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恰度
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ちょうど
ふりがな文庫
“
恰度
(
ちょうど
)” の例文
恰度
(
ちょうど
)
前代の社交が吉原であったように、明治の政府と政商との会合は多く新橋、赤坂辺の、
花柳明暗
(
かりゅうめいあん
)
の地に集まったからでもあろう。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
恰度
(
ちょうど
)
日曜なので、気軽に僕が応対に出たものだ。すると詰襟の洋服を着た五十過ぎの年輩の、尤もらしい顔のおっさんが来客である。
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
環境が悪ければ、いかなる名霊媒だって施す術がない。それは
恰度
(
ちょうど
)
空中放電その他の場合に、ラジオに故障を生ずると同様であろう。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
「なる程、備前岡山は中国での京の都。名もそのままの
東山
(
ひがしやま
)
あり。この
朝日川
(
あさひがわ
)
が
恰度
(
ちょうど
)
加茂川
(
かもがわ
)
。
京橋
(
きょうばし
)
が
四条
(
しじょう
)
の
大橋
(
おおはし
)
という見立じゃな」
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
山のどん底から山の下の平野の空へ向って鉄路が上向きに登っているから、
恰度
(
ちょうど
)
大砲の中から打出されたような心持がして面白い。
猫の穴掘り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
その時である、私は川下の方の空に、
恰度
(
ちょうど
)
川の中ほどにあたって、
物凄
(
ものすご
)
い透明な空気の層が揺れながら移動して来るのに気づいた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
咽喉
(
のど
)
一杯の声を張り上げて——
恰度
(
ちょうど
)
、小学校の生徒が唱歌の試験でも受けているような具合に——歌う様子が僕達には珍しかった。
赤げっと 支那あちこち
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今思えば夫が
恰度
(
ちょうど
)
此通りの縮れッ毛だ(大)夫は奇妙だナ(谷)サア博賭宿と云い縮れッ毛の女と云い此二ツ揃ッた所は外に無い
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
別にこれという意味はなかったのだけれど、
恰度
(
ちょうど
)
その方向が、帰り
路
(
みち
)
になっていたせいもあり、又、彼の「
閑
(
ひま
)
」がそうさせたのだ。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そこは
恰度
(
ちょうど
)
玉乗小屋の前で、すれちがいに行く女がいた。紛うかたもない例の女のすらりとした姿で、頸首もすっきり白く浮いていた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ちょいちょい遊びにやってくる、私も仕事の
相間
(
あいま
)
の
退窟
(
たいくつ
)
わすれに、少なからず
可愛
(
かあい
)
がってやった、頃は
恰度
(
ちょうど
)
、秋の
初旬
(
はじめ
)
九月頃だったろう
闥の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
袖や
裾
(
すそ
)
のあたりが、
恰度
(
ちょうど
)
蝉
(
せみ
)
の
衣
(
ころも
)
のように、雪明りに
透
(
す
)
いて見えて、それを通して、庭の
梧桐
(
あおぎり
)
や
金目
(
かなめ
)
などの木立がボーッと見えるのである
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
「ナニ、雪之丞の? へえ、あの名うて
艶事師
(
ぬれごとし
)
の? いえ、なに、これが
恰度
(
ちょうど
)
、その、雪之丞さんの、宿屋でごぜえますよ。へ、へ、へ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
其処
(
そこ
)
へ順序もなく坐り込んで講義を聞くのであったが、輪講の時などは
恰度
(
ちょうど
)
カルタでも取る様な
工合
(
ぐあい
)
にしてやったものである。
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
次の人の膝へ手を置くという風にして、
段々
(
だんだん
)
順を廻すと、
恰度
(
ちょうど
)
その内に一人返事をしないで座っている人が一人増えるそうで。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あなたの言ったことはきれぎれで
恰度
(
ちょうど
)
「いろは」の御本を読むようだったので、荒木夫人は
呑込
(
のみこ
)
めなかったかもしれなかった。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
