たのしみ)” の例文
新字:
おなひとですら其通そのとほり、いはんやかつこひちかられたことのないひと如何どうして他人たにんこひ消息せうそくわからう、そのたのしみわからう、其苦そのくるしみわからう?。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
われは獨語して、いでや人生の渦裏に投じて、人生のたのしみを受用し、誓ひて餘瀝なからしめんと云ふとき、舟はもとの旅館の階下に留まりぬ。
「あゝ、おめでたいね、おきやくさまがむと、毎年まいねんね、おまへがたもあかしであそぶんだよ。まあ、それたのしみにしておはたらきよ。」
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
欲界の諸天は氣を泄らしてたのしみとなすといふ語が佛書にあるが、天部にも及ばぬ人間だの畜生だのは、氣と血とを併せ泄らして樂とするから堪らない。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
年寄は年の寄るのを忘れて、子供の事を思つてゐる。子供は勉強して、親を喜ばせるのをたのしみにしてゐる。金も何もありやあしない。心と腕とが財産なのだ。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
紫陽花色あぢさゐいろ薔薇ばらの花、ひんい、心の平凡なたのしみともいふべく、新基督教風しんキリストけうふう薔薇ばらの花、紫陽花色あぢさゐいろ薔薇ばらの花、おまへを見るとイエスさまも厭になる、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
吾等われら無上むじやうたのしみとせるなつかしの日本につぽんかへ希望きぼうも、まつた奪去うばひさられたといふものです。
其時そのときけに、今朝けさいたはなかず勘定かんぢやうつて二人ふたりたのしみにした。けれどもあきからふゆけては、はなくさまるれて仕舞しまふので、ちひさな砂漠さばくやうに、ながめるのもどくくらゐさびしくなる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
われたのしみを吹くときは
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
小田原をだはらからさきれい人車鐵道じんしやてつだうぼくは一ときはや湯原ゆがはらきたいのできな小田原をだはら半日はんにちおくるほどのたのしみすてて、電車でんしやからりて晝飯ちうじきをはるや人車じんしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人の噂を聞くに、この貴人はボルゲエゼのうからにて、アルバノとフラスカアチとの間に、大なる別墅べつしよかまへ、そこのそのにはめづらしき草花を植ゑてたのしみとせりとなり。
會計をさせられる樣になるかも知れないが、おかあ樣がたのしみにしてお出なさるものを、無理に取り上げるには及ばない。おかあ樣のはうで、もう面倒だからよすと仰やれば、先づおれが自分でする。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たのしみは、これきりから。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
中學ちゆうがくつても二人はくことをなによりのたのしみにして、以前いぜんおなじく相伴あひともなふて寫生しやせい出掛でかけてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
すべて謝肉祭に連りたるたのしみをば、つゆのこさずしてこゝろみんと誓ひたればなり。
それで十分じふゞんです、ちからかぎいてそれ愚論ぐろんならべつ仕方しかたいからな。けれどもたのしみります。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)