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瞳
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め
ふりがな文庫
“
瞳
(
め
)” の例文
声も立て得ないまま
瞳
(
め
)
を大きく見開いているその猫のタマラナイ姿を一生懸命の思いで、
生汗
(
なまあせ
)
をかきかき正視しているうちに、私は
冗談に殺す
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
引釣
(
ひきつ
)
る眉、ギラギラと死の苦痛を映す
瞳
(
め
)
、血みどろの頬も唇も痙撃して、綺麗な歯並が、締木にかけたようにギリギリと鳴ります。
芳年写生帖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黒吉は、すれすれに近づけられた、葉子の
瞳
(
め
)
の中に、自分の醜い顔が写っているのを見つけて、無意識にハッと眼を外らした。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
龍造寺主計はそういって、
濶達
(
かったつ
)
に
哄笑
(
こうしょう
)
した。龍造寺主計の熱心な顔、黒味のふかい正直な
瞳
(
め
)
が、お高の胸を苦痛にあえがせた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ぜいたくなようすをしていました三
人
(
にん
)
の
令嬢
(
れいじょう
)
は、
店
(
みせ
)
さきに
立
(
た
)
って、そこにあるいろいろな
花
(
はな
)
の
上
(
うえ
)
に、
清
(
きよ
)
らかなりこうそうな
瞳
(
め
)
を
移
(
うつ
)
していました。
花と人の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
この句の詩境には、宇宙の恒久と不変に関して、或る感覚的な
瞳
(
め
)
を持つところの、一のメタフィジカルな凝視がある。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
と云ったが、抜き身を地へ置くと、その手を頤の下へ
支
(
か
)
い、眉根へ寄せたがために、藪睨みのようになって見える
瞳
(
め
)
で、つくづくとお浦の顔を見詰め
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いまや夜が、それを平和な
睡眠
(
ねむり
)
のなかへ
裹
(
つゝ
)
まうとするとき、そのどれもが、
円
(
つぶ
)
ら
瞳
(
め
)
に肖た灯を点けたまんま…
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
そもどのような風雅の
主
(
ある
)
じを持っているのか? と、何ごころなく眺めやった露月の
瞳
(
め
)
に、はじめて例の若衆ぶりが、突如として花のように映じたのであります。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
十
(
とお
)
ばかりの
従姉
(
いとこ
)
と、私はだんまりで、二人ともこぼれない涙に
瞳
(
め
)
が光っていた。おなじようにムンヅリしていたが、子供心にも思うことは違っていたのかもしれない。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
加津佐
(
かづさ
)
あたりと
思
(
おぼ
)
しい煙も、見えます……
瞳
(
め
)
を転ずると、
小浜
(
おばま
)
の港が、
指呼
(
しこ
)
のうちに入ります。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
紫玉の
睜
(
みは
)
った
瞳
(
め
)
には、
確
(
たしか
)
に天際の
僻辺
(
へきへん
)
に、美女の
掌
(
て
)
に似た、白山は、白く清く映ったのである。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しばし
瞳
(
め
)
を上げて記憶を辿るやうな樣子をしてゐたが別の曲を奏で始めた、そして慇懃な魅惑を含んだ姿態で、ヘリックの『ジューリアに贈る小夜曲』を歌ひ出たのであつた。
クリスマス・イーヴ
(旧字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「それで今、その
女
(
ひと
)
は何うしているの?」お宮の
瞳
(
め
)
が冴えて、
両頬
(
ほお
)
に少し熱を
潮
(
さ
)
して来た。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
おづおづとその
瞳
(
め
)
をみひらくわたしの死んだ騾馬、わたしを乘せた騾馬——記憶。世界を失ふことだ。それが高貴で淫卑なさろめが接吻の
場
(
シイン
)
となる。そぷらので。すべてそぷらので。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
お父のあの うれし相な だが じっと見ると 涙をにじませている うるんだ
瞳
(
め
)
休日に:――工場に働く女工さん達に捧ぐ――
(新字新仮名)
/
藪田忠夫
(著)
日がな一にちレクトル・エケクランツの水っぽい
瞳
(
め
)
が凝視している壁は、おもて通りに入口をもつ売春宿ホテル・ノルジスカの横ばらで、そこには雨と風と時間の
汚点
(
しみ
)
が狂的な壁画を習作していた。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
俺は
尋常
(
たゞ
)
の
地犬
(
ぢいぬ
)
サ。
雑
(
まじ
)
りツけない純粋の
日本犬
(
につぽんいぬ
)
だ。耳の垂れた尻尾を下げた
瞳
(
め
)
の碧い毛唐の犬がやつて来てから、地犬々々と俺の同類を
白痴
(
ばか
)
にするが、憚りながら神州の
倭魂
(
やまとだましひ
)
を伝へた純粋のお犬様だ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
手に触れてみたき思ひのつのりつつ死刑囚の
瞳
(
め
)
に雨の輪みてゐる
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
一座の
瞳
(
め
)
は、思わず彼に集まった。老将は即ち、黄忠であった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ひともとの桜の
幹
(
みき
)
につながれし
若駒
(
わかごま
)
の
瞳
(
め
)
のうるめる
愛
(
かな
)
し
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
(直き時計はさま
頑
(
かた
)
く、
憎
(
ぞう
)
に鍛へし
瞳
(
め
)
は強し)
文語詩稿 一百篇
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
黒い大きな
瞳
(
め
)
を彼女の方に向けた。
秋は淋しい
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
たくさんの宦官の
瞳
(
め
)
を釣つてゐよう
測量船拾遺
