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蒼白
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そうはく
ふりがな文庫
“
蒼白
(
そうはく
)” の例文
つるつる坊主の
蒼白
(
そうはく
)
の顔に、小さな
縞
(
しま
)
の絹の着物を着せられて、ぐったり
横
(
よこた
)
わっている姿は文楽か何かの陰惨な人形のようであった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
からだは相当
肥
(
ふと
)
っていたが、
蒼白
(
そうはく
)
な顔色にちっとも生気がなくて、灰色のひとみの底になんとも言えない暗い影があるような気がした。
B教授の死
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
衝立の後ろから半身を現わして、二度目にこう言ったのは関寺小町ではなくて、顔色の
蒼白
(
そうはく
)
な、
月代
(
さかやき
)
の長い机竜之助でありました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ある時を期して、考えに沈める一人の人の
蒼白
(
そうはく
)
なる顔をとおし、その内部をのぞき、その魂をのぞき、その暗黒のうちをうかがい見よ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は微力を測らずして一躍男子の圧抑から
脱
(
のが
)
れようとする
痩
(
やせ
)
我慢を恥じねばならなかった。私は
瞭然
(
はっきり
)
と女性の
蒼白
(
そうはく
)
な裸体を見ることが出来た。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
そう決心して彼との対面の場合のことを想像すると、血が顔からすーと引いて行くのを感じ、太田は
蒼白
(
そうはく
)
な面持で興奮した。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
僕たちが研究室へ飛びこむと同時に、廊下のドアから、顔面
蒼白
(
そうはく
)
の鰐博士が
駈
(
か
)
けこんで来、あとから黒い影が二つ、風のやうに押しこんで来た。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
悪漢佐伯も、この必死の抗議には参ったらしく、急に力が抜けた様子で、だらりと両腕を下げ、
蒼白
(
そうはく
)
の顔に苦笑を浮かべ
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
親子は次第に
激昂
(
げっこう
)
して
蒼白
(
そうはく
)
な顔色になって行ったが、好い
塩梅
(
あんばい
)
に兄やウロンスキーの仲裁で、座が白けない程度にぷすぷす
燻
(
くすぶ
)
っただけで終った。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その
蒼白
(
そうはく
)
さ、なんともたとえようのない色合いのほのめきは、ちょうど、一面に散り敷いた色のない雲のようであった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一つのたかぶった国民全体を、十字架のもとに、自らの足もとに屈せしめるだけの力を、精神の白熱的な深みから取って来る、あの
蒼白
(
そうはく
)
な非力を。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
成親などは、顔面
蒼白
(
そうはく
)
になって立ち上り、浄憲につめ寄ろうとした拍子に、着物の袖がふれて前にあった
瓶子
(
へいし
)
が倒れた。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
ふと
踵
(
くびす
)
を
返
(
かえ
)
して、二
足
(
あし
)
三
足
(
あし
)
、
歩
(
ある
)
きかかった
時
(
とき
)
だった。
隅
(
すみ
)
の
障子
(
しょうじ
)
を
静
(
しず
)
かに
開
(
あ
)
けて、
庭
(
にわ
)
に
降
(
お
)
り
立
(
た
)
った
春信
(
はるのぶ
)
は、
蒼白
(
そうはく
)
の
顔
(
かお
)
を、
振袖姿
(
ふりそですがた
)
の
松江
(
しょうこう
)
の
方
(
ほう
)
へ
向
(
む
)
けた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
夫人の顔が、
遉
(
さすが
)
に
蒼白
(
そうはく
)
に転ずるのを
尻目
(
しりめ
)
にかけながら、信一郎は、素早く部屋を出ようとした。が、それを見ると、夫人は
屹
(
きっ
)
となって呼び止めた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
根来勇助は
蒼白
(
そうはく
)
になった、初めは竜太郎の言葉の意味がのみこめぬらしく、白痴のように唇をもぐもぐさせていたが、やがて立上って、吃りながら
溜息の部屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、ふっとその
蒼白
(
そうはく
)
な
冴
(
さ
)
えた顔に、動揺とまで行かないにせよ、ある気弱なものが滑ったのをぼくは見逃さなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
