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眥
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まなじり
ふりがな文庫
“
眥
(
まなじり
)” の例文
トいいながら
徐
(
しず
)
かに
此方
(
こなた
)
を振向いたお政の顔を見れば、何時しか額に
芋蠋
(
いもむし
)
ほどの青筋を張らせ、
肝癪
(
かんしゃく
)
の
眥
(
まなじり
)
を釣上げて
唇
(
くちびる
)
をヒン曲げている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
槍を
掴
(
つか
)
んだ伊東の
眥
(
まなじり
)
が裂ける。こいつは、先頃まで、自分が引立てて馬丁をさせて置いた辰公だ——八ツ裂きにすべき裏切者。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そもそもまたわが日本の前途はいかん。
眥
(
まなじり
)
を決して前途を望めば雲行はなはだ急なるを見るなり。吾人は実にこれを
掛念
(
けねん
)
するに堪えざるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
天川の伝説は間違ひでしたと言はない限り車裂きにも致しかねない思ひつめ方、
眥
(
まなじり
)
を決し双肌ぬいで詰め寄る形相物凄い。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
わらはの真心の程は、和尚の
死骸
(
なきがら
)
を見ても
眼
(
ま
)
のあたりに思ひ知り給ふべしと、思ひ詰めたる女の一念。
眥
(
まなじり
)
を輝やかす美くしさ。心も眩むばかり也。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
馬蹄
(
ばてい
)
に掛けて群集を蹴散らさんがためなのです。その時いずれの印度人も
眥
(
まなじり
)
を挙げて、いつの日にか英国への
復讐
(
ふくしゅう
)
を誓わぬものとてはありませんでした。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
宮は
慄然
(
りつぜん
)
として振仰ぎしが、荒尾の鋭き
眥
(
まなじり
)
は貫一が
怨
(
うらみ
)
も
憑
(
うつ
)
りたりやと、その見る前に身の
措所無
(
おきどころな
)
く
打竦
(
うちすく
)
みたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
へまであるが、出るところへ出れば相当の男なんだ、という事を示そうとして、ぎゅっと口を引締めて
眥
(
まなじり
)
を決し、分会長殿を
睨
(
にら
)
んでやったが、一向にききめがなく、ただ
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
横蔵の
精悍
(
せいかん
)
そのもののような顔——鋭く切れ上がった
眥
(
まなじり
)
、高く曲がった鼻、硬さを思わせる唇にもかかわらず、その髪は、豊かな大たぶさにも余り、それが解かれるとき
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
始は水の泡のようにふっと出て、それから地の上を少し離れた所へ、漂うごとくぼんやり止りましたが、たちまちそのどろりとした煤色の瞳が、斜に
眥
(
まなじり
)
の方へ寄ったそうです。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その顔をじっと見ていて、オリガの
眥
(
まなじり
)
に皺のある大きい眼に思いやりの柔かみが浮んだ。
広場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
今まで得々と弁じ立てていた当の老人は、顔色を失い、意味も無く子路の前に頭を下げてから
人垣
(
ひとがき
)
の背後に身を
隠
(
かく
)
した。
眥
(
まなじり
)
を決した子路の
形相
(
ぎょうそう
)
が余りにすさまじかったのであろう。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
勇士が虎に勝った史話は多く『淵鑑類函』や『佩文韻府』に
列
(
なら
)
べある。例せば『列士伝』に秦王
朱亥
(
しゅがい
)
を虎
圏
(
おり
)
の中に
著
(
お
)
いた時亥目を
瞋
(
いか
)
らし虎を視るに
眥
(
まなじり
)
裂け血出
濺
(
そそ
)
ぐ、虎ついにあえて動かず。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこへ
瞋
(
いかり
)
の
眥
(
まなじり
)
を
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げた、
一人
(
ひとり
)
の
若
(
わか
)
い
女
(
おんな
)
が
現
(
あら
)
われて、
口惜
(
くや
)
しい
口惜
(
くや
)
しいとわめきつづけながら、
件
(
くだん
)
の
男
(
おとこ
)
にとびかかって、
頭髪
(
かみ
)
を
毮
(
むし
)
ったり、
顔面
(
かお
)
を
引
(
ひ
)
っかいたり、
足
(
あし
)
で
蹴
(
け
)
ったり、
踏
(
ふ
)
んだり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
眥
(
