裾を
燒いて、
上へ
拔けて、
上がけの
三布布團の
綿を
火にして、
表が
一面に
黄色にいぶつた。
洋杖と
紙入と、
蟇口と
煙草入を、
外套の
下に
一所に
確乎と
壓へながら、
恭しく
切符と
急行劵を
二枚持つて、
餘りの
人混雜、あとじさりに
成つたる
形は、
我ながら、
扨て
箔のついたおのぼりさん。