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阿諛
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あゆ
ふりがな文庫
“
阿諛
(
あゆ
)” の例文
ジュリアンはエマニュエルを知っており、グージャールはムーエーを知っていた。二人はにこやかな
阿諛
(
あゆ
)
的な様子で近寄っていった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
阿諛
(
あゆ
)
し、哀願し、心身を
他
(
た
)
の
蹂躙
(
じゅうりん
)
に委せて反抗の気力も失せはて、気息また
奄々
(
えんえん
)
たるもの、重なり重なり乗り越え、飛び越ゆるもの
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
人を見る目も出来れば人の価値も信実もわかってくる。
阿諛
(
あゆ
)
と権謀の周囲で、離れてはじめて
貴
(
たっ
)
とさのわかるのは
真
(
まこと
)
だけだ。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
二人の
医師
(
くすし
)
に任せて置いて、
己
(
おのれ
)
はあちこちの建物へ行き、
阿諛
(
あゆ
)
の
輩
(
ともがら
)
と一つになり、乱倫の真似するであろう、そこを狙って、そこを狙って……
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その相違を、ひと口にいうと、柳生家は柔らかにまた
鷹揚
(
おうよう
)
に。小野家は、
阿諛
(
あゆ
)
をきらい、率直に烈しい稽古を特色とした。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
官吏は
唯
(
ただ
)
民に対する
誅求
(
ちゆうきう
)
と上に対する
阿諛
(
あゆ
)
とを事としてゐる、かゝる世の中に
腕節
(
うでふし
)
の強い者の腕が鳴らずに居られよう
歟
(
か
)
。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
アルイハ主ノ蔵スル所、アルイハ客ノ携ル所、心ヲ潜メテ以テ品賞ス。相
菲薄
(
ひはく
)
セズ。相
阿諛
(
あゆ
)
セズ。惟公論ヲ然リトナス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
金眸が
髭
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
をはらひ、
阿諛
(
あゆ
)
を
逞
(
たく
)
ましうして、その威を仮り、
数多
(
あまた
)
の
獣類
(
けもの
)
を害せしこと、その罪
諏訪
(
すわ
)
の湖よりも深く、また
那須野
(
なすの
)
が
原
(
はら
)
よりも
大
(
おおい
)
なり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
若しこの高浜とするなら赤シヤツの
気障説
(
きざぜつ
)
に
阿諛
(
あゆ
)
して野だが『あの島をターナー島と名づけようぢやありませんか』
坊つちやん「遺蹟めぐり」
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
阿諛
(
あゆ
)
追従
(
ついしょう
)
てんとして恥じず、ぶたれても、きゃんといい
尻尾
(
しっぽ
)
まいて閉口してみせて、家人を笑わせ、その精神の卑劣、醜怪、犬畜生とはよくもいった。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
母は官署とか学校や先生とかいうものに無上の権威を感じ、何か
阿諛
(
あゆ
)
の服従を以て迎えるという性質がありました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
阿諛
(
あゆ
)
するものもないだけに、自信がようやく本物になってくるということが予期しない大なる収穫でありました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何者にも、たとえ偉大なる民衆にも、
阿諛
(
あゆ
)
の言を
弄
(
ろう
)
してはならないから、吾人はあえて言うのである。すべてがある所には、崇高と相並んで
卑賤
(
ひせん
)
も存する。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あの美しい夫人は、彼女を囲む
阿諛
(
あゆ
)
や
追従
(
ついしょう
)
や甘言や、戯恋に倦き/\しているのかも知れない。実際彼女は純真な男性を、心から求めているかも知れない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
徳川氏の兇徳、人みな
厭
(
あ
)
き果て候よう天朝へ申上げ候者もこれ有るべく候えども、これは
阿諛
(
あゆ
)
と嫉妬とに出で候事に付き、深く御評議遊ばされずては、大事を
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「対話の精神」の最も忌み嫌ふ性癖は独善と
阿諛
(
あゆ
)
ではないかと思ふ。そして、「対話の精神」の極めて重要な一面は、「よき聴き手」であるといふことである。
未解決の問題:――新劇の決算――
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
しかしF君が現に一銭の
貯
(
たくわえ
)
もなくて、私をたよって来たとすると、前に私を讃めたのが、買被りでなくて、世辞ではあるまいか、
阿諛
(
あゆ
)