まなじり
)
が張りさけんばかりにクヮッと眼をむき、なにか、眼に見えぬ水中の敵とでも争うような恰好で、凄じい
水飛沫
(
みずしぶき
)
をあげながら夢中になって両手で水を叩きまわっていたが、それも束の間で
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
紀昌
(
きしやう
)
こゝに
於
(
おい
)
て、
家
(
いへ
)
に
歸
(
かへ
)
りて、
其
(
そ
)
の
妻
(
つま
)
が
機
(
はた
)
織
(
お
)
る
下
(
もと
)
に
仰
(
あふむ
)
けに
臥
(
ふ
)
して、
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みひら
)
いて
蝗
(
いなご
)
の
如
(
ごと
)
き
梭
(
ひ
)
を
承
(
う
)
く。
二年
(
にねん
)
の
後
(
のち
)
、
錐末
(
すゐまつ
)
眥
(
まなじり
)
に
達
(
たつ
)
すと
雖
(
いへど
)
も
瞬
(
またゝ
)
かざるに
至
(
いた
)
る。
往
(
ゆ
)
いて
以
(
もつ
)
て
飛衞
(
ひゑい
)
に
告
(
つ
)
ぐ、
願
(
ねがは
)
くは
射
(
しや
)
を
學
(
まな
)
ぶを
得
(
え
)
ん。
術三則
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
母から受けた恥辱のために、彼の眼は血走り、彼の
眥
(
まなじり
)
は裂けてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
劍
(
つるぎ
)
に倚りて、
眥
(
まなじり
)
裂けば
従軍行
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
先程より
疳癪
(
かんしゃく
)
の
眥
(
まなじり
)
を
釣
(
つ
)
り上げて手ぐすね引て待ッていた母親のお政は、お勢の顔を見るより早く、込み上げて来る小言を一時にさらけ出しての
大怒鳴
(
おおがなり
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
又残る
片側
(
かたつら
)
は、眉
千切
(
ちぎ
)
れ絶え、
眥
(
まなじり
)
白く出で、唇
斜
(
ななめ
)
に
偏
(
かたよ
)
りて、まことに鬼の
形
(
すがた
)
とや云はむ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
実
(
げ
)
に彼は火の
如何
(
いか
)
に
焚
(
も
)
え、如何に
燬
(
や
)
くや、と
厳
(
おごそか
)
に
監
(
み
)
るが如く
眥
(
まなじり
)
を裂きて、その立てる処を一歩も移さず、風と烟と
焔
(
ほのほ
)
との
相雑
(
あひまじは
)
り、
相争
(
あひあらそ
)
ひ、
相勢
(
あひきほ
)
ひて、力の限を互に
奮
(
ふる
)
ふをば、
妙
(
いみじ
)
くも
為
(
し
)
たりとや
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
母から受けた恥辱のために、彼の眼は血走り、彼の
眥
(
まなじり
)
は裂けていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
恬然
(
てんぜん
)
として徳川十五代将軍と肩を並べている大官連の厚顔無恥振りに
眥
(
まなじり
)
を決していた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
戦国武士の血を多分に
稟
(
う
)
け継いでいる忠之は、
芥屋
(
けや
)
石の
沓脱台
(
くつぬぎ
)
に庭下駄を踏み鳴らして癇を
昂
(
たか
)
ぶらせた。成行によっては薩州と一出入り仕兼ねまじき決心が、その切れ上った
眥
(
まなじり
)
に見えた。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
磔刑柱
(
はりつけばしら
)
の上にて
屹度
(
きつと
)
、
面
(
おもて
)
を
擡
(
もた
)
げ、小さき唇をキリ/\と噛み、美しく血走りたる
眥
(
まなじり
)
を輝やかしつゝ乱るゝ黒髪、
颯
(
さつ
)
と振り上げて左右を見まはすうち、
魂切
(
たまぎ
)
る如き声を立てゝ何やら叫び
出
(
いだ
)
せば
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ゴンクール氏の
眥
(
まなじり
)
はきりきりと釣り上った。女の笑い声の一震動
毎
(
ごと
)
にビクビクと動いた。髪の毛は逆立ち、唇を深く噛み締めて、
拳銃
(
ピストル
)
の柄を砕くる
許
(
ばか
)
りに握り締めつつじりじりと
後退
(
あとじさ
)
りをした。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
三歳の時、
囲炉
(
ゐろり
)
に落ちしとかにて、右の半面焼け
爛
(
たゞ
)
れ、
偏
(
ひと
)
へに
土塊
(
つちくれ
)
の如く、眉千切れ絶え、
眥
(
まなじり
)
白く出で、唇、狼の如く釣り歪みて、鬼とや見えむ。獣とか見む。われと鏡を見て打ち
戦
(
をのゝ
)
くばかりなり。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
眥
漢検1級
部首:⽬
10画
“眥”を含む語句
内眥
外眥
目眥
後眥
眼眥
睚眥