挙動きょどう)” の例文
旧字:擧動
その群集ぐんしゅうのなかに立って、かれの挙動きょどう凝視ぎょうししているふたりの浪人ろうにん——深編笠ふかあみがさまゆをかくした者の半身はんしんすがたがまじって見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあとで例の路次からいまにも出て来るであろう細田氏の挙動きょどうを少しでも目から放さないようにしようと思いました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
へいそなにごともドノバンにゆずっている富士男も、ドノバンの幼年者に対する無慈悲むじひ挙動きょどうを見ると、心の底から憤怒ふんぬのほのおがもえあがった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
かかる大切たいせつの場合にのぞんでは兵禍へいかは恐るるにらず、天下後世国を立てて外に交わらんとする者は、努〻ゆめゆめわが維新いしん挙動きょどうを学んで権道けんどうくべからず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
らに奇怪きかいなりしは仏国公使の挙動きょどうにして本来ほんらいその事件には全く関係かんけいなきにかかわらず、公然書面を政府に差出さしいだ
どんなはなしをするのであろうか、彼処かしこっても処方書しょほうがきしめさぬではいかと、彼方あっちでも、此方こっちでも、かれ近頃ちかごろなる挙動きょどう評判ひょうばん持切もちきっている始末しまつ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
通信科の兵隊を集めての故もない制裁せいさいの場における、彼の偏執的な挙動きょどうを、私は瞼の裏にまざまざと思い浮べていた。それは、二三日前のことであった——
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
というのは、そんな挙動きょどうせて老人ろうじんわたし警戒けいかいしたら、という心配しんぱいがあつたからです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
自分はわれ知らず立って、心の狼狽ろうばいを見せまいとした。が、どぎまぎした自分の挙動きょどうが、われながらおかしかった。やや酒気をおびた金蔵じいは、みょうな笑いようをして自分を見つめながら
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
小娘こむすめ挙動きょどう、だんだんと合点がてんがいかぬ。あるいは、野かせぎの土賊どぞくばらが、手先に使っている者かも知れぬ、も一ど、ひッとらえてただしてみろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ソコで三百年の幕府が潰れたと云えば、れは日本社会の大変革で、随分ずいぶん私の一身も始めて夢がめて、藩庁に対する挙動きょどうも改まらなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
外人の眼を以てるときは、戊辰ぼしんにおける薩長人さっちょうじん挙動きょどうと十年における西郷の挙動と何のえらむところあらんや。
そこでもかれ宿やどからずに、終日しゅうじつ相変あいかわらず長椅子ながいすうえころがり、相変あいかわらずとも挙動きょどう愛想あいそうかしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
検事はさっきからこの家の主人公である針目博士か入ってきたことを知っていたが、博士がどんな挙動きょどうをするかをしばらく見定めたいと思ったので、今まで知らぬ顔をしていたのである。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はちみずがあつただけでは、まん一の場合ばあいひとあやしまれるとがついて、きゅう金魚きんぎょれることにしたが、島本医院しまもといいんからは、まえからして不思議ふしぎおもい、老人ろうじん挙動きょどうながめていたものとかんがえられる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
氏の挙動きょどうも政府の処分しょぶんも共に天下の一美談びだんにして間然かんぜんすべからずといえども、氏が放免ほうめんのちに更に青雲せいうんの志を起し、新政府のちょうに立つの一段に至りては
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
疑心暗鬼ぎしんあんきとでもいおうか、場合がばあいなので、忍剣には、どうも今の六部の挙動きょどうがあやしく思えてならない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
形勢けいせいきゅうなるは、幕末の時にしてらに急なるその内乱ないらん危急ききゅうの場合に際し、外国人の挙動きょどうは如何というに、はなは平気へいきにして干渉かんしょうなどの様子ようすなきのみならず
椋島技師は、博士の挙動きょどうを静かに注目している。博士は今、何かしゃべっているらしく口を開閉している。やがて一礼をして席についた。博士の右手が、スルリと伸びて、衣嚢ポケットの時計にかかった。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ドクトルは見物けんぶつもし、あるいてもってもんでもたのであるが、ただもう毎日まいにちミハイル、アウエリヤヌイチの挙動きょどうよわらされ、それがはないて、いやで、いやでならぬので、どうかして一にちでも
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こうとがめたが、啓之助の挙動きょどうは、むしろ、お米が不意に来たよろこびに、落ちつかないほどなのである。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豊臣秀吉とよとみひでよしが織田信孝のぶたかの賊臣桑田彦右衛門くわたひこえもん挙動きょどうよろこばず、不忠不義者、世の見懲みごらしにせよとて、これを信考の墓前ぼぜんはりつけにしたるがごとき、是等これらの事例は実に枚挙まいきょいとまあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とにかく、怪しい奴と睨みましたので、ツカツカと側へ寄って、じッと挙動きょどうをみつめておりますと、格別、あわてて逃げるぶりもなく、そのまま山を下りて行く様子。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この室の位置構造、またその茶道方の挙動きょどうで、官兵衛はすぐこれはと直感的に不審を抱いたので
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小田原の者どもは、人の贈り物を、目にだけ見て、味わいもせず、かかるなめげの挙動きょどうをなすことよ。かしこの政事もおよそこれに似たるものか。よし、よし……何もいうな」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)