こゝろ)” の例文
くりけた大根だいこうごかぬほどおだやかなであつた。おしなぶんけば一枚紙いちまいがみがすやうにこゝろよくなることゝ確信かくしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いな女の斯う云ふ態度の方が、却つて男性の断然たる所置よりも、同情の弾力性を示してゐる点に於て、こゝろよいものと考へてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
述て返濟なし其節も馳走に成しが其後五月節句せつくまへ又三十兩不足に付借用致し度と云ければ四郎右衞門は以前の如くこゝろよくかせしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これを終へてから、私はまだ暫くぐづ/\してゐた。露がりたので花の群はとりわけ甘い香を放つて、非常にあたゝかくなごやかな、こゝろよい夕暮であつた。
いつ賃仕事ちんしごとしてもおそばくらしたはうつぽどこゝろよう御座ございますとすに、馬鹿ばか馬鹿ばか其樣そのやうことかりにもふてはならぬ、よめつた實家さとおやみつぎをするなどゝおもひもらぬこと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日は黄にして軟かく、冷めたけれどもこゝろよき春の風吹く。
春の暗示 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はたけくろつち彼等かれら技巧ぎかう發揮はつきして叮嚀ていねいたがやされゝばがまだそれをさないうちたゞ清潔せいけつこゝろよいかんじをひとこゝろあたへるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さぞ御難儀ごなんぎならん向前むかうまへいひ類商賣るゐしやうばいの事なれば此度に限らず御都合次第何時にても御遠慮なく仰越れよとこゝろよくかしければ三郎兵衞大いによろこ書付かきつけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
誠太郎の注文をいて見ると、相撲が始まつたら、回向院へれて行つて、正面の最上等の所で見物させろといふのであつた。代助はこゝろよく引き受けた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日は黄にして軟かく、冷めたけれどもこゝろよき春の風吹く。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
勘次かんじこゝろよくおつぎにめいじた。おつぎはふる醤油樽しやうゆだるから白漬しろづけらつきやう片口かたくちしておつたのそばすゝめた。勘次かんじは一つつまんでかり/\とかじつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とゞめ此處にてもなほ種々いろ/\に療治せしかば友次郎のやまひは全くこゝろよくなりければ夫よりは忠八と諸倶もろとも所々しよ/\方々はう/″\めぐり敵の行方ゆくへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
話す義務があると思ふからはなすんだから、今日迄の友誼にめんじて、こゝろよく僕に僕の義務をはたさして呉れ給へ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、さうこゝろよく引き受ける気にもならなかつた。何しろ知らない女なんだから、頗る蹰躇ちゅうちょしたにはしたが、断然断わる勇気も出なかつたので、まあい加減な生返事なまへんじをして居た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これを案じ得ない三四郎は、現に遠くから、寂滅じやくめつを文字の上にながめて、夭折の憐れを、三尺のそとに感じたのである。しかも、悲しい筈の所を、こゝろよく眺めて、うつくしく感じたのである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それであによめにはこゝろよい返事へんじさへろくにしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
叔父をぢこゝろよく整理せいりけてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どうぞ」とこゝろよくこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)