トップ
>
惚
>
ぼ
ふりがな文庫
“
惚
(
ぼ
)” の例文
上気せる美くしき梅子のあどけなき
面
(
かほ
)
を銀子は女ながらに
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと眺め「私が悪るかつたの、梅子さん、
何卒
(
どうぞ
)
聴かして下ださいな」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「いくらうろたえたって、暗殺者になるほど私は自分を
軽蔑
(
けいべつ
)
しやあしない、ことに貴方を斬るなんて、うぬ
惚
(
ぼ
)
れてはいけませんよ、原田さん」
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三蔵は、ゾクとしてすぐ体じゅうが
火照
(
ほて
)
ってくるような経験のない昂奮につつまれて、これはものになる、とうぬ
惚
(
ぼ
)
れた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕
(
ぼく
)
は
僕
(
ぼく
)
で名人
决
(
けつ
)
定
戰
(
せん
)
の
觀戰記
(
くわんせんき
)
を書き
棋
(
き
)
力に相當加ふるものありとうぬ
惚
(
ぼ
)
れて、共に
張
(
は
)
り切つてゐるのだからたまらない。
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
丈
(
せい
)
はスラリとして
痩型
(
やせぎす
)
の色の白い、張りのいい細目の男らしい、鼻の高い、私の眼からも
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れとするような、
嫉
(
ねた
)
ましいほどの美男子であった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
▼ もっと見る
きっと
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れするように
美
(
うつく
)
しくなるであろうと、お
世辞
(
せじ
)
にほめて
頂
(
いただ
)
いた、あの
夢
(
ゆめ
)
のような
日
(
ひ
)
のことが、いまだにはっきり
眼
(
め
)
に
残
(
のこ
)
って……
吉
(
きち
)
ちゃん。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「イヤになるなア、金なんざ百も欲しくねえが、江戸の良い娘がベタ
惚
(
ぼ
)
れといふ
卦
(
け
)
が出ませんかね。
塵溜
(
ごみだめ
)
をあさつてゐる
雄鷄
(
をんどり
)
の生れ變りで結構だから」
銭形平次捕物控:304 嫁の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「さあ、出来上った。——まあ貴方、よく似合うのネ。ほんとに
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れするようないい女になってよ、まあ——」
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
勿論、お嬢さんの持って居る肉体の美は、
此
(
こ
)
れから二三十年も過ぎて、
彼
(
か
)
の
女
(
じょ
)
が
老
(
お
)
い
惚
(
ぼ
)
れて来ると同時に、
何処
(
いずこ
)
ともなく消え
失
(
うせ
)
てしまうには違いない。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その
後
(
ご
)
彼らの社会に占め得た地位と、彼らとは背中合せに進んで行く僕の性格が、二重に実行の便宜を奪って、ただ
惚
(
ぼ
)
けかかった
空
(
むな
)
しい義理の
抜殻
(
ぬけがら
)
を
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
蓮
(
はす
)
の浮気は
一寸
(
ちょいと
)
惚
(
ぼ
)
れ」という時は未だ「いき」の領域にいた。「野暮な事ぢやが
比翼紋
(
ひよくもん
)
、離れぬ
中
(
なか
)
」となった時には既に「いき」の境地を遠く去っている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
しかもそれを当事者自身は何か英雄的行為のようにうぬ
惚
(
ぼ
)
れ切ってするのですからね。けれどもわたしの恋愛小説には少しもそう云う悪影響を普及する傾向はありません。
或恋愛小説
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうして
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと嫁の顔を
眺
(
なが
)
める仕末なので、ぶん殴るわけにもいかず、さりとて、肥桶をかついで遊びに出掛けるのも馬鹿々々しく思われ、腹いせに銭湯に出かけて
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
うぬ
惚
(
ぼ
)
れの強いかの女はまた、
莫迦
(
ばか
)
莫迦しくひがみ
易
(
やす
)
くもある。だが結局
人夫
(
にんぷ
)
は人夫の
稼業
(
かぎょう
)
から預けられた
土塊
(
つちくれ
)
や石柱を
抱
(
かか
)
え、それが
彼等
(
かれら
)
の眼の中に
一
(
いっ
)
ぱいつまっているのだ。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
惚
(
ぼ
)
けてるんかいな。お前んとこへ泊るんや。……かどに書いて貼つたるやないか。」
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
このように紅緑白の三色をカッキリと染めるのが実に美しいと、温泉宿の主人は、さも
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れとするように話をしてくれる、私は親友水彩画家、大下藤次郎氏が、ある年七月の初めに
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
チョット
惚
(
ぼ
)
れでもいいから居ないかと聞いてみたが、愛子はただポカンとして頭を左右に振るばっかりだから、しまいにはこっちが負けてしまった。頭の悪い奴はコンナ場合全く苦手だよ。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
女はこう云って
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れする声を出して笑った。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
つまり、これがひと目
惚
(
ぼ
)
