トップ
>
迂濶
>
うくわつ
ふりがな文庫
“
迂濶
(
うくわつ
)” の例文
爭
(
あらそ
)
ひ
將棋
(
せうき
)
に
敗
(
やぶ
)
れて
血
(
ち
)
を
吐
(
は
)
いて死ぬなどは一
種
(
しゆ
)
の
悲壯
(
ひそう
)
美を
感
(
かん
)
じさせるが、
迂濶
(
うくわつ
)
に死ぬ事も出來ないであらう
現
(
げん
)
代の
專
(
せん
)
門
棋士
(
きし
)
は平
凡
(
ぼん
)
に
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
(勿論死に対する情熱は例外である。)
且
(
か
)
つ又恋はさう云ふもののうちでも、特に死よりも強いかどうか、
迂濶
(
うくわつ
)
に断言は出来ないらしい。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「文公、六助、久太——又
惡戯
(
わるさ
)
か。いくら貰つたか知らないが、止せ/\、そいつは人殺しの片棒だ。
迂濶
(
うくわつ
)
に
擔
(
かつ
)
ぐと命がねえぞ」
銭形平次捕物控:056 地獄から来た男
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お
袋
(
ふくろ
)
はお
品
(
しな
)
をまだ
子供
(
こども
)
のやうに
思
(
おも
)
つて
迂濶
(
うくわつ
)
にそれを
心付
(
こゝろづ
)
かなかつた。
本當
(
ほんたう
)
にさうだと
思
(
おも
)
つた
時
(
とき
)
はお
品
(
しな
)
は
間
(
ま
)
もなく
肩
(
かた
)
で
息
(
いき
)
するやうに
成
(
な
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
委
(
くは
)
しく聞置ざりし事然れども彼方にても今は何と
改名
(
かいめい
)
せし位の事は話しも有べき
筈
(
はず
)
なるに夫等に氣の付ぬとは餘り
迂濶
(
うくわつ
)
なりし
那
(
あ
)
れ程までに馬喰町を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
終戦後、トント原稿市場に遠ざかつてゐた私はそれほど
迂濶
(
うくわつ
)
だつた。もうハンコ屋の真似など続けてはゐられない。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
迂濶
(
うくわつ
)
に
佇
(
たたず
)
んでゐたりして、不審がられるのを恐れ、わざと、もちろん軒燈もないから見えるはずもないが、隣家の表札に眼を近づけたりするのであつた。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
『だつて、校長先生、人の一生の名誉に
関
(
かゝ
)
はるやうなことを、
左様
(
さう
)
迂濶
(
うくわつ
)
には
喋舌
(
しやべ
)
れないぢや有ませんか。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
これ天則か。天則果して
斯
(
かく
)
の如く偏曲なる可きか。請ふ、
行
(
ゆ
)
いて生活の敗者に問へ、
新堀
(
しんぼり
)
あたりの九尺二間には、
迂濶
(
うくわつ
)
なる哲学者に勝れる説明を為すもの多かるべし。
最後の勝利者は誰ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
さればとて先生はいにしへの人の立てし抽象理想論の
迂濶
(
うくわつ
)
なる跡を追はむとにもあらず、またこの世紀の生理、心理の新果實を容れざるにもあらず。その言にいへらく。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼
(
かれ
)
は
直截
(
ちよくせつ
)
に
生活
(
せいくわつ
)
の
葛藤
(
かつとう
)
を
切
(
き
)
り
拂
(
はら
)
ふ
積
(
つも
)
りで、
却
(
かへ
)
つて
迂濶
(
うくわつ
)
に
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へ
迷
(
まよ
)
ひ
込
(
こ
)
んだ
愚物
(
ぐぶつ
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
するとこの私の眼を裏切る音が深祕な感情を持つて聽こえはじめる。しかし私は全く
迂濶
(
うくわつ
)
だつたのだ。叢のなかには地面の僅な傾斜に沿つて、杉林の奧の方から一本の樋が通つてゐる。
闇への書
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
初め篠田如き者を
迂濶
(
うくわつ
)
に入会を許したのが君の失策である、
如何
(
どう
)
だ、
彼
(
あ
)
の新聞の
遣
(
や
)
り
口
(
くち
)
は、政府だの資産あるものだのと見ると、事の善悪に
拘
(
かゝは
)
らず
罵詈讒謗
(
ばりざんばう
)
の毒筆を
弄
(
もてあそ
)
ぶのだ、
彼奴
(
きやつ
)
が
帰朝
(
かへ
)
つて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
時には
迂濶
(
うくわつ
)
らしくも見えた