ではあるまいかと疑われる。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かの党派の罪悪が次第に厚顔になつてきて盲人さへそれを見分けることが出来るやうになつた時、彼等は自党に対する
阿諛
(
あゆ
)
追従者を
頻
(
しき
)
りに召集するの必要に迫られた。
少数と多数
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
阿諛
(
あゆ
)
と
諂佞
(
てんねい
)
に取巻かれ、人を見下してばかりきた貫兵衛は、自分の世帯になって、世の中に正面から
打
(
ぶ
)
つかった時、初めて、自分の才能、容貌、魅力——等に対する
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼の身辺が
忽
(
たちま
)
ち虚構と偽善と
阿諛
(
あゆ
)
で塗り固められ、彼を中心にして家臣のあいだに対立と暗闘の始まったのを見て、彼はようやくおのれの身分と境遇を
詛
(
のろ
)
うようになった。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人間は
竟
(
つい
)
に、執着し・狂い・求める対象がなくては生きて行けないのだろうか。やっぱり、自分も、世間が——喝采し、憎悪し、嫉視し、
阿諛
(
あゆ
)
する世間が、欲しいのだろうか。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
どう考えても、臆病な妥協と、利害関係のある周囲への
阿諛
(
あゆ
)
——彼女自身の言葉で云えば、あるべからざるもろもろの曖昧さに根を置いていることを感じずにはいられなくなった。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
絶えず他の人を相手に意識している偽善者が
阿諛
(
あゆ
)
的でないことは
稀
(
まれ
)
である。偽善が他の人を破滅させるのは、偽善そのものによってよりも、そのうちに含まれる阿諛によってである。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
いつも何かによって救いあげられ、高められる己だけしか感じなかったのであるが、これは仏恩というものなのか、それとも仏に対する私の
阿諛
(
あゆ
)
であるのか。後者の心がなかったとはいえない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
阿諛
(
あゆ
)
は、恐らく、かう云ふ時に、
最
(
もつとも
)
自然に生れて来るものであらう。読者は、今後、赤鼻の五位の態度に、
幇間
(
ほうかん
)
のやうな何物かを見出しても、それだけで
妄
(
みだり
)
にこの男の人格を、疑ふ可きではない。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三斎は、日頃、自分の前へ出ると、いやに
阿諛
(
あゆ
)
の色を見せたり、不安の挙動を示したりするような、人間ばかり見て来ているので、闇太郎のこの冷々とした物腰に、一層、心を惹かれるらしかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
人の好い主君は、
阿諛
(
あゆ
)
する旧臣下や芸人の
輩
(
やから
)
に取巻かれて、
徒
(
いたずら
)
に遊楽の日を送り迎えていた。またそれよりもわるいのは、いろいろの女性によって家庭の乱されたことである。禍の種はそこにあった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それは権勢に対する
阿諛
(
あゆ
)
を強いることだ
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
成功を博した役者はすぐに、自分の芝居と、
阿諛
(
あゆ
)
的な仕立屋たる自分の作者と、尺度に合わした自分の脚本を、もつようになるのだった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
これが家中の大多数で、潮あい次第で、時には
奸
(
かん
)
に
阿諛
(
あゆ
)
し、時には
正
(
せい
)
に
組
(
くみ
)
し、流れにまかせて
筏
(
いかだ
)
を
棹
(
さお
)
さすようにうまくその日その日を渡ってゆく。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠臣義士は
悉
(
ことごと
)
く遠退き、残ったは
阿諛
(
あゆ
)
の佞臣ばかり、金銭財宝もおおかた尽き、ろくに兵備とてなさそうである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
阿諛
(
あゆ
)
と
諂佞
(
てんねい
)
に取卷かれ、人を
見下
(
みくだ
)
してばかり來た貫兵衞は、自分の世帶になつて、世の中に正面から打つかつた時、初めて、自分の才能、
容貌
(
ようばう
)
、
魅力
(
みりよく
)
——等に對する
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
初め旧幕に
阿諛
(
あゆ
)
し、
恐多
(
おそれおほ
)
くも廃帝之説を唱へ、万古一統の
天日嗣
(
あまつひつぎ
)
を
危
(
あやう
)
うせんとす。
且
(
かつ
)
憂国之正士を
構陥讒戮
(
こうかんざんりく
)
し、此頃
外夷
(
ぐわいい
)
に内通し、
耶蘇
(
やそ
)
教を皇国に
蔓布
(
まんぷ
)
することを約す。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
蜀山という男は、微禄ながら幕府の禄を
食
(
は
)
む身分でありながら、一代の名政治家を蚊にたとえるとは言語道断である。あの堕落、
阿諛
(
あゆ
)
、迎合、無気力を極めた田沼の時代でさえ
