町方まちかた)” の例文
「鈴ヶ森じゃあ町方まちかたの係り合いじゃあねえが、いずれ頼んで来るだろう。殊に屋敷者だから、まあひと通りは調べて置くがいいな」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
遠山殿の仰せには町方まちかたの事とは少々御役向おやくむきが違うゆえ、あのかた御一存ごいちぞんではしかとした事は申されぬが、何につけおかみにおいては御仁恵ごじんけいが第一。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「どうして此処ここにいてはいけないんだ」子供は警戒するように幹太郎を見、それから、「おじさん町方まちかたじゃねえのかい」
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それが人さえ出せば町方まちかたから、いつでもこもかぶりが取寄せられるようになって、始めて今日のような酒宴が、随時に開かれることにもなったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三日みつかあひだ城内じやうないりでございまして、やうや歸宅きたくいたしますと町方まちかた病家びやうかから、見舞みまひ催促さいそくるやうで、其處そこをどうにかけてまゐりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「笹野の旦那もそれをおっしゃるのだ、江戸の町人の難儀は、竜の口の御評定にもお話が出たそうだ、これで年を越された日にゃ町方まちかた一統の名前にかかわる——とな」
嚴重にかためられたり又仁王門のかた御加勢には松平安藝守殿(淺野家あさのけ)の同勢にて詰切つめきる其外町方まちかたに於ては近年大岡越前守の下知にて江戸中のとびの者をいろは四十八くみとなし町方火消まちかたひけし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
別にお寝室ねまと申してもございませんがその代りは一ツも居ませんよ、町方まちかたではね、かみほらの者は、里へ泊りに来た時蚊帳かやって寝かそうとすると、どうして入るのか解らないので
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「奉行所の町方まちかたなどが、なにかわしについて、聞き歩いたようなこともないかね」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町方まちかたから小半里の間かなりの傾斜を持って此村は高味にあるのでその一番池から水を引くと云う事は比較的費用も少しですみ、容易でも有ろうと云うのでその話はかなりの速力で進んで
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
取り分けいまだにおもい出すのは、自分が四つか五つのおり、島の内の家の奥の間で、色の白い眼元のすずしい上品な町方まちかたの女房と、盲人もうじん検校けんぎょうとがこと三味線しゃみせんを合わせていた、———その
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一つは町方まちかたの建てたものと、こう分れて居ったものでございます。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうして、かの唐人飴は公儀の隠密か、町方まちかたの手先が変装して、長英の探索に立ち廻っていたに相違ないということになった。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今度は入違いれちがい伝法院でんぽういん御役僧おやくそう町方まちかたの御役人衆とがおいでになり、お茶屋へ奉公する女中たちはこれから三月中みつきうちに奉公をやめて親元へ戻らなければ隠売女かくしばいじょとかいう事にいたして
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
町方まちかたでは子どもに与えるナンゾと同じように解しているほかに、中国・九州では普請の日に、大工や手伝に給与する酒食にかぎって、ケンズイまたはケンジーと謂う土地も多い。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
べつにお寝室ねままをしてもございませんが其換そのかはは一ツもませんよ、町方まちかたではね、かみほらものは、さととまりにとき蚊帳かやつてかさうとすると、うしてはいるのかわからないので
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
町方まちかた役人やくにん怪しみ早速召捕めしとり嚴敷きびしく拷問がうもんに及びしかど一向白状せざればさては直助にては非ざりしかと此段大岡殿へ申立しにぞ越前守殿ゑちぜんのかみどのも有るべしとて呼び出され如何に權兵衞其方はとがもなき者なるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ位のことは、町方まちかた御用聞の八五郎が知らない筈はありません。
町方まちかたのお調べよ、知ってるくせに」
「しばらくお待ちくださいまし。わたくしは町方まちかたの者でございます。唯今のは試し斬りでございますか、それとも何か仔細がございますか」
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その頃金富町かなとみちょうなるわが家の抱車夫かかえしゃふに虎蔵とて背に菊慈童きくじどうの筋ぼりしたるものあり。その父はむかし町方まちかたの手先なりしとか。老いて盲目めしいとなりせがれ虎蔵の世話になり極楽水の裏屋に住ひゐたり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大方おおかたこの花片はなひらは、うるさ町方まちかたから逃げて来て、遊んでいるのでございましょう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身代みがはり獄門ごくもんになし彦兵衞は助命じよめいさせ置たり然るに果して勘太郎と云ふ本人出しは我もよろこぶぞこれひとへに彦三郎が孝心に因る處一ツは八右衞門が取計とりはからひ權三助十の正直しやうぢきより起る處又某に對して惡口せしは惡口に似て惡口に非ず其方どもが如き者町方まちかたに有るは我も悦びの一ツなり彦兵衞は渡し遣は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まあ、やれるだけやってみよう。ここらは寺門前が多いから、町方まちかたの手が届かねえ。それをいいことにして、悪い奴らが巣を食っているのだろう
