ぞく)” の例文
旧字:
築山の草はことごとく金糸線綉墩きんしせんしゅうとんぞくばかりだから、この頃のうそさむにもしおれていない。窓の間には彫花ちょうかかごに、緑色の鸚鵡おうむが飼ってある。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一日毎に新しくのぞみぞくして、一日毎にその望がむなしくなるのである。それが可哀そうでならなかったと、お雪さんはさも深く感じたらしく話した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ほかにいろいろ申上もうしあげたいこともありますが、それはおもわたくし一人ひとり関係かんけいした霊界れいかい秘事ひじぞくしますので、しばらくひかえさせていただくことにいたしましょう。
怪獣はラマという動物でらくだのぞくであるが、らくだほど大きくない。これを飼養しようしてならせばうまの代用になる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
地からいたように、忽然こつねんと、人無村をつきぬけて、ここへかけつけてきた軍勢は、そもいずれの国、いずれの大名だいみょうぞくすものか、あきらかな旗指物はたさしものはないし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
利根山奥のひくところは山毛欅帯にぞくし、たかきは白檜帯に属す、最高なる所は偃松帯にぞくすれども甚だせましとす、之を以て山奥の入口は山の頂上に深緑色の五葉松繁茂はんも
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
清三は田舎の小学校の小さなオルガンで学んだ研究が、なんの役にもたたなかったことをやがて知った。一生懸命で集めた歌曲の譜もまったく徒労とろうぞくしたのである。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
東京とうきやうの或る固執派オルソドキシカー教会けうくわいぞくする女学校ぢよがつかう教師けうし曾我物語そがものがたり挿画さしゑ男女なんによあるを猥褻わいせつ文書ぶんしよなりとんだ感違かんちがひして炉中ろちう投込なげこみしといふ一ツばなし近頃ちかごろ笑止せうしかぎりなれど
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
しゆはあたしにくださらなかつたので、しゆぞくするものつかまへたくなつてたまらない。さてこそ、あたしは、ヷンドオムのから、このロアアルのもりりて幼児をさなごたちをけてた。
ミハイル、アウエリヤヌイチはもとんでいた大地主おおじぬし騎兵隊きへいたいぞくしていたもの、しかるに漸々だんだん身代しんだいってしまって、貧乏びんぼうし、老年ろうねんってから、ついにこの郵便局ゆうびんきょくはいったので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日数にっすうがたってから、そのとりが、いかるがであることもわかりました。なんでも、はとの種族しゅぞくぞくするこのとりは、とりなかでもよく大空おおぞら自由じゆうける、つばさつよとりだということをりました。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
清和属首夏 清和せいわ首夏しゅかぞく
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕の持つてゐる洋綴やうとぢの本に、妙な演劇史が一冊ある。この本は明治十七年一月十六日の出版である。著者は東京府士族、警視庁警視ぞく永井徹ながゐてつと云ふ人である。
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
伊部熊蔵いのべくまぞうはわるい気持がしないようすだ。卜斎の目から見れば、この山目付やまめつけらしいさむらいが、どこの大名だいみょうぞくしている者かぐらいは、腰をかがめた時にわかりきっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そも/\燧山は岩代国にぞく巍峩ぎがとして天にひいで、其麓凹陥おうかんして尾瀬沼をなし、沼の三方は低き山脈を以て囲繞ゐげうせり、翻々たる鳧鴨ふわう捕猟ほりやうの至るなき為め悠々いう/\として水上に飛しやう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ちょうちんに照らしてみると、まぎれもなきジャッカル(やまいぬのぞく)の屍体したいであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
是は正弘が外交の難局に当つて、天下の目をぞくする所となつてゐたからである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うん、ジャガー(アメリカとら)か、クウガル(ひょうのぞく)だろう、どっちにしたところがたいしておそるるにおよばない、さかんにたき火をたけよ、かれらはけっしてたき火を
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし断えたるをいだ功は当然同氏にぞくすべきである。この功は多分中戸川氏自身の予想しなかつたところであらう。しかし功には違ひないから、ついで此処ここ吹聴ふいちやうすることにした。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と、すけを密使として途中から放したのは、それ以前のことにぞくし、従って介が、下赤坂や金剛の峰をうろついていた時よりも、日はあとへもどり、同時にその天地もここで筑紫の一角へ移るとする。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかれ共眼を北方越後にそそぐに一望山脈連亘れんたんし其深奥なる又利根にゆづらざるなり、之を以てはじめてる、上越の国境不明にぞくせしは両国の山谷各深くして、人跡いまだ何れよりもいたる能はざりしにれり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)