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「希望館」の作者によって言われている強靭な意志というのは、何故にお経を読まされること、
阿諛
(
あゆ
)
を強いられる境遇に落ちつくことだけを内容とし現代の可能としているのであろう。
ヒューマニズムへの道:文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
これは、決して、
虚飾
(
きょしょく
)
や、
阿諛
(
あゆ
)
からではなくて、
如何
(
いか
)
なる場合にも他人に
一縷
(
いちる
)
の逃げ
路
(
みち
)
を与えて
寛
(
くつ
)
ろがせるだけの余裕を、氏の善良性が氏から
分泌
(
ぶんぴつ
)
させる自然の
滋味
(
じみ
)
に
外
(
ほか
)
ならないのです。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
はあ、第一は忠言あらば卑賤の者たりとも採用すべきこと、第二は親疎によって賞罰を軽重せず、
阿諛
(
あゆ
)
の者を大敵とすること、第三は両後見、互いに隔心なきこと、以上でございました。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
同じ
阿諛
(
あゆ
)
迎合
(
げいごう
)
を事としても、
杜周
(
としゅう
)
(最近この男は前任者
王卿
(
おうけい
)
を陥れてまんまと
御史大夫
(
ぎょしたいふ
)
となりおおせた)のような
奴
(
やつ
)
は自らそれと知っているに違いないがこのお人好しの丞相ときた日には
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
髯
(
ひげ
)
を
生
(
はや
)
し洋服を着てコケを
脅
(
おど
)
そうという田舎紳士風の野心さえ起さなければ、よしや身に一銭の
蓄
(
たくわえ
)
なく、友人と称する共謀者、先輩もしくは親分と称する
阿諛
(
あゆ
)
の目的物なぞ一切
皆無
(
かいむ
)
たりとも
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人みな
厭
(
あ
)
き果て候よう天朝へ申上げ候者もこれ有るべく候えども、これは
阿諛
(
あゆ
)
と嫉妬とに出で候事に付き、深く御評議遊ばされずては大事を誤るに至るべく、水戸、越前その外を察観仕り候処
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
阿諛
(
あゆ
)
、
追従
(
ついしょう
)
、見るにしのびざるものがあったのである。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼らの
阿諛
(
あゆ
)
はハスレルに有害であって、彼をあまりに
自惚
(
うぬぼれ
)
さしていた。彼は頭に浮かぶ楽想を、少しも
検
(
しら
)
べないでことごとく取り上げた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
欺瞞
(
ぎまん
)
の
唖
(
おし
)
、
阿諛
(
あゆ
)
の声、
吏民
(
りみん
)
ともに廃頽にまかせ、
自壊
(
じかい
)
をいそぎ、
滔々
(
とうとう
)
行くところも知らぬありさま……
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あらゆるお世辭、——齒の浮くやうな
阿諛
(
あゆ
)
を、法外な金で買つて、貫兵衞は
溜飮
(
りういん
)
を下げました。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
酒と女と遊楽と
阿諛
(
あゆ
)
と、「ああよろしい」「ああそうせい」といわれるままに従って、自分の意思など通そうとはせず、また通すことの出来なかった生活——そういう生活の連続であった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
我らに
阿諛
(
あゆ
)
なし、
猥雑
(
わいざつ
)
の世を
遙
(
はるか
)
に見下して、飢と貧困の楼高く我らは
謳
(
うた
)
う。
溜息の部屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
今日もし私たちが
阿諛
(
あゆ
)
的な賞讃など得られるとしたら、それこそ! それこそ! 謂わば、もし
賞
(
ほ
)
められたら、それこそ目玉をくりむいて、賞めた人と賞められた点とを見きわめなければならない。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
阿諛
(
あゆ
)
に
堕
(
だ
)
するに甘んじないかぎり、あれはあれでどうしようもない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
阿諛
(
あゆ
)
的な風習、共和党員のない共和国。巡遊の王者の前に歓喜してる、社会主義の新聞。肩書や金モールや勲章の前に平伏してる奴僕的な魂。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
金、虚名、貪慾、無節操、乱倫、
阿諛
(
あゆ
)
、
奸争
(
かんそう
)
、
佞策
(
ねいさく
)
、何でも、利にしたがって、嗅覚の
漁
(
あさ
)
りに
奔
(
はし
)
り、ばかばかしい人間の理想などというものを、極端にまで、
軽蔑
(
けいべつ
)
し合った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
阿
漢検準1級
部首:⾩
8画
諛
漢検1級
部首:⾔
15画
“阿諛”で始まる語句
阿諛追従
阿諛者
阿諛便佞
阿諛的
阿諛佞奸
阿諛佞弁
阿諛苟合
阿諛諂佞
阿諛謟佞
阿諛軽薄