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「その通りだよ親分、箱から拔かれたのを、翌る日の朝まで氣が付かなかつたのは
迂濶
(
うくわつ
)
さ。裸にして置けば、その晩のうちに氣が付いたかも知れないのに」
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香爐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕はバラツクの壁にかけた、額縁のない一枚のコンテ画を見ると、
迂濶
(
うくわつ
)
に常談も言はれないのを感じた。
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
家庭
(
かてい
)
で
暖
(
あたゝ
)
かに
育
(
そだ
)
つた
上
(
うへ
)
に、
同級
(
どうきふ
)
の
學生
(
がくせい
)
位
(
ぐらゐ
)
より
外
(
ほか
)
に
交際
(
かうさい
)
のない
男
(
をとこ
)
だから、
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
事
(
こと
)
には
寧
(
むし
)
ろ
迂濶
(
うくわつ
)
と
云
(
い
)
つても
可
(
い
)
いが、
其
(
その
)
迂濶
(
うくわつ
)
な
所
(
ところ
)
に
何處
(
どこ
)
か
鷹揚
(
おうやう
)
な
趣
(
おもむき
)
を
具
(
そな
)
へて
實社會
(
じつしやくわい
)
へ
顏
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
したのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
折衷派だに稀なる今の我小説界にて、人間派を求めむは、文學に忠誠なる判者の事にあらずとやうに、時の
務
(
つとめ
)
をおもひて、
迂濶
(
うくわつ
)
なる批評家をおどろかさむとしたる
蹟
(
あと
)
、歴々として見ゆるならずや。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
訴
(
うつた
)
へける是に
依
(
よつ
)
て
東
(
ひがし
)
町奉行鈴木
飛騨守殿
(
ひだのかみどの
)
へも
御相談
(
ごさうだん
)
となり是より
御城代
(
ごじやうだい
)
堀田相模守殿へ
御屆
(
おんとゞけ
)
に相成ば御城代は
玉造口
(
たまつくりぐち
)
の
御加番
(
ごかばん
)
植村土佐守殿京橋口の御加番戸田
大隅守殿
(
おほすみのかみどの
)
へも御相談となりしが先年
松平
(
まつだひら
)
長七郎殿の
例
(
れい
)
もあり
迂濶
(
うくわつ
)
には
取計
(
とりはから
)
ひ難し先々町奉行所へ
呼寄
(
よびよせ
)
篤
(
とく
)
と
相調
(
あひしら
)
べ申べしと
相談
(
さうだん
)
一
決
(
けつ
)
し御月番なれば西町奉行松平
日向守
(
ひうがのかみ
)
殿は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「總髮は江戸に何十人あるか解らねえ、
迂濶
(
うくわつ
)
にあの易者を縛つて、物笑ひになるのもイヤだ」
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
かう云ふと、何も知らずに、炎天へ裸で出てゐる劉は、甚、
迂濶
(
うくわつ
)
なやうに思はれるが、普通の人間が、学校の教育などをうけるのも、実は大抵、これと同じやうな事をしてゐるのである。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼
(
かれ
)
は
考
(
かんが
)
へた。けれども
考
(
かんが
)
へる
方向
(
はうかう
)
も、
考
(
かんが
)
へる
問題
(
もんだい
)
の
實質
(
じつしつ
)
も、
殆
(
ほと
)
んど
捕
(
つら
)
まえ
樣
(
やう
)
のない
空漠
(
くうばく
)
なものであつた。
彼
(
かれ
)
は
考
(
かんが
)
へながら、
自分
(
じぶん
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
迂濶
(
うくわつ
)
な
眞似
(
まね
)
をしてゐるのではなからうかと
疑
(
うたが
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのまゝ
懇意
(
こんい
)
づくで借りたといふ家は、少し古くはなつて居りますが、戸締りなどはなか/\に嚴重で、外から
迂濶
(
うくわつ
)
に入れる隙もなく、それに間數も六つ七つ、主人の清左衞門と
銭形平次捕物控:163 閉された庭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
藤三郎の顏には、
皮肉
(
ひにく
)
な薄笑ひが浮びました。土藏の
海鼠壁
(
なまこかべ
)
は、あの通り見事に切り拔かれて居るのに、泥棒が鍵を盜んで入りはしないかと言ふ問が、あまりに
迂濶
(
うくわつ
)
だと思つたのでせう。
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
迂
漢検準1級
部首:⾡
7画
濶
漢検1級
部首:⽔
17画
“迂濶”で始まる語句
迂濶者
迂濶千万
迂濶々々
迂濶〻〻