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東雲
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しののめ
ふりがな文庫
“
東雲
(
しののめ
)” の例文
……式の最初、住吉
詣
(
もうで
)
の
東雲
(
しののめ
)
に、女紅場で支度はしたが、急にお珊が気が変って、
社
(
やしろ
)
へ参らぬ、と言ったために一人
俄拵
(
にわかごしら
)
えに数を
殖
(
ふ
)
やした。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吉原の万字楼の
東雲
(
しののめ
)
の部屋に、夜明け方、宇津木兵馬はひとり起き直って、
蘭燈
(
らんとう
)
の
下
(
もと
)
に、その小指の傷を巻き直しています。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「あ、忘れていたよ。
東雲
(
しののめ
)
さんとこへちょいと行くんだッけ」と、初緑が坐を立ちながら、「吉里さん、お先きに。花魁、また後で来ますよ」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
東雲
(
しののめ
)
の頃から、徐州城のうちに、
鼓楽
(
こがく
)
の音がきこえていた。ゆうべから夜を明かして、盛大な祝宴は張られていたのである。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東雲
(
しののめ
)
の
空色
(
そらいろ
)
のような、また
平和
(
へいわ
)
な
入
(
い
)
り
日
(
ひ
)
の
空色
(
そらいろ
)
のような、うす
紅
(
あか
)
い
色
(
いろ
)
の
着物
(
きもの
)
をきた
少女
(
しょうじょ
)
が、この
楽園
(
らくえん
)
を
歩
(
ある
)
いていたのです。
消えた美しい不思議なにじ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
まるで東京の子供が
東雲
(
しののめ
)
あたりのハゼを釣っているようだ。ずっと上流へ行くと、イワナが釣れるが、土地の人は川を干して手づかみしている。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
そこらの牛屋で、
東雲
(
しののめ
)
のストライキを怒鳴りちらして、
女義太夫
(
たれぎだ
)
の尻でも追っ駆け廻している書生さんたちには、頼まれてもこの辛抱はできまい。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
あるいは
大海原
(
おおうなばら
)
の波の上に、あるいは
細渓川
(
ほそたにかわ
)
の流れの
潯
(
ほとり
)
に、つきぬ
睦語
(
むつごと
)
かたり明かし、
東雲
(
しののめ
)
の空に驚きては天に帰りぬ。
星
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
古代においては日月蝕を不吉と見たのである。次に九節の「
東雲
(
しののめ
)
の
眼蓋
(
まぶた
)
」は東雲の美婦人の起床に
譬
(
たと
)
えての語である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
徘徊
(
はいかい
)
する
引四時過
(
ひけよつすぎ
)
の寂しさか(『絵本江戸土産』巻六)然らずば
仲之町
(
なかのちょう
)
の
木戸口
(
きどぐち
)
はあたかも山間の
関所
(
せきしょ
)
の如く見ゆる早朝の光景(江戸百景の
中
(
うち
)
廓中
東雲
(
しののめ
)
)
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ほどなく
東雲
(
しののめ
)
の
巷
(
ちまた
)
に紛れさった五梃駕籠……火事装束の武士たちの正体、ならびにそのこころざしであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
真夏がくると朝の四時半には、もう
敦光
(
とんこう
)
が鮮やかに、きらめくのである。そこに
東雲
(
しののめ
)
のたなびくころ、幼い私は父に連れられて、利根の流れへ鮎釣りに行った。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
現在はすでに学問の朗らかな
東雲
(
しののめ
)
が
白
(
しら
)
みはじめた。過去の常人の生活に関しても、多くの新しい事実が発見せられている。時代の知識は増加しているのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
晴るる、暮れる、真黒い森の
背
(
うしろ
)
ぽうっと
東雲
(
しののめ
)
に上る夕月、風なきに散る
白銀
(
しろがね
)
の雫ほたほた。闇は墨画の蘆に水、ちらりちらりほの見えて、其処らじゅう蛍ぐさい。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
馬は耳へ水を入れられると死ぬ、お前は折を狙って『
東雲
(
しののめ
)
』の耳に水を入れ、馬のお上手でない相沢様を落馬させて、御墨付の文箱を
摩
(
す
)
り替えるつもりだったろう。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
痩せた
骸骨
(
むくろ
)
を並べてゐる畝や、拔き殘された大根の
剛
(
こは
)
ばつた葉の上に、
東雲
(
しののめ
)
の光が白々と宿つて居た。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
同じ月に
中江兆民
(
なかえちょうみん
)
が静岡を過ぎて保を
訪
(
と
)
うた。兆民は前年の暮に保安条例に
依
(
よ
)
って東京を
逐
(
お
)
われ、大阪
東雲
(
しののめ
)
新聞社の聘に応じて西下する途次、静岡には来たのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
東雲
(
しののめ
)
の光が雪の障子にぽうっと白く
映
(
さ
)
して、大窓の夜は明けた。有明の月が山の端から青白い顔をして覗いている、私の体を
藻抜
(
もぬ
)
け出た魂のかけらではないかと思った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
駅のプラットフォームのまだどこやら寒く重たい軒のかなたに
東雲
(
しののめ
)
が見えた。東京の夜があけて間もないらしいボロ円タクで走っているうちにだんだん家が気になりだした。
一九三二年の春
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
春の
東雲
(
しののめ
)
のふるえる薄明に、小鳥が木の間で、わけのありそうな調子でささやいている時、諸君は彼らがそのつれあいに花のことを語っているのだと感じたことはありませんか。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
加ふるに
東雲
(
しののめ
)
のむらさきと、夕映のくれなゐとは、波を彩り、
沙
(
いさご
)
にうつり、もろもろの麗はしき自然の配色は恣に変幻するがごときも、しかも
斎
(
つつま
)
しくこれを渚の弧線の上に繋ぎて
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
夜の大江戸を徐々にあとへ残して、
青梅街道口
(
おうめかいどうぐち
)
へさしかかったのが、春の
東雲
(
しののめ
)
——、西へ西へと一路街道を急がせて、
