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淫蕩
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いんとう
ふりがな文庫
“
淫蕩
(
いんとう
)” の例文
淫蕩
(
いんとう
)
であり、クリストフをいやがらせまた面白がらせる無邪気な利己心をそなえていたし、約言すれば、友だちにたいしてではないが
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
船は時にその腹に汚水や糞尿を
船脚
(
ふなあし
)
の重くなるまで満喫する代りには時に
淫蕩
(
いんとう
)
な男女の秘密を載せて軽々と浮く様な性質のものであつた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
もしそっとその仮面を、いきなり外してみたならば、女の顔の上に、どんな
淫蕩
(
いんとう
)
な多情が、
章魚
(
たこ
)
の肢のように揺れていることか。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
重吉は種子の語ったことを冷静に考えて見た時、
始
(
はじめ
)
て自分は
淫蕩
(
いんとう
)
な
妾上
(
めかけあが
)
りの女に金で買われている男妾も同様なものである事に心づいた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
実際、顔も
身体
(
からだ
)
も見えない女の足首だけが夜具の中から出ているのは不思議な眺めです。そして、たまらなく
淫蕩
(
いんとう
)
的なんです。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
▼ もっと見る
あの
淫蕩
(
いんとう
)
な後家によく似ている笑いかただ。死ぬ半月前まで、幾人もの村の男を、
交
(
かわ
)
る交る招き入れていたお干代後家の幽魂。
銀河まつり
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唇が蜂蜜でも塗ったように、ねばっこく艶々と濡れ光っている。紅で染めた紅い唇であって、
淫蕩
(
いんとう
)
の異常さを示していた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それらのすばらしい舞台での日夜を
分
(
わか
)
たぬ狂気と
淫蕩
(
いんとう
)
、乱舞と陶酔の歓楽境、
生死
(
しょうじ
)
の遊戯の数々を、作者は如何に語ればよいのでありましょう。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いったいなにが彼女を引き止めているのか? まさか
淫蕩
(
いんとう
)
の味ではなかろう! そんなことはない、この汚辱はただ機械的に彼女に触れたのみで
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
このデカダン興味は江戸の文化の
爛熟
(
らんじゅく
)
が産んだので、江戸時代の
買妓
(
ばいぎ
)
や蓄妾は必ずしも
淫蕩
(
いんとう
)
でなくて、その中に極めて詩趣を
掬
(
きく
)
すべき情味があった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その肉体は益〻
淫蕩
(
いんとう
)
であったけれども、その心には、家の虫の盲目的な宿命の目があたりを見廻し、見つめていた。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
案の
定
(
じょう
)
そうであったか。この邪神は年を経た
蛇
(
おろち
)
である。かれの本性は
淫蕩
(
いんとう
)
なもので、牛と交尾しては
麟
(
りん
)
を生み、馬と交わっては竜馬を生むといわれている。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
すなわち……李太白が玄宗皇帝の
淫蕩
(
いんとう
)
と、
栄耀栄華
(
えいようえいが
)
に
媚
(
こ
)
び
諛
(
へつら
)
った詩を作って、御寵愛を
蒙
(
こうむ
)
ったお蔭で、天下の大詩人となったのを見た呉青秀は、よろしい。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
機を見るにさかしい者たちは、遊女らの
扮粧
(
ふんそう
)
を上流の美女に似せ、それよりも放逸で、派手やかであり、
淫蕩
(
いんとう
)
な
裲襠姿
(
しかけすがた
)
をつくりだし、その上に教養もくわえた。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
夫人の男性に対する態度は、彼女の
淫蕩
(
いんとう
)
な動機からでもなく、彼女の妖婦的な性格からでもなく、もっと根本的な主義から思想から、
萌
(
きざ
)
しているのだと思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お由は国太郎の胸を肩で
小突
(
こづ
)
いて、二人の時だけに見せる
淫蕩
(
いんとう
)
な笑いを顔一杯に浮べていた。その
濃艶
(
のうえん
)
な表情が、まだはっきりと国太郎の眼に残っているのに——
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大人数なために
稼
(
かせ
)
いでも
稼
(
かせ
)
いでも貧乏しているので、だらしのない汚い風はしていたが、その顔付きは割合に整っていて、不思議に男に
逼
(
せま
)
る
淫蕩
(
いんとう
)
な色を
湛
(
たた
)
えていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
またソクラテスの言ったことや為したことが、当時の
淫蕩
(
いんとう
)
浮華
(
ふか
)
なる風俗の進歩をさえぎったから、彼は青年を毒するものなりと呼ばれて死刑に処せられたのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
根こぎにされた人々の無定見と、粉飾を事とする思想感情の
淫蕩
(
いんとう
)
