うまれ)” の例文
明治十一年四月までながらえて、八十二歳で歿した。寛政九年のうまれで、抽斎の生れた文化二年にはわずかに九歳になっていたはずである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わが導者そのかたへにたちよりていづくの者なるやをこれに問へるに、答へて曰ひけるは、我はナヴァルラの王國のうまれなりき 四六—四八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
荒縦なる仏国うまれの自由主義、我に於て甚だ有難からず、絶望より転化し来れる独露あたりの虚無思想、我に於て得るところありと云ふ可からず
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
我は小田原のうまれにて本間次三郎という者。幼少の折父母を失いければ、鎌倉なる赤城家に嫁ぎたる叔母のもとにて養われぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば暖国だんこくの人のごとく初雪を吟詠ぎんえい遊興いうきようのたのしみはゆめにもしらず、今年ことしも又此雪中ゆきのなかる事かと雪をかなしむ辺郷へんきやう寒国かんこくうまれたる不幸といふべし。
すれば我父は大坂おほさかうまれなれば鈴ヶ森にて獄門ごくもんに掛られたることうたがひなしと夫より六郷の渡場わたしばこえ故意わざ途中とちう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんじはことごとく罪孼つみうまれし者なるにかえって我らを教うるか、ついに彼を逐出おいいだせり、彼らが逐い出ししことを聞き、イエス尋ねてこれに遇いいいけるは、爾神の子を信ずるか
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
およそ左道さとう惑溺わくできする者は、財をむさぼり、色を好み、福を僥倖ぎょうこうに利し、分を職務に忘れ、そと財をかろんじ、義をおもんずるの仁なく、うち欲にち、身を脩るの行なく、うまれて肉身の奴隷となり
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
九五ゆめあだなることにな聞き給ひそ。もとは都のうまれなるが、父にも母にもはやうわかれまゐらせて、乳母めのともと成長ひととなりしを、此の国の九六受領じゆりやう下司したづかさあがた何某なにがしに迎へられてともなくだりしははやく三とせになりぬ。
一年の終を示すその時刻は、又の一年のうまれを示すものである。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
声たてて小さくめぐしきうまれほぞをまさぐりぬ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「明治三十一年うまれだね。四十だと。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うまれつる甲斐かひはありけれ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
そこで文一郎は津軽家に縁故のある浅草常福寺じょうふくじにあずけられた。これは嘉永四年の事で、天保十二年うまれの文一郎は十一歳になっていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うまれは東京で、氏素性は明かでない。父も母も誰も知らず、諸国漫遊の途次、一昨年の秋、この富山に来て、旅籠町の青柳あおやぎという旅店に一泊した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はその子の身全からず、心さらにあしく、うまれ正しからざるものをそのまことの牧者に代らしめたればなり。 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
御許おゆるくだされなば有難しと餘儀よぎなげに頼むに夫はよき思付おもひつきなり明日より左樣さやういたし心任こゝろまかせに父の在所ありかを尋ぬべしとて翌日より餠を背負せおはせて出せしに元より發明はつめいうまれなれば屋敷方やしきがたへ到りても人氣じんき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うまれながらにして義務を知るものならず、人生れながらに徳義を知るものならず、義務も徳義も双対的の者にして、社界を透視したる後、「己れ」を明見したるの後に始めて知り得可き者にして
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
雪をたのしむ人の繁花はんくわ暖地だんちうまれたる天幸をうらやまざらんや。
寛政十一年のうまれで、抽斎の生れた文化二年には七歳になっていた。歿したのは文久元年十二月十五日で、年をくること六十三であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかるに、梓はもと仙台のうまれで、土地の塗物師ぬりものしの子であったが、ゆたかなる家計のもとに育ったものではなかった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寶澤はうたくと改めける感應院は元より妻も子もなく獨身どくしんの事なる故に寶澤を實子じつしの如くいつくしみてそだてけるが此寶澤はうまれながらにして才智さいち人にすぐ發明はつめいの性質なれば讀經どくきやういふおよばず其他何くれとをしゆるに一を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そうさ、うまれは東だが、身上しんしょうは北山さね。」と言う時、徳利の底を振って、垂々たらたら猪口ちょくへしたむ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怜悧りこううまれ聞分きゝわけがあるから、三ツづつあひかはらず鶏卵たまごはせられるつゆも、いま療治れうぢとき不残のこらずになつてることゝ推量すゐりやうして、べそをいても、兄者あにじやくなといはしつたと、こらへてこゝろうち
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)