正氣しやうき)” の例文
新字:正気
あはれ何時迄いつまで狂氣きやうきでも有まじ其内には正氣しやうきに成るべしとてつれ歸り是も隱居所いんきよじよへ入置つかはせしに追々おひ/\正氣に相成あひなりければ又々以前の如く産婦さんぷ取揚とりあげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただ夜になると、まるで幽靈のやうに、庭や果樹園を正氣しやうきを失つたかのやうにお歩きになりました——私は正氣を失つてゐらしたんだと思ひます。
瀧口が顏は少しく青ざめて、思ひ定めし眼の色たゞならず。父はしばことばなくうつむける我子の顏を凝視みつめ居しが、『時頼、そは正氣しやうきの言葉か』。『小子それがしが一生の願ひ、しんもついつわりならず』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
其時そのとき居士こじは、自分じぶん坐禪ざぜんをしながら、何時いつかずにうと/\とねむつて仕舞しまつてゐて、はつと正氣しやうきかへ間際まぎはに、おやさとつたなとよろこぶことがあるが、さていよ/\いてると
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すでにそれはひとつてことなり遺書ゐしよによつてあきらかではないか、かんがなほして正氣しやうきになつて、其後そのごことはおまへこゝろまかせるからおもふまゝのるがい、御兩親ごりやうしんのあることわすれないで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何度なんども/\も名前なまへばれて、やうやくその生徒せいと正氣しやうきかへつたことがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
號室がうしつだい番目ばんめは、元來もと郵便局いうびんきよくとやらにつとめたをとこで、いやうな、すこ狡猾ずるいやうな、ひくい、せたブロンヂンの、利發りかうらしい瞭然はつきりとした愉快ゆくわい眼付めつきちよつるとまる正氣しやうきのやうである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
氣の毒に思ひ何時いつまで狂氣きちがひでも有まじ其内には正氣しやうきに成べしとておの明家あきやすまはせ此處にあること半年程はんねんほどにて漸やく正氣しやうきに成しかば以前の如く産婦さんぷ世話せわわざとして寡婦暮やもめぐらしに世を渡りける。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつぞは正氣しやうきかへりてゆめのさめたるごとく、父樣とゝさま母樣かゝさまといふをりのありもやすると覺束おぼつかなくも一日ひとひ二日ふたひたれぬ、空蝉うつせみはからをつゝもなぐさめつ、あはれかどなるやなぎ秋風あきかぜのおとこえずもがな。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故なら、あの女があばれ出すと私の祕密をどうしても洩らすのですから、その上、あの女は幾日か——時には何週間も——正氣しやうきに返るときがあつて、その時には立てつゞけに私を罵るのですから。
てふなにない、あに此處こゝだから、ころしはせぬから安心あんしんして、な、いか、えるか、あにだよ、正雄まさをだよ、取直とりなほして正氣しやうきになつて、おとつさんやおつかさんを安心あんしんさせてれ、こらすこ聞分きゝわけて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
覺え無とは何故ぞ受取證書が白紙に成て居るのも不審ふしんの一ツと云ば長庵は大いに笑ひ戲氣たはけと云も程こそあれおぼちがひも事による證據の書附有などと其の白紙しらかみが何になるさうして見ればお若いが正氣しやうきでは御座るまい診察しんさつして藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)