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
泣きつかれうるむ乙女の
瞳
(
め
)
の如し
短歌習作
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
稚
(
をさな
)
き心の夢の
瞳
(
め
)
ひらきぬれば
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一銭では不服か老巡礼の
瞳
(
め
)
鶴彬全川柳
(新字旧仮名)
/
鶴彬
(著)
悲しき
瞳
(
め
)
もてセレースが
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
星の
瞳
(
め
)
は
鈴
(
りん
)
を響かす。
深夜
(新字旧仮名)
/
三富朽葉
(著)
青い
瞳
(
め
)
をしたセルロイドじゃあるめえし、言葉も通じなけあ西も東もわからねえ人間の山奥みてえな亜米利加三界へ連れて来られて
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
周囲はほの暗く、憤怒に燃え立った黒吉の
瞳
(
め
)
は、殺意を含んで、ギラギラと輝き、無恰好な体からは、陰惨な
血腥
(
ちなまぐさ
)
い吐息が、激しく乱れた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
美しくはありませんが、色白のキリリとした顔を振り上げて、正面から冷たい
瞳
(
め
)
を向けられると、ガラッ八はただもうたじたじとなるばかりです。
銭形平次捕物控:108 ガラッ八手柄話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その時お前は、ほんたうにおめがの青白い
瞳
(
め
)
を見ることができる。それがお前の、ほんたうの人格であつた。
蝶を夢む
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
この、涼しい
瞳
(
め
)
をしたやさ男が、そっくりじぶんのものなのだと思うと、おせい様は、胴ぶるいがした。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
紫玉の
睜
(
みは
)
つた
瞳
(
め
)
には、
確
(
たしか
)
に
天際
(
てんさい
)
の
僻辺
(
へきへん
)
に、美女の
掌
(
て
)
に似た、
白山
(
はくさん
)
は、白く清く映つたのである。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
人の魂いまでも引付けるような巫女の顔は、物凄くなって、見ている人々は顔を
反
(
そむ
)
けたという。
刹那
(
せつな
)
、地震が地球を襲って家を
揺
(
ゆす
)
った。人々は驚きの
瞳
(
め
)
を見張ると死んだ娘は、深い溜息を吐き返した。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
幾度
(
いくたび
)
と言なき程をあふれくる
愛
(
かな
)
しさに
瞳
(
め
)
はものよく写す
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
瞳
(
め
)
を永遠につらならせ。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
幻影に人間の
瞳
(
め
)
は恐怖し
鶴彬全川柳
(新字旧仮名)
/
鶴彬
(著)
もうあの女の
瞳
(
め
)
には
測量船拾遺
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
少年はこう言って急に
口籠
(
くちご
)
もりながらじっと私の顔を見た。その黒い
瞳
(
め
)
は熱誠にまばたき、その白い頬は見る見る
真紅
(
まっか
)
に染まって来た。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして明るい
瞳
(
め
)
と小気味よい鼻は静観の美であり、かすかに開かれた
紅唇
(
くち
)
から覗く、光さえ浮んだ
皓歯
(
こうし
)
は、観客の心臓を他愛もなく
刳
(
えぐ
)
るのだ。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
陽のあるうちからの酒で、
玉山
(
ぎょくざん
)
まさに崩れおわんぬ狂態、源吉の
膝
(
ひざ
)
に片手を
凭
(
もた
)
れて、
盃
(
さかずき
)
をこう斜めに捧げたまま、美しい
瞳
(
め
)
が、少し三白眼に据えられたのです。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は
蜆
(
しじみ
)
のような黒い
瞳
(
め
)
をして、いつものようにじっと夫人を見つめていた。夫人は再度
拳銃
(
けんじゅう
)
を取りあげた。そして前よりももっと近く、すぐ猫の頭の上で発砲した。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
両方で
瞳
(
め
)
を寄せるうちに、松の根を草がくれの、並木下の
小流
(
こながれ
)
から
刎出
(
はねだ
)
したものではない。昼間、竜巻の時、魚が降った、あの中の一
尾
(
ぴき
)
で、河北潟から巻落されたに違いない。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蕾
(
つぼみ
)
の口、つんと通った鼻筋に黒みがちの
瞳
(
め
)
、江戸じゅうの遊里岡場所をあさっても、これだけの
綺麗首
(
きれいくび
)
はたくさんあるまいと思われるほど、名代の
女形
(
おやま
)
が権八にふんしたような
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その
瞳
(
め
)
の中には
雲
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
その
中央
(
まんなか
)
に突立って、アカアカとした
洋燈
(
ラムプ
)
の光りの
中
(
うち
)
にトロンとした
瞳
(
め
)
を据えながら、ウソウソと隅の方の暗い所を覗きまわった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
カッと見開いた眼は底知れぬ恐怖に
翳
(
かげ
)
って、恐らくこの生命を
喪
(
うしな
)
った
瞳
(
め
)
のうちにこそ、最後に映った凶悪無残な、
下手人
(
げしゅにん
)
の面影がこびり付いていることでしょう。
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蛍と
紫陽花
(
あじさい
)
が
見透
(
みとお
)
しの背戸に涼んでいた、そのお米さんの振向いた
瞳
(
め
)
の
情
(
なさけ
)
だったのです。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“瞳”の意味
《名詞》
《光学》 「ひとみ」の語義3を参照。
(出典:Wiktionary)
瞳
常用漢字
中学
部首:⽬
17画
“瞳”を含む語句
黒瞳
瞳孔
重瞳
瞳子
黒瞳勝
御瞳
碧瞳
瞳光
金瞳
瞳裏
瞳黒
金瞳青眉
金瞳黒毛
金瞳黒羽
重瞳子
開瞳
豊頬黒瞳
青瞳
紅毛碧瞳
碧瞳紫髯
...