讃美さんび)” の例文
新しい妻を讃美さんびしながら、日本中で、一番得意な人間として、後から後からと続いて来る客に、平素いつもに似ない愛嬌あいきょうを振りいていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ひろい正義愛、執拗しつような真実の探求、純粋な生活の讃美さんび、ことにきびしいストイシスム、高邁こうまいな孤独な魂の悲痛な表情がそこにある。
博物誌あとがき (新字新仮名) / 岸田国士(著)
歌も詩も源氏の君を讃美さんびしたものが多かった。源氏自身もよい気持ちになって、「文王の子武王の弟」と史記の周公伝の一節を口にした。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
誰か智的生活の所産なる知識と道徳とを讃美さんびしないものがあろう。それは真理に対する人類のむことなき精進の一路を示唆する現象だ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そうして美は実用から遊離したものなる故に讃美さんびされた。だが果して今日のかかる美学は美を真実に見つめたものであろうか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
中国の書物には、秋海棠しゅうかいどうを一に八月春と名づけ、秋色中しゅうしょくちゅうの第一であるといい、花は嬌冶柔媚きょうやじゅうびで真に美人がよそおいにむに同じと讃美さんびしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
平次には別に褒め言葉もありませんが、平次に取つて、その優しい眼が、雄辯に手柄を讃美さんびして居るので充分だつたでせう。
強き者への讃美さんびが、実に純粋で強烈なのだ。初め李陵のところへ来て騎射きしゃを教えてくれという。騎射といっても騎のほうは陵に劣らぬほどうまい。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そこで日本には昔からこの自然の景色を諷詠ふうえいし、自然と共にある人間を讃美さんびした文学がたくさんあるように思います。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
無尽蔵むじんぞうともいうべき詩句に、彼女への讃美さんびの情をたくしては、それを、どこかしら不自然でもあれば真剣しんけんでもある感激かんげきをもって、彼女に朗読して聞かせる。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ともだちは、らんについて、無関心むかんしんのもののごとくただ故郷こきょうやまうつくしさを讃美さんびして、きかせたのであります。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、サア・オツコツク以前の西洋人が、日本の女を讃美さんびしたのは、客観的に日本の女の社会的地位や何かを観察した上讃美したのかどうか、疑問である。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何よりもず情緒を重んじ、恋愛を讃美さんびし、そして形式上には、古典詩学の窮屈な拍節本位に反対して、より自由でメロディアスな、内容本位のスイートな音律を創見した。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
此の時に当たり往々にして知識階級のささやくを聞く、此の〔暴〕力の前にいかに吾々の無力なることよと、だが此の無力感の中には、暗に暴力讃美さんびの危険なる心理が潜んでいる
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
現存秩序での特権階級やそれに満足している者は革命を排撃はいげきするし、不満な者や被抑圧階級はそれを讃美さんびするのが常である。革命は人間の社会に必然不可避だという説もある。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
だれもが心から讃美さんびしているんだよ。あれには貧乏なんか我慢できっこないんだ。贅沢ぜいたくをつくして育ったんだよ。ひとから相手にもされないでいるなんて、とてもたまらないだろう。
(新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
その調しらべがすむと、たちまくづるゝごと拍手はくしゆのひゞき、一だん貴女きぢよ神士しんしははやピアノだいそばはしつて、いましづかに其處そこくだらんとする春枝夫人はるえふじん取卷とりまいて、あらゆる讃美さんびことばをもつて
或る一人の男などはたまたま廊下で私にい私を呼び留めて「僕あ身分をかくして居るんですが。」などと思わせぶりな前提で麻川氏を誇張的に讃美さんびし自分も麻川氏の客であるからには
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かういふふうに、天皇てんのう讃美さんびしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
講師が宮の御遁世とんせい讃美さんびして、この世におけるすぐれた栄華をなお盛りの日にお捨てになり、永久の縁を仏にお結びになったということを
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
が、先刻は夫人に対する讃美さんびあこがれの心で、胸を躍らしながら、が、今は夫人に対する反感と憤怒ふんぬとで、心を狂わせながら。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もしさかしい者が美を産み得るなら、無学な者はなお産み得るのだと。誰か無学たるそのことを讃美さんびすることができよう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ホイットマンが「アダムの子等」に於て、性慾を歌い、大自然の雄々しい裸かな姿を髣髴させるような瞬間を讃美さんびしたことに何んの不思議があろう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夜の情緒じょうちょ、夜の空気、夜の感傷、そして夢のような夜の讃美さんびをショパンはこの名において二十曲も書いている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
僕はかう考へた時にひそかに僕自身の幸運を讃美さんびしないわけにはかなかつた。日本の文壇広しといへども、僕ほど艶福えんぷくに富んだ作家は或は一人ひとりもゐないかも知れない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
故意に神聖冒涜ぼうとくの思想を書き、基督教が異端視する官能の快楽を追い、悪魔視される肉体の讃美さんびをして、すべての基督教道徳に反抗した為、彼等の標語「芸術のための芸術」は
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
その翌日よくじつから、かれはまたやまへてつだいにかけました。そして谷川たにがわながれへくれば、いつにわらずよかったし、はやしでなく小鳥ことりこえけば、無条件むじょうけん自然しぜん讃美さんびされるのでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日は、どうやら、わしは、あの青年に向って、文字の霊の威力いりょく讃美さんびしはせなんだか? いまいましいことだ、と彼は舌打をした。わしまでが文字の霊にたぶらかされておるわ。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
春枝夫人はるえふじん笑顏えがほ天女てんにようるはしきよりもうるはしく、あほ御空みそらにはくもあゆみをとゞめ、なみとり吾等われら讃美さんびするかとうたがはるゝ。この快絶くわいぜつときたちま舷門げんもんのほとりに尋常たゞならぬ警戒けいかいこゑきこえた。
わたしはこの平和な場所にあらゆる讃美さんびの言葉をおしまない。
そういかけて、青年は口をつぐんでしまった。が、口の中では、美奈子のつつましさや美しさに対する讃美さんびの言葉を、つぶしたのに違いなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そうしてその運命に備えられる巨大な意義を讃美さんびしようとするのである。天才を讃える者がしばしば見失った一つの真理を呼び覚まそうとするのである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
僕たちは寄ってたかっておまえを讃美さんびして夜をかすんだよ。もっともこのごろは、あまり夜更かしをすると、なおのこと腹がすくんで、少し控え気味にはしているがね。
ドモ又の死 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
こうした大貴族の家に生まれて、栄華に戯れてもいるはずの人が蛍雪けいせつの苦を積んで学問を志すということをいろいろのたとえを借りて讃美さんびした作は句ごとにおもしろかった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ある伝記者はリストの豊かなる愛情を讃美さんびして、それは全く比類のないものであったと言っている。彼は接する者誰にでも、満腔まんこうの親しさと愛とを注ぎかけずにはおかなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
爾来じらい二十年をけみした今日、このリヴィングストンの崇拝者は或基督キリスト教会の機関雑誌に不相変あいかわらずリヴィングストンを讃美さんびしている。のみならず彼の文章はこう言う一行に始まっている。
主筆 すると恋愛の讃美さんびですね。それはいよいよ結構です。厨川くりやがわ博士はかせの「近代恋愛論」以来、一般に青年男女の心は恋愛至上主義に傾いていますから。……勿論近代的恋愛でしょうね?
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
春秋の優劣を論じる人は昔から秋をよいとするほうの数が多いのであったが、六条院の春の庭のながめに説を変えた人々はまたこのごろでは秋の讃美さんび者になっていた、世の中というもののように。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おまけに結末は女主人公の幸福を讃美さんびしているのです。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)