ところが、アカサタナハマヤラワンと並べて見ると、その数は
恰度
(
ちょうど
)
十一だ。こいつは偶然かも知れないが、まあやって見よう。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然し、それは
恰度
(
ちょうど
)
線香花火のようなもので、葬式がすんで終うと、妻もなく子もない先生の後は、文字通り火の消えたように淋しくなった。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それだのに、
恰度
(
ちょうど
)
あの萩の花を少女が髪の上に翳して見せたときのやうに、私の心は、明かにその朱色で描かれた牡丹が不満でならなかった…
挿頭花
(新字新仮名)
/
津村信夫
(著)
それは
恰度
(
ちょうど
)
菓子造りの家の者が菓子に飽き飽きしながら、絶えず糖分を摂取せずにはいられないようなものではなかろうか。
高原の太陽
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それでも塩水
選
(
せん
)
をかけたので
恰度
(
ちょうど
)
六
斗
(
と
)
あったから本田の一町一
反
(
たん
)
分には
充分
(
じゅうぶん
)
だろう。とにかく
僕
(
ぼく
)
は今日半日で
大丈夫
(
だいじょうぶ
)
五十円の
仕事
(
しごと
)
はした
訳
(
わけ
)
だ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
読んでいる物語の恐ろしい場面が、
恰度
(
ちょうど
)
そんな暴風雨の晩であったのと、ひとつには風のためにその止め金が外れそうになっていたからである。
小曲
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
公転しなくてもいいことになるのだ。地球は宇宙のうちならどこへでも、
恰度
(
ちょうど
)
円タクを
操
(
あやつ
)
るように、思うところへ動いてゆけるようになるだろう
遊星植民説
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其処では、
恰度
(
ちょうど
)
イプセンのノラが、クログスタットの手紙を夫のヘルメルに見せまいとする必死の努力と同じ様な努力が、繰返されたに違いない。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
それは広巳が八幡祠頭で見た
鵜
(
う
)
そっくりの鳥であった。広巳はぞっとして女のほうを見た。女は小さくなって
恰度
(
ちょうど
)
内裏雛
(
だいりびな
)
のような姿を見せていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
きっぱりと黙殺することに腹を決めたのだが、
恰度
(
ちょうど
)
今日仕事の机にむかって坐った時、ふと、返事でも書いてみるかという気になってこれを書いた。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
現場へ着いた時には、
恰度
(
ちょうど
)
最後の家に火がうつり、燃え上った、これは誠に目覚しく、且つ光輝に充ちた光景だった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
車は交叉点を横切ると、速力を緩急する
毎
(
たび
)
に乗客を投付けたり、
錐揉
(
きりも
)
みの様にしたりしては走り続けた。
恰度
(
ちょうど
)
険阻
(
けんそ
)
を行く様に波打ったり傾いたりした。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
西城川、馬洗川、吉田川という三つの支流がひとつに合って郷の川という中国一の大河となるのが
恰度
(
ちょうど
)
三次なのだ。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
私が訪れた夜は
恰度
(
ちょうど
)
彼樹庵は、見すぼらしい衣を身に纏い、
天蓋
(
てんがい
)
を被った蒼古な
虚無僧
(
こむそう
)
のいでたちで、右手に一管の笛、懐ろにウィスキイを忍ばせつつ
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
恰度
(
ちょうど
)
旧劇の女形が途方にくれたときのしぐさにやるあのとおりの片足をひいた裾さばきでひろ子の方を見た。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
恰度
(
ちょうど
)
、家に来る大きい生徒位にしか見えませんでした。それから下に降りて用を足して、六畳と八畳の電燈をつけて見ましたが、何も変った事はありません。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それじゃ、全く私の声だったかもしれない、というのは、その日は
恰度
(
ちょうど
)
、○○の大戦争があった日なので
感応
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
だが私に取っては、思うままに書くことの出来ないのは、もっと
辛
(
つら
)
かったのだ。そして暮れまでの約一カ月間に、三百枚計画の長篇小説を
恰度
(
ちょうど
)
半分書き上げた。
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
恰度
(
