なは)” の例文
旧字:
しかるに絶壁ぜつへきの所は架を作るものもなければ鮏もよくあつまるゆゑ、かの男こゝにたなをつりおろし、一すぢのなはを命のつなとして鮏をとりけり。
こはいかにするぞと叫びぬれども、かれ七一かつて聞かず顔にもてなしてなはをもて我が七二あぎとつらぬき、芦に船をつなぎ、我をかごに押入れて君が門に進み入る。
わつちアおめえにりんびやうおこつてもぢきなほ禁厭まじなひをしへてらう、なはを持つてな、ぢきなほらア。主人「はてな…へえゝ。弥「痳病りんびやう尋常じんじやう)になわにかゝれとふのだ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
仮に僕が何かの事で監獄かんごくにはいる様な事があつたら、その時にはペンと紙と本は与へて貰ひたいものだ。僕がなはをなつてみたところではじまらない話ではないか。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二人は二人きりでは心細かつたので、途々みちみち働いてゐる百姓達をさそつていつた。しまひには全部で十人位になつた。みんなは手に手に鎌やなは天秤棒てんびんぼうなどを持つて来た。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
嘉ッコのお母さんは、大きなけらを着て、なはを肩にかけて、そのあとから出て来ました。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
夜更よふけから、しばらく正躰しやうたいうしなつたが、ときらずわれかへると、たちま第三番目だいさんばんめつくりはじめた、……ときほこらまへ鳥居とりゐたふれて、ちたるなはは、ほろ/\とれてあともなくる。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
難有ありがたいな。ではね、包丁はうちやうを取つて来てね、此のなはつて御呉おくれ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
青いパツチになはの帯
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
幾尋いくひろともなき深淵ふかきふちの上にこのたなをつりておき一条ひとすぢなはいのちをつなぎとめてそのわざをなす事、おそろしともおもはざるは此事になれたるゆゑなるべし。
なんかと突倒つきたふして、なはから外へ飛出とびだ巡査じゆんさつままれるくらゐの事がございますが、西京さいきやうは誠にやさしい
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
首からなはを放すのでしたが、主人の矢が、みごとに犬の急所をつらぬいても、ほかのしもべどものやうに、「お見事なうでまへでございます。」とほめたりしませんでした。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
落栗おちぐりの座をさだむるやくぼたまり」(初めて伊那に来て)「鬼灯ほほづきの色にゆるむや畑のなは」等
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのもとに波打つ幾線の鉄のなは
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
とまり山をするもの、このふぢづるなければ水をくむ事ならず、よしやなはを用ふとも此藤のつよきにはおよぶまじ。このゆゑに泊り山するものら、此つるたからのごとくたふとぶとぞ。
積る朽葉くちばにつもる雪、かきのけ/\さがせども、(中略)ああ天我をほろぼすかとなみだと雪にそでをぬらし、是非ぜひなく/\も帰る道筋、なはからげの小桶こをけひとつ、何ならんと取上げ見れば
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
軒下のきした縄張なはばりがいたしてございますうち拝観人はいくわんにんみなたつはいしますので、京都きやうと東京とうきやうちがつて人気にんきは誠におだやかでございまして、巡査じゆんさのいふ事をく守り、中々なか/\なはの外へは出ません。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なはのかかつた四斗樽しとだるを、買つて帰ることになつて、松さんは担ぐために縄をつかんだが、芝居をするときのやうに、少しも力を入れないで、力む真似まねばかりしてゐて、担がうとしなかつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
さて下に三把をならべ、中には二把、うへには一把、これをなはにて強くくゝふもとのぞん蹉跌すべらかすに、こほりたる雪の上なれば幾百丈の高も一瞬まばたきにふもとにいたるをそりにのせてひきかへる。