暖味あたゝかみ)” の例文
『まだきたい。御身おみさくはだなめらかぢやらう。が、にくはあるか、れて暖味あたゝかみがあるか、木像もくざうつめたうないか。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それ多少たせうまつて、みきすときなぞは、みきからくびすと、土手どてうへあき暖味あたゝかみながめられるやう心持こゝろもちがする。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
田圃たんぼはんはだらけたはなちて嫩葉わかばにはまだすこひまがあるので手持てもちなささうつて季節きせつである。わづかうるほひをふくんであしそこ暖味あたゝかみかんずる。たがやひとはまだたぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はなしんだ小供こどもの事をとう/\はなれて仕舞つた。さうして、た時よりは幾分か空気に暖味あたゝかみ出来できた。平岡は久し振りに一杯飲まうと云ひした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして寒冷ひやゝかなうちにもほつかりと暖味あたゝかみつたやうにあかるくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ところ今日けふかへりをけてつてると、其所そこ兄弟きやうだいで、べつ御世辭おせじ使つかはないうちに、何處どこ暖味あたゝかみのある仕打しうちえるので、ついひたいこと後廻あとまはしにして、一所いつしよになんぞ這入はいつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
與吉よきち遠慮ゑんりよもなくぜんむかつたのである。卯平うへい飯臺はんだいふたけてたが暖味あたゝかみがないのでかれ躊躇ちうちよした。茶釜ちやがまふたをとつてたが、ふたうらからはだら/\としたゝりがれてわづかに水蒸氣ゆげつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
馴々なれ/\しいのとは違ふ。はじめからふる相識しりあひなのである。同時に女はにくゆたかでないほゝを動かしてにこりと笑つた。蒼白いうちに、なつかしい暖味あたゝかみが出来た。三四郎の足は自然しぜんと部屋のうちへ這入つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ仕立卸したておろしの紡績織ばうせきおり脊中せなかへ、自然じねんんで光線くわうせん暖味あたゝかみを、襯衣しやつしたむさぼるほどあぢはひながら、おもておとくともなくいてゐたが、きふおもしたやうに、障子越しやうじごしの細君さいくんんで
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
帯の感じには暖味あたゝかみがある。黄を含んでゐるためだらう。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)