清浄せいじょう)” の例文
旧字:清淨
清浄せいじょうな白い籐の椅子、テーブル、純白なカーテン、海の色そのままな真青な敷物マット、南に海を受けたそこは二十畳に近い座敷だった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
室は小公会堂しょうこうかいどうぐらいの大きさであるが、まるで卵のからの中に入ったように壁は曲面きょくめんをなしていてクリーム色に塗られている。清浄せいじょうである。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌日よくじつがた子供こどもは、ついにこの世界せかいからりました。ゆきは、その道筋みちすじきよめるため、しろ化粧けしょうして、野原のはらや、もりまでを清浄せいじょうにしました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただみずをかぶったような清浄せいじょう気分きぶんになればそれでよろしいので、そうすると、いつのにか服装みなりまでも、自然しぜん白衣びゃくいかわってるのでございます。
たとえば大きなひつ長持ながもちるい、なかにはいった物をかたむけたり曲げたりしてはならぬ場合、ことに清浄せいじょうをたもって雑人ぞうにんの身に近づけたくない品物などは
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ひそかなご用件ようけんとやらで、清浄せいじょうな、神殿しんでんにおいて、若君わかぎみとただふたりだけでお目にかかりたいと申しますが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本のことわざにまじわりはたんとして水のごとしというのがある、日本人は水のごとしだ、清浄せいじょうだ、淡白たんぱくだ、どんな人とでも胸をひらいてまじわることができる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし、絶対清浄せいじょうであるはずの夫子が汚らわしい淫女に頭を下げたというだけで既に面白くない。美玉を愛蔵する者がそのたま表面おもてに不浄なるもののかげの映るのさえ避けたいたぐいなのであろう。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いかに人はかれこれいうともおのれさえ道を蹈むことをおこたらずば、何の策をろうせずとも、いつの間にか黒白こくびゃく判然するものである。要は「本来ほんらい清浄せいじょう」を守るにある。さすれば人為人工を用うるに及ばぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ひとのめったにいかない清浄せいじょうやまいただきや、そこにえて、かぜかれているはやし景色けしきなどをかんがえるだけでも、一にちつかれをわすれるようながしました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
地下街の空気は、絶えず送風機で清浄せいじょうに保たれ、地上が毒瓦斯で包まれたときには、数層の消毒扉しょうどくひが自動的に閉って、地下街の人命を保護するようになっていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしはどこに一てん申分もうしぶんなき、四辺あたり清浄せいじょう景色けしき見惚みとれて、おぼえず感歎かんたんこえはなちましたが、しかしとりわけわたくしおどろかせたのは、瀑壺たきつぼから四五けんほどへだてた、とある平坦たいら崖地がけちうえ
清浄せいじょうすなをしきつめてちりもとめない試合場しあいじょう中央ちゅうおうに、とみれば、黒皮くろかわ陣羽織じんばおりをつけた魁偉かいいな男と、菖蒲しょうぶいろの陣羽織をきた一名の若者とが、西と東のたまりからしずしずとあゆみだしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気がついて四囲あたりを見まわすと、自分は白い清浄せいじょう夜具やぐのなかにうずまって、ベッドの上に寝ていた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ことに人間にんげんが、足跡あしあとってから、まったく清浄せいじょうとなった山中さんちゅうで、かれらは、あわただしくれていく、うつくしいあきこころからしむごとく、一にちたのしくあそんだのでありました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
稀薄きはくで、清浄せいじょうで、ほとんどるかきかの、ひかり凝塊かたまり申上もうしあげてよいようなお形態からだをおあそばされたたか神様かみさまが、一そくびににぶ物質ぶっしつ世界せかいへ、その御分霊ごぶんれいけることは到底とうていできませぬ。
だが僕達の身体は清浄せいじょうで、C子はまだ処女だった。時分はよしと、僕は彼女を、秘密室のあるダンス場めぐりに連れ出したのだった。それから四五日経って、C子は逆に僕をいどんだのだ。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あの清浄せいじょうな、たかやまでなければ、これらの草花くさばなそだたないことをりました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちらちらとった、ゆき清浄せいじょうらして、朝日あさひのぼりました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)