堀
(
ほり
)
の
内
(
うち
)
にかかったのが、目にまぶしやかな青葉の朝の五ツ下がり。
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
足も地に着かずして中天にぶらさがりながら、
辛
(
かろ
)
うじて
東雲
(
しののめ
)
新聞社に入る。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
東の空が明るくなって横雲へ
東雲
(
しののめ
)
の色が付き寒い朝風が吹き出した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのイの一番に大切な信心の木履の音もしない享楽の街の
東雲
(
しののめ
)
。
大阪の朝
(新字新仮名)
/
安西冬衛
(著)
はや
東雲
(
しののめ
)
あくる楢の林に
決闘
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
東雲
(
しののめ
)
の
煤
(
すす
)
ふる中や下の関
病牀雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
春やきぬらむ
東雲
(
しののめ
)
の
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
げに
東雲
(
しののめ
)
の近づけば
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
東雲
(
しののめ
)
色ガラスの街
(新字旧仮名)
/
尾形亀之助
(著)
東雲
(
しののめ
)
の朝帰りに、思わず聞いた、「こんな
身体
(
からだ
)
で、墓詣りをしてもいいだろうか。」
遊女
(
おいらん
)
が、「仏様でしたら差支えござんすまい。御両親。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
東雲
(
しののめ
)
は
紅
(
くれない
)
をみなぎらしてきた。手をかざして小山のふもとを見れば、長蛇が山を巻いたように、無数の陣地陣地をつないで霞も黒いばかりな大軍。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東雲
(
しののめ
)
橋、洲崎、
葛西
(
かさい
)
橋、小松川と東京湾へ流れ出す川口は、日曜ともなると、女子供、家族連れで、
陸
(
おか
)
張りが何千人というくらいたいへんな人出になる。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
今朝の
別離
(
わかれ
)
の辛さに、平田の帯を押えて伏し沈んでいたのも見える。わる止めせずともと
東雲
(
しののめ
)
の
室
(
へや
)
で二上り新内を
唄
(
うた
)
ッたのも、今耳に聞いているようである。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
詩人はこの夢を思い起こすや、
跳
(
は
)
ね起きて
東雲
(
しののめ
)
の空ようやく白きに、
独
(
ひと
)
り家を
出
(
い
)
で丘に登りぬ。
星
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
幸い、主人、大場石見は大の馬好き、近頃手に入れた「
東雲
(
しののめ
)
」という名馬、南部産
八寸
(
やき
)
に余る
逸物
(
いちもつ
)
に、
厩仲間
(
うまやちゅうげん
)
の黒助という、若い威勢の
好
(
い
)
い男を付けて貸してくれました。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
兵馬と
東雲
(
しののめ
)
の第二局目の碁は、危ないところで兵馬が五目の勝ちとなりました。その時分に
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
はじめて圓朝は、この答案としての自分の行く手に薄白い
東雲
(
しののめ
)
の空のいろを感じた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
是などもまた確かに
群
(
む
)
れて旅行く女たちの生活であって、静かにその歌の声に聴き入った人々の背後には、秋の夜明けの
白々
(
しらじら
)
とした
東雲
(
しののめ
)
が、もううそ寒く近よって来ている感じがする。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それより徒歩して
東雲
(
しののめ
)
新聞社に至らんとせるに、
数万
(
すまん
)
の見物人および出迎人にて、さしもに広き梅田
停車場
(
ステーション
)
もほとんど
立錐
(
りっすい
)
の地を余さず、妾らも重井、葉石らと共に一団となりて人々に
擁
(
よう
)
せられ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
二人を包む
深沈
(
しんちん
)
たる夜気に、はや
東雲
(
しののめ
)
の色が動いている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
この夜は夜すがら寐もやらで
東雲
(
しののめ
)
に出でゆきぬ。
『聊斎志異』より
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
やがて、
東雲
(
しののめ
)
がうすぼんやりと、淡色を彩った。
純情狸
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
夜
(
よ
)
は
紅
(
くれない
)
の
東雲
(
しののめ
)
かけて明け行けり。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
東雲
(
しののめ
)
の光が白々と宿つて居た。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
東雲
(
しののめ
)
ちかい汽車の寢臺で
別れ:旅の記念として、室生犀星に
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
春やきぬらん
東雲
(
しののめ
)
の
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
鶏鳴
(
けいめい
)
暁を報ずる時、夜のさまが
東雲
(
しののめ
)
にうつり行く
状
(
さま
)
は、いつもこれに変らぬのであるけれども、月さえやや
照
(
てら
)
し
初
(
そ
)
めたほどの宵の内に何事ぞ。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
満城、その夜は
篝
(
かがり
)
を
焚
(
た
)
き、未明の発向というので、腰に兵粮をつけ馬にも
飼葉
(
かいば
)
を与え、陣々には少量の
門出酒
(
かどでざけ
)
も配られて、
東雲
(
しののめ
)
の空を待っていた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの時のように、
東雲
(
しののめ
)
と二人で碁を打っているだけでは納まらなくなりました。東雲が勤め気を離れて兵馬を可愛がるようになると、兵馬の心が漸く熱くなってゆきました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“東雲”の意味
《名詞》
(トウウン)東の空の雲。
(しののめ)明け方。
(出典:Wiktionary)
東
常用漢字
小2
部首:⽊
8画
雲
常用漢字
小2
部首:⾬
12画
“東雲”で始まる語句
東雲時
東雲頃
東雲御覧