と、病的な個人主義とであった。かくて彼の第二の反抗は、このフランスの虚偽にたいしてなされた。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
あるものは極度に
貪食
(
どんしょく
)
で、したがって口と腹がむやみに大きく、あるものは極度に
淫蕩
(
いんとう
)
で、したがってそれに使用される器官が著しく発達し、あるものは極度に純潔で
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私の飽くなき要求がなかったならば、夫もああまで
淫蕩
(
いんとう
)
生活に浸り込むことはなかったであろう。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小さな犬のくせに、どうしてそんな人間の
淫蕩
(
いんとう
)
の秘密を覚えたかと思われるような奴だ。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は倹約令を
布
(
し
)
くのみならず、倹約の敵たる
淫蕩
(
いんとう
)
奢侈
(
しゃし
)
の風俗を矯正せんと欲せり。彼は男娼を禁ぜり、彼は
隠売淫
(
かくればいいん
)
を禁ぜり、彼は各売淫所を
撤
(
てつ
)
して、これを市外の一所に
遷
(
うつ
)
せり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
淫蕩
(
いんとう
)
で、仁慈のあるスタイルで、田舎者の読者をたぶらかす。厭じゃありませんか。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
資生堂でコーヒーを飲みながら兄さんは、「芹川の家には、
淫蕩
(
いんとう
)
の血が流れているらしい。」と
呟
(
つぶや
)
いたので、ぎょっとした。帰りのバスの中では、「誠実」という事に就いて話し合った。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あの
淫蕩
(
いんとう
)
な習慣からぬけだして、
生娘
(
きむすめ
)
のようにきりっとし、清潔な女になった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
宗右衛門は五十余歳の年齢にしては、若い肉体を持つてゐたが、それは彼の頑強と豪気との抑圧的な一種の反感を対者に加へるにとゞまつて、誰も彼から
淫蕩
(
いんとう
)
の感じを受ける者はなかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
寒いような、引きしまったような心持のかげに、
淫蕩
(
いんとう
)
的な熱情がムズムズして居るような心持がする。五時半から、国民美術の講演会へ行って見る。古田中夫人、高松、浜岡、君塚等に会う。
日記:04 一九一七年(大正六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
くどくも言う通り、主人も奉公人もみな正直で行儀のいい此の一家内に、どうしてこんなだらしの無い、見るから
淫蕩
(
いんとう
)
らしい娘たちが住んでいるのかと、わたしは不思議に思った位であった。
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
心に
絡
(
まつ
)
わりついていた女の
厭
(
いと
)
わしい性癖や
淫蕩
(
いんとう
)
な肉体、だらしのない生活、浪費、持病、ヒステレカルな
嫉妬
(
しっと
)
——それらが、今も考え出されるたびに、
劇
(
はげ
)
しい
憎悪
(
ぞうお
)
の念に心を
戦
(
おのの
)
かせるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
長羅の父の君長は、
妃
(
きさき
)
を失って以来、饗宴を催すことが最大の
慰藉
(
いしゃ
)
であった。
何
(
な
)
ぜなら、それは彼の面前で踊る婦女たちの間から、彼は彼の欲する
淫蕩
(
いんとう
)
な一夜の肉体を選択するに自由であったから。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
商会主は
淫蕩
(
いんとう
)
と淫蕩との間の
小憩
(
こやす
)
み、
膏
(
あぶら
)
っこい刺身のつまとして、純真
無垢
(
むく
)
の艶子を見た。金や地位に
靡
(
なび
)
くことを知らない少女は一面にはばからしく思えたが、一面には貴い宝石のように見えもした。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
本多
忠刻
(
ただとき
)
と恋の勝利の歓楽に酔って、坂崎を憤死せしめた罪多き女、その後半生は吉田通ればの
俚謡
(
りよう
)
にうたわれて、
淫蕩
(
いんとう
)
のかぎりを尽した劇中の人、人もあろうに宇治山田の米友は、この女のために
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ベートーヴェンをほめるのに、その作品には悪ふざけや
淫蕩
(
いんとう
)
な肉感があると言っていた。
陰鬱
(
いんうつ
)
な思想中にもみやびな
饒舌
(
じょうぜつ
)
を見出していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
或はまた四季の眺めを
形取
(
かたど
)
る
肉付
(
にくづき
)
のよきポモンの女神。およそフランドル名家の描きし大作は、皆これかの
淫蕩
(
いんとう
)
なる婦女にあらざるなきを。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
淫蕩
(
いんとう
)
な女体が、
焚
(
た
)
きこめられた春情香の枕を
外
(
はず
)
して、歓喜の極に、一
喚
(
かん
)
、死息を怪しましめ、一
叫
(
きょう
)
、
凝脂
(
ぎょうし
)
を汗としてうるおす
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淫蕩
(
いんとう
)
度なきを示したもの。第五は偏平の耳の形。
虎狼
(
ころう
)
の心を抱いた姿! 汝の人相一切は皆これ大盗の
象徴
(
あらわれ
)
じゃわい!