比丘尼
(
びくに
)
小町うんぬんの
妖々
(
ようよう
)
たるなぞのみでしたから、名人の秀麗な面がしだいしだいに
蒼白
(
そうはく
)
の度を加え、烱々たるまなざしが静かに徐々に閉じられて
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
老婦人は紙のように
蒼白
(
そうはく
)
な顔色をしていました。両手をワナワナと
慄
(
ふる
)
わせながら、兄の胸にとびついて来ました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蒼白
(
そうはく
)
なやせたその顔には、妻を
歯牙
(
しが
)
にもかけないごうまんさと、人間的な冷酷さがみなぎっているように見えた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
上気した頬のいろが、見る間にスーッと引いて、たちまち
蒼白
(
そうはく
)
に澄んだお藤は、無我の境に入ってゆくようです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
新島君は当時より既によほど健康を損じておられたものと見えて、顔色
蒼白
(
そうはく
)
体躯
(
たいく
)
羸痩
(
るいそう
)
という風が見えた。
屡々
(
しばしば
)
咳
(
せき
)
をしておられたのが今なお耳に残っている。
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その暴風の最も強烈な最中に、にわかの転調が、音の反射が、空の暗黒をうがって、
蒼白
(
そうはく
)
な海の上に、光の延板のように落ちてくる。それが終わりである。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
歳三十に近く
蒼白
(
そうはく
)
なる
美貌
(
びぼう
)
。
華
(
はな
)
やかならざれどもすずしきみどり色の、たとえば陰地に
生
(
お
)
いたる草の葉のごとくなるに装いたり。妙念に
縋
(
すが
)
り鐘楼に眼を定め息を
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
そう二つのものの間に、経盛と木工助は、
茫然
(
ぼうぜん
)
としていたが、召使たちの
跫音
(
あしおと
)
が、ここへ集まって来るのを知ると、泰子は、
蒼白
(
そうはく
)
な顔を、地面からきッと上げて
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
むしろ
蒼白
(
そうはく
)
な、何かスベスベしたものが、一寸一寸と、見物の眼に暴露されてきたではないか。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
頽
(
くず
)
るる潮の黒髪を洗うたびに、顔の色が、しだいに
蒼白
(
そうはく
)
にあせて、いまかえって雲を破った朝日の光に、濡蓑は、
颯
(
さっ
)
と
朱鷺色
(
ときいろ
)
に薄く燃えながら——
昨日
(
きのう
)
坊さんを払ったように
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれどいよいよ読み終わった時、その顔は
蒼白
(
そうはく
)
に変わり、
痙攣
(
けいれん
)
のためにゆがんでさえも見えた。そして唇には重苦しい、いらいらした、意地わるげな微笑が蛇のようにうねっていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それから財布のなかを調べて
懐
(
ふところ
)
に入れ、チリ紙とタオルを枕もとに置いた。そういう動作をしているお前の妹の顔は、お前が笑うような形容詞を使うことになるが、紙のように
蒼白
(
そうはく
)
だった。
母たち
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
文麻呂 (ぎょっとしたようになよたけの
蒼白
(
そうはく
)
な顔をのぞきこむ……)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
頬
(
ほほ
)
のこけた
蒼白
(
そうはく
)
の顔の上部、両の
鬢
(
びん
)
と額とは
大火傷
(
おおやけど
)
のあとのごとくあか黒く光って、ひっつれている。そして
眉間
(
みけん
)
と、左右の米かみのところに焼け
火箸
(
ひばし
)
で突いたほどの
孔
(
あな
)
のあとが残っているのである。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
彼は黙って秀才の
蒼白
(
そうはく
)
な顔を見つめていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その顔は
蒼白
(
そうはく
)
で、眼は血走っていた。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
本来
蒼白
(
そうはく
)
そのものの
面
(
おもて
)
が、いっそう蒼白に
冴
(
さ
)
えているようなものだが、思いなしか、その白い冴えた面に、このごろは光沢というほどでもないが
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして
蒼白
(
そうはく
)
な
昏迷
(
こんめい
)