さるに町方まちかたの者としいへば、かたゐなるどもとうとび敬ひて、頃刻しばらくもともに遊ばんことをこいねがふや、親しく、優しく勉めてすなれど、不断はこなたより遠ざかりしが、その時は先にあまりさびしくて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
黒沼の小父さんの話では、それがもう町方まちかたの耳にもはいって、内々で探索をしていると云うことだから、嘘か本当かは自然に判るだろうけれど……。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町方まちかた里近さとちかかはは、真夜中まよなかるとながれおとむとふが反対あべこべぢやな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寺の門前地は寺社奉行の支配で、町方まちかたの係りではない。そこへみだりに踏み込むことは出来ないので、半七が一応の念を押すと、良助はうなずいた。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はて、可惜あったら二つないきもつぶした。ほう、町方まちかたの。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
取りあえず町方まちかたに通知して、その盗難詮議を依頼することになりました。八丁堀同心の矢上十郎兵衛は麻布の御用聞き竜土りゅうどの兼松を呼んで、その探索を命じる。
半七捕物帳:65 夜叉神堂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
相手が出家である以上、町方まちかたでむやみに手をつけるわけにも行かないので、半七はそれを町奉行所へ報告すると、町奉行所から更にそれを寺社奉行に通達した。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
殊に虎七の住みはその露地の奥の奥で、四畳半一間ひとまに型ばかりの台所が付いているだけである。そこへ町方まちかたの手先がむかったのは明くる日のひるごろであった。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町方まちかたと違って屋敷方の詮議は面倒で困ります、町屋まちやならば遠慮なしに踏み込んで詮議も出来ますが、武家屋敷の門内へは迂濶うかつにひと足も踏み込むことは出来ません。
黒い影は町方まちかた捕手とりてであった。父子が大宝寺町まで行き着かないうちに、捕手は二人を取り巻いた。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御承知でもありましょうが、坊主や虚無僧は寺社奉行の支配で、町方まちかたでは迂濶に手を着けることが出来ないのですから、そこを見込んで思い思いに化けたんでしょう。
寺社方に捕り手は無いのであるから、その承諾を得れば町方まちかたが手をくだしても差し支えはない。まずその手続きを済ませた上で、半七は更に北千住の掃部宿かもんじゅくへむかった。
これは内密に町方まちかたの手を借りて詮議するのが一番近道であるらしいということに決定して、金之助の叔父の弥左衛門が取りあえず山崎善兵衛のところへ駈けつけたのであった。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町方まちかたが迂闊に立ち入るわけにも行かねえから、わっしも指をくわえて見物していましたが、今に何事か出来しゅったいするだろうと内々睨んでいると、案の通り、こんな事になりました。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神社の絵馬をどうしたの、こうしたのというのは、寺社の支配内のことで、おれたちの係り合いじゃあねえ。殊に堀ノ内の先だと云うのだから、江戸の町方まちかたの出る幕じゃあねえ。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
表向きに吟味するすべがないでもないが、町方まちかたと違ってここらは郡代ぐんだいの支配であるから、公然彼女を吟味するとなれば、どうしても郡代の屋敷へ引っ立てて行かなければならない。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
実はわたしは町方まちかたの御用聞きだ。寺社とお係りは違うけれど、こういうところへ来あわせては、調べるだけのことは調べて置かなければならねえ。その晩、和尚さんがその仏さまを
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが町方まちかたの耳にはいると、役人たちも打っちゃって置くわけには行かなくなった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし前後の模様から考えると、どうも物取りの仕業ではないらしい。桂斎先生に対して何かの意趣遺恨のあるものだろうという鑑定で、町方まちかたでもそれ/″\に探索にかゝりました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大木戸そとの事件ですけれど、事柄がすこし変っているので、特に町方まちかたから選み出されたようなわけで、わたくしも役目のほかに幾らかの面白味も手伝って、すぐにそこへ出張って行って
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町方まちかたからあらためて寺社奉行へ届けた上で、わたくし共が捕り方に出向きました
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
盆や正月の場合にも町方まちかたでは新暦による、在方ざいかたでは旧暦によるという風習になっているので、今この事件の起った正月の下旬も、在方では旧正月を眼の前に控えている忙がしい時であった。
鴛鴦鏡 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
武家屋敷内の出来事であるから、表向きにしないでも何とか済むのであるが、彼はその疑問を解決するために町方まちかたの手を借りようと思い立って、わざとおおやけにそれを発表しようとしたのであった。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一種の治外法権ちがいほうけんともいうべき旗本屋敷に潜伏して、無事に月日を送っていれば、容易に町方まちかたの眼にも触れなかったのであるが、お近は江戸へ帰ると、間もなく更に新らしい恋人を見つけ出した。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふと町方まちかたの耳にはいった。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)