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
けがらわしき
淫蕩
(
いんとう
)
の巣窟たる父親の家に身を寄せてからも、童貞純潔な彼は、見るに忍びないときに、黙々としてその場をはずすばかりで相手が誰であろうとも
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ただ一度の遊興は柿江の心をよけい空想的にして、わずかな光も漏らさない窓のかなたに催されている
淫蕩
(
いんとう
)
な光景が、必要以上にみだらな色彩をもって思いやられた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私は女の
淫蕩
(
いんとう
)
の血を憎んだが、その血すらも、時には清潔に思われてくる時があった。
私は海をだきしめていたい
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「そう聞くと、
尚更
(
なおさら
)
恐ろしくなりますなあ、ナオミさんには生れつき
淫蕩
(
いんとう
)
の血が流れていたんで、ああなる運命を持っていたんですね、折角あなたに拾い上げて貰いながら、———」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「杉田のやつは腎虚だぜ、あの女房はあいつの感覚には
淫蕩
(
いんとう
)
すぎるんだ」
正体
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自ら火に投じたことだけは確かだが、最後の
一月
(
ひとつき
)
ほどの間、絶望の余り、言語に絶した
淫蕩
(
いんとう
)
の生活を送ったというものもあれば、毎日ひたすら
潔斎
(
けっさい
)
してシャマシュ神に
祈
(
いの
)
り続けたというものもある。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
女性の
浅間
(
あさま
)
しさを
知悉
(
ちしつ
)
しているつもりでありました。女性は男に愛撫されたくて生きている。称讃されたくて生きている。我利我利。
淫蕩
(
いんとう
)
。無智。虚栄。死ぬまで怪しい空想に
身悶
(
みもだ
)
えしている。
貪慾
(
どんよく
)
。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは今の世までもうたわれて、
淫蕩
(
いんとう
)
の標本とされている。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
公衆は食べすぎて、いかなる料理にも飽いてしまい、やがて、最も
淫蕩
(
いんとう
)
な快楽の想像をもつまらなく思うようになっていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
余りに
艶
(
なまめか
)
しい辺りの情景に、若い門人たちは
自
(
おのずか
)
ら誘い出される
淫蕩
(
いんとう
)
な空想にもつかれ果てたのか、今は唯
遣瀬
(
やるせ
)
なげに腕を組んで
首
(
こうべ
)
を垂れてしまった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
良家の子女まで、
淫蕩
(
いんとう
)
な色彩をこのんだ。町に捨て児がふえ、
売女
(
ばいた
)
の親たちが、大きな顔して、暮しが立った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし好色の
大物主
(
おおものぬし
)
は、容易に放そうとはしなかった。ギラギラ輝く眼の中には、
淫蕩
(
いんとう
)
の気が充ち充ちている。美食と運動との
賜物
(
たまもの
)
によって、彼の腕力は強かった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その目は相変わらず
淫蕩
(
いんとう
)
と見えるほど極端に純潔だった。純潔と見えるほど極端に淫蕩だった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
“淫蕩”の意味
《名詞》
淫蕩(いんとう)
酒色や淫らな楽しみにふけること。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
“淫蕩”の解説
本記事では淫蕩(いんとう)について説明する。また、性に関して奔放な人、についても説明する。
(出典:Wikipedia)
淫
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
蕩
漢検準1級
部首:⾋
15画
“淫蕩”で始まる語句
淫蕩者
淫蕩三昧
淫蕩無比