した
凄惨
(
せいさん
)
な様子で、目には無限の喜びを浮かべ、震える両腕を開いて、
椅子
(
いす
)
の上に身を起こした。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
突然時平の声の調子が変ったので、国経が見ると、さっきまで赤味を帯びていた顔の色が
蒼白
(
そうはく
)
になり、唇の端を神経質にピクピクさせているのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし息もつかず、眼は閉じ、額や
顳顬
(
こめかみ
)
の骨には、
蒼白
(
そうはく
)
な皮膚が張りつめていた。あたかも死人のようだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
丘田医師には違いないが、日頃の彼の温良なる風貌はなく、髪は逆立ち、顔面は
蒼白
(
そうはく
)
となり、眼は血走り、ヌッとつき出した細い腕はワナワナと
慄
(
ふる
)
えていた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「何の、てんごうを云うてなるものか、人妻に云い寄るからは、命を投げ出しての恋じゃ」と、いうかと思うと、藤十郎の顔も、さっと
蒼白
(
そうはく
)
に変じてしまった。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そのやや
蒼白
(
そうはく
)
な面に沈吟の色を見せながら、雲霧の中に小さな玉を探ろうとするように、じっとくちびるを結んでいましたが、と、——ちょうどそのときでありました。
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
蒼白
(
そうはく
)
の額に、深い縦じわをきざんで、暗く沈んだ声なのは、よほどの重大事を議しているらしい。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いやに緊張して口をひきしめいつまでも
呆
(
あき
)
れるほど永く踊りつづけている者もあり、また、さいぜんから
襖
(
ふすま
)
によりかかって、顔面
蒼白
(
そうはく
)
、
眼
(
め
)
を血走らせて一座を無言で
睨
(
にら
)
み
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どんな障害も起こらないことを奈尾は知っている、
理由
(
わけ
)
を証明することは出来ないが、決して障害の起こらないことが感じられる、……
蒼白
(
そうはく
)
めいた透きとおるような奈尾の顔に
合歓木の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
このすばらしい事象は、眠りできよめられたかれのたましいを、
敬虔
(
けいけん
)
な気持でいっぱいにする。まだ天と地と海は、不気味にガラスめいた薄明の
蒼白
(
そうはく
)
さのなかに横たわっている。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
新七はふたたび
蒼白
(
そうはく
)
な面になった。余りにもこっちの内情に彼が通じているからだった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
呼吸
(
いき
)
の下でいって、いい続けて、時々
歯噛
(
はがみ
)
をしていた少年は、耳を
澄
(
すま
)
して、聞き果てると、しばらくうっとりして、早や死の色の宿ったる
蒼白
(
そうはく
)
な
面
(
おもて
)
を
和
(
やわら
)
げながら、
手真似
(
てまね
)
をすること三度ばかり。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
目はほとんど真っ黒で、プライドにみちた輝きを放っていたが、またそれと同時に、どうかすると瞬間的に、並みはずれて善良な表情になるのであった。色は青白かったが、病的な
蒼白
(
そうはく
)
さではない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その
矮
(
ひく
)
い、
蒼白
(
そうはく
)
なからだを
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
顔が
蒼白
(
そうはく
)
だった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
涙はまぶたにあふれて、
蒼白
(
そうはく
)
のほほに伝わって流れた。彼は空の深みに目を定めたまま、自分自らにささやくがように声低くほとんどどもりながら言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
クリストフはテーブルをつきのけ
椅子
(
いす
)
をつき倒しながら猛然と立ち上がった。髪の毛は逆立っていた。彼は歯をかち合わせ
蒼白
(
そうはく
)
になって一瞬間たたずんだ……。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“蒼白(蒼白色)”の解説
蒼白色(そうはく-しょく)は色の一つ。青白(あおじろ)とも。JIS慣用色名には含まれない。同名で2系統の色がある。
(出典:Wikipedia)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
“蒼白”で始まる語句
蒼白化
蒼白顏
蒼白痩削