ちょうど
)
旧の正月の朝、朝日がうらうらとお宮の森の一番高い
檜
(
ひのき
)
の
梢
(
こずえ
)
を
照
(
てら
)
し出すころ、恰度天から与えられた生命を終って枯れる木のように、静かに死んでいった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
恰度
(
ちょうど
)
いい場所だ。村にも遠いし、人もいないし——彼奴は可哀そうだが——今、もし、彼奴を討って江戸へ戻らなかったら、俺が人から可哀そうがられるだけだ。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
食堂の湯沸かし婆さんが、眼を赤くしながら、みんなに
喋
(
しゃ
)
べっていた。
恰度
(
ちょうど
)
、ベルが鳴りはじめた。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
恰度
(
ちょうど
)
人間の丈ほどの
茅萱
(
ちがや
)
其他の雑草が両方から生い茂って、前途をふさいでいるから、ステッキや洋傘で草を分け分け足では途を探って、一歩一歩注意して上って行く。
武甲山に登る
(新字新仮名)
/
河井酔茗
(著)
始めのうちは「息子の嫁に
恰度
(
ちょうど
)
手頃だ」などと息子をとんだ犠牲者にしてせつせと通つてゐた。
市井閑談
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
其の謀略を用いる点に於ては家康よりはずっと
辛辣
(
しんらつ
)
である。厳島合戦の時、
恰度
(
ちょうど
)
五十二歳の分別盛りである。長子隆元三十二歳、次子
吉川
(
きっかわ
)
元春二十三歳、三子隆景二十二歳。
厳島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふと、夜中に目を覚すと、自分ともう一人の友達の寝ている
間
(
ま
)
の、天井の上の方から、ボー……と白いような光りが、しかも
恰度
(
ちょうど
)
人間の身の
丈
(
た
)
けくらいな長さに射すのが目に見ゆる。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
と云って、必ずしもそれは、緋毛氈の反射の所以ばかりではなかったであろう。
恰度
(
ちょうど
)
その白と紅の境いが、額の辺りに落ちているので、お筆の顔は、その二段の色に染め分けられていた。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「実はそれについちゃ、この間から、話した方がいいか、話さぬ方がおめえの為か、おれも、迷っていたところなのだが……、そういうならば
恰度
(
ちょうど
)
いい折、九兵衛、念のためにそこらを……」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
独乙
(
ドイツ
)
から、あこがれの
瑞士
(
スイス
)
へ入って、
恰度
(
ちょうど
)
倫敦
(
ロンドン
)
から
巴里
(
パリ
)
を経て来た近藤茂吉氏と、インタアラーケンのベルネルホッフという宿で落ち合い、登山の相談をして、七月二十九日には、準備を整え
「続スウィス日記」発掘の始末:附「スウィス日記」の由来
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
砂山が急に
崩
(
ほ
)
げて草の根で
僅
(
わずか
)
にそれを
支
(
ささ
)
え、
其
(
その
)
下
(
した
)
が
崕
(
がけ
)
のようになって
居
(
い
)
る、其
根方
(
ねかた
)
に座って両足を投げ出すと、背は
後
(
うしろ
)
の砂山に
靠
(
もた
)
れ、右の
臂
(
ひじ
)
は傍らの小高いところに
懸
(
かか
)
り、
恰度
(
ちょうど
)
ソハに
倚
(
よ
)
ったようで
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
這入
(
はい
)
つて左へ突き当つた廊下へ上る扉口と入口を除いた外は、此の九尺に三間の細長い室の三方の壁には面会人の腰をかける為めの幅の狭い木の腰掛けが、
恰度
(
ちょうど
)
、棚のやうな工合に取りつけてあつた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
歩いて東森下町の家まで帰った時が
恰度
(
ちょうど
)
夜の十二時。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
恰度
(
ちょうど
)
いいとこでしたぜ。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
恰度
(
ちょうど
)
取合せた仁丹の容器に付いている鏡をとり出すとよく検死医がするようにそれを口元に近付けて見た、矢張り鏡は曇らない
息を止める男
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
恰度
(
ちょうど
)
日本は、露国との戦争に、連戦連勝の春だったので、草川の家の軒にも、日米の国旗を掲げて、二人は
賑
(
にぎや
)
かな心持ちでいた。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
恰
漢検準1級
部首:⼼
9画
度
常用漢字
小3
部首:⼴
9画
“恰”で始まる語句
恰好
恰
恰幅
恰当
恰腹
恰形
恰服
恰々
恰人
恰好事