れという奴か。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
惚
(
ぼ
)
かされてしまいそうだ。11470
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
うぬ
惚
(
ぼ
)
るる友に
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
横に、笛を構えて、
歌口
(
うたくち
)
を
潤
(
しめ
)
しているお菊ちゃんの形が、優雅で、
厳粛
(
げんしゅく
)
で、斧四郎も露八も芸妓たちも、
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと
眸
(
ひとみ
)
を彼女の顔にあつめていた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おいらァ
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れ
見
(
み
)
とれてるんだ。
顔
(
かお
)
といい、
姿
(
すがた
)
といい、お
前
(
まえ
)
ほどの
佳
(
い
)
い
女
(
おんな
)
は
江戸中
(
えどじゅう
)
探
(
さが
)
してもなかろうッて、
師匠
(
ししょう
)
はいつも
口癖
(
くちぐせ
)
のようにいってなさるぜ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
乃公はそこでいつも勇ましい自分の顔を
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと見つめるのだった。ヴィクトル・エマヌエル第一世はこんな顔をしていたように思うなどと、私は
反身
(
そりみ
)
になった。
不思議なる空間断層
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それを自分だけ特に好かれている、と思ったのは、うぬ
惚
(
ぼ
)
れだ、こう思って彼は唇を
歪
(
ゆが
)
めた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
石井依右衛門は一と目
惚
(
ぼ
)
れしたのも無理はありませんや、場所は目黒の林の奥の尼寺、大夕立で薄暗くなって居るところへ、青々と
剃
(
そ
)
った若い尼さんが、極り悪そうに、渋い茶を
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
友禅の
袖
(
そで
)
の
蔭
(
かげ
)
から、お白粉を塗った手をつき出して見ると、強い
頑丈
(
がんじょう
)
な線が闇の中に消えて、白くふっくらと柔かに浮き出ている。私は自分で自分の手の美しさに
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れとした。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
平家の
代
(
よ
)
でも源氏の代でも、同じように
芋
(
いも
)
を食うては、同じように子を生んでいる。天下の役人は役人がいぬと、天下も亡ぶように思っているが、それは役人のうぬ
惚
(
ぼ
)
れだけじゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしまた
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れとするような
因果応報
(
いんがおうほう
)
の世の中でもあると思った。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
恋敵
(
こいがたき
)
とするには余りに相手が不足すぎる。うぬ
惚
(
ぼ
)
れでなく、どう公平に
較
(
くら
)
べても、自分を見代えて、この猿殿と約束を交わす物好きな女性はよもあるまい。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今日は二人とも久方ぶりで
風呂
(
ふろ
)
を浴び、加代は貧しいながら髪化粧をしている。乙女十九、幸い薄く育ったが備わった品位と美しさは、兄の眼にも
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れするくらいだった。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
平家
(
へいけ
)
は
高平太
(
たかへいだ
)
以下皆悪人、こちらは
大納言
(
だいなごん
)
以下皆善人、——康頼はこう思うている。そのうぬ
惚
(
ぼ
)
れがためにならぬ。またさっきも云うた通り、我々凡夫は誰も彼も、皆高平太と同様なのじゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は、数百円もしそうな
漆黒
(
しっこく
)
のサラブレッド種の
鞍
(
くら
)
にぎゅっと乗りこんでいた。その毛の
艶
(
つや
)
、乗馬靴の艶、鞭の艶、トム公は
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと見入ってしまった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金色に
鱗
(
うろこ
)
の光るその獲物をさも惜しそうに、また自慢そうに、そして私の購買欲を
唆
(
そそ
)
るように、
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと眺めながら云った、「こんなえっけえ金鮒はめったに捕れねえからな」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お前は風に吹かれてゐる
葦
(
あし
)
だ。空模様はいつ何時変るかも知れない。唯しつかり踏んばつてゐろ。それはお前自身の為だ。同時に又お前の子供たちの為だ。うぬ
惚
(
ぼ
)
れるな。同時に卑屈にもなるな。
闇中問答
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
金色に
鱗
(
うろこ
)
の光るその獲物をさも惜しそうに、また自慢そうに、そして私の購買欲を
唆
(
そそ
)
るように、
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れと
眺
(
なが
)
めながら云った、「こんなえっけえ金鮒はめったに捕れねえからな」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かれのうぬ
惚
(
ぼ
)
れは、そんなことで、老いてはいない。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“惚”を含む語句
恍惚
自惚
己惚
見惚
岡惚
恍惚境
活惚
寝惚
聞惚
惚々
空惚
寝惚眼
寝惚声
惚込
寐惚
自惚家
寢惚
惚合
相惚
男惚
...