歩行あるく)” の例文
背負せおひ歩行あるく辨慶がのそ/\と出きたりモシ/\文さん今日は雨降あめふりで御互に骨休ほねやすみ久しぶりなれば一くちのむべし夫に今さんまの生々なま/\としたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうおこつてはこまる喧嘩けんくわしながら歩行あるく往来わうらいひとわらふぢやアないか。だつてあなたが彼様あんなことばつかしおつしやるんだもの。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あとのなんぞは、何処どこ工面くめんをしたか、たけ小笠をがさよこちよにかぶつて、仔細しさいらしく、かさ歩行あるくれてぱく/\と上下うへしたゆすつたもので。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
成程なるほど銘仙めいせんだの御召おめしだの、白紬しろつむぎだのが其所そこ一面いちめんらしてあつた。宗助そうすけこのをとこ形裝なり言葉遣ことばづかひ可笑をかしいわりに、立派りつぱ品物しなもの脊中せなかせて歩行あるくのをむし不思議ふしぎおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
順に廻り今日はよき天氣てんきとか又はわるい風とか御寒おさむいとか御暑おあついとか云てまだくづはたまりませんかと一けんづつ聞て歩行あるくが宜しからん其の中には心安くなり人にもかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
界隈かいわい景色けしきがそんなに沈鬱ちんうつで、濕々じめ/\としてるにしたがうて、ものもまた高聲たかごゑではものをいはない。歩行あるくにも内端うちわで、俯向うつむがちで、豆腐屋とうふやも、八百屋やほやだまつてとほる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たみうへもなきゑんよろこびておまへさまもいまはなのさかりりがたにつてはんで歩行あるくともれることでなし、大底たいていにおこヽろさだたまへ、松島まつしまさまにおんはありともなんのお束約やくそくがありしでもなく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
隣村りんそん平野村の名主なぬし甚左衞門は平澤村の甚兵衞名主のおととなるがこれも至つて慈悲じひふかきものにてお三ばゝまよ歩行あるく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
界隈かいわいの景色がそんなに沈鬱ちんうつで、湿々じめじめとして居るにしたごうて、住む者もまた高声たかごえではものをいわない。歩行あるくにも内端うちわで、俯向うつむがちで、豆腐屋も、八百屋やおやも黙って通る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろで雨戸を閉めかけて、おじい、腰が抜けたか、弱い男だ、とどうやら風向かざむきさそうなので、宰八があざけると、うんにゃ足の裏が血だらけじゃ、歩行あるくあとがつく
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へんです。……どうもへんなんです——縁側えんがは手拭掛てぬぐひかけが、ふはりと手拭てぬぐひけたまゝで歩行あるくんです。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
清らかなきものを着、あらたくしけずって、花に露の点滴したたよそおいして、馬に騎した姿は、かの国の花野のたけを、錦の山の懐にく……歩行あるくより、車より、駕籠かごに乗ったより、一層鮮麗あざやかなものだと思う。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仕方を見せて見物を泣かせる目算つもりのあてはずれ、発奮はずみで活歴を遣って退け、手痍てきず少々負うたれば、破傷風にならぬようにと、太鼓大の膏薬こうやくを飯粒にて糊附はりつけしが、歩行あるくたびに腹筋はらすじよれて、びっこき曳き
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)