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かたま
ふりがな文庫
“
固
(
かたま
)” の例文
勝手へ後姿になるに連れて、僧はのッそり、夜が
固
(
かたま
)
って入ったように、ぬいと縁側から上り込むと、表の六畳は一杯に暗くなった。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは、多分に彼の変態性の欲望が原因したのであったが、職業とする所の趣味道楽が、ひどく
凝
(
こ
)
り
固
(
かたま
)
ったことも一部の
因
(
いん
)
をなしていた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『
何
(
ど
)
うじゃ、
立派
(
りっぱ
)
なお
宮
(
みや
)
であろうが……。これでそなたの
身
(
み
)
も
漸
(
ようや
)
く
固
(
かたま
)
った
訳
(
わけ
)
じゃ。これからは
引越
(
ひっこし
)
騒
(
さわ
)
ぎもないことになる……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
皆んなは、
固
(
かたま
)
って逃げて森のところまで来た。鬼は、やはり眼隠しをさせられて、空地の、石の転っている処に彼方向きになって立っていた。
過ぎた春の記憶
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
表面だけ
固
(
かたま
)
っている雪が、人の重みでくずれ、靴がずしずしめりこんだ。足をかわすたびに、雪に靴を取られそうだった。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
▼ もっと見る
灰神楽の為に灰がすっかり
固
(
かたま
)
って了って、使えなくなったものだから、婆やが別の新しい火鉢と取り替えて置いたのだよ。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は
洋灯
(
ランプ
)
を手に取って、仔細に床の上を検べ始めた。そして怪鳥の立っていたと思われる処から、小さな
銭蘚苔
(
ぜにごけ
)
の
固
(
かたま
)
りが落ちているのをみつけた。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
男の子は男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、
固
(
かたま
)
って縄飛びをしていた。——そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彫りかけて永き日の
入相
(
いりあい
)
の鐘にかなしむ程
凝
(
こ
)
り
固
(
かたま
)
っては、
白雨
(
ゆうだち
)
三条四条の
塵埃
(
ほこり
)
を洗って小石の
面
(
おもて
)
はまだ乾かぬに、空さりげなく澄める月の影宿す
清水
(
しみず
)
に
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
眼を開いたまま眼を
醒
(
さま
)
して、一ところに
固
(
かたま
)
っていた二ひきが
悠揚
(
ゆうよう
)
と連れになったり、離れたりして
遊弋
(
ゆうよく
)
し出す。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして今まで燃えた事のある甘い焔が
悉
(
ことごと
)
く再生して凝り
固
(
かたま
)
った上皮を解かしてしまって燃え立つようだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
皆は
固
(
かたま
)
って歩き出した。誰か「本当にいいかな」と、小声で云っていた。二人程、あやふやに、遅れた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
身につけるものではないが、例えばマイヨオルの彫刻はせいぜい銅か土の
固
(
かたま
)
りであり、「
信貴山縁起
(
しぎさんえんぎ
)
」は一巻の長い紙であり、名工の
茶匙
(
ちゃさじ
)
は一片の竹であるに過ぎない。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
小柄な、真剣な、力強い、負けじ魂の
固
(
かたま
)
りのような人です。そうして蒼白く冷笑しているんです。
挿絵と闘った話
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
菊五郎吉右衛門も、今と大差なしで
固
(
かたま
)
ってしまうだろうし、歌舞伎座幹部連もいずれも年配で、先が見えている、大器晩成と
顧客
(
ひいき
)
がいう栄三郎もチト怪しいものである。
当今の劇壇をこのままに
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
手置の
宜
(
よろし
)
からぬ横町、不性なる裏通、屋敷町の小路などの氷れる雪の
九十九折
(
つづらをり
)
、
或
(
ある
)
は
捏返
(
こねかへ
)
せし
汁粉
(
しるこ
)
の海の、差掛りて難儀を
極
(
きは
)
むるとは知らず、見渡す
町通
(
まちとほり
)
の
乾々干
(
からからほし
)
に
固
(
かたま
)
れるに
唆
(
そその
)
かされて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「あの梅は未だ種が
固
(
かたま
)
っていない。ああいうのを食った奴は六十パーセントぐらいまで中毒する。皆近所の子供だろう? 十人なら詰り患者が六人来る道理だ。梅は取られても損はないよ」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
表面が融け
固
(
かたま
)
ったのか、あるいは激しい
雪崩
(
なだれ
)
の圧力のためか、氷のように蒼白く光っていて
靴鋲
(
ネール
)
が充分喰込まないような所もあって、ピッケルを持たない二人のために二、三度確保したりする。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
半分ばかり
溶
(
と
)
けてしまって、アルミニュームが流れ出したまま
固
(
かたま
)
っているでしょう。これは何かって言うんですか?
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すべて一心
固
(
かたま
)
りたるほど、強く恐しき者はなきが、鼻が難題を免れむには、こっちよりもそれ相当の難題を吹込みて、これだけのことをしさえすれば
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
始め、彼等は青鬼、赤鬼の中に取り巻かれた亡者のように、漁夫の中に一かたまりに
固
(
かたま
)
っていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
やっと彼方に五六十軒
固
(
かたま
)
った小さな町の頭が見え出した。暗い暗い空にとろとろと真白な
烟
(
けむり
)
の、上っているのは湯屋である。私は立止って、きっとその方を
見遣
(
みや
)
った。……
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
隣の墓を掘り返すことは、土が
固
(
かたま
)
っていたので、少々骨が折れましたが、汗まみれになって、せっせと働く内には、どうやら骨らしいものに掘り当てることが出来ました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この油を筆に
沁
(
し
)
ませて、粉絵具を筆先きで少しずつ、パレットの上で溶解しながらガラスへ塗って行くのです、一時に多量溶解すると、すぐ
固
(
かたま
)
ってしまって始末に困ります
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
彼処
(
かしこ
)
へ五本、
此処
(
ここ
)
へ六本、
流寄
(
ながれよ
)
った形が判で
印
(
お
)
した如く、皆三方から三ツに
固
(
かたま
)
って、水を三角形に区切った、あたりは広く、一面に
早苗田
(
さなえだ
)
のようである。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「……
顔
(
がん
)
の自殺死体のあったのは、あそこだ。われわれは四五メートル離れたこのへんに
固
(
かたま
)
っていた。これは、お前方の提供した写真にも、ちゃんとそのように出て居る」
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その不安が我々の方針と一致して、親睦会めいた
固
(
かたま
)
りは考えたよりも
容易
(
たやす
)
く出来た。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
數限
(
かずかぎり
)
もない
材木
(
ざいもく
)
を
水
(
みづ
)
のまゝに
浸
(
ひた
)
してあるが、
彼處
(
かしこ
)
へ五
本
(
ほん
)
、
此處
(
こゝ
)
へ六
本
(
ぽん
)
、
流寄
(
ながれよ
)
つた
形
(
かたち
)
が
判
(
はん
)
で
印
(
お
)
した
如
(
ごと
)
く、
皆
(
みな
)
三方
(
さんぱう
)
から
三
(
みつ
)
ツに
固
(
かたま
)
つて、
水
(
みづ
)
を
三角形
(
さんかくけい
)
に
區切
(
くぎ
)
つた、あたりは
廣
(
ひろ
)
く、
一面
(
いちめん
)
に
早苗田
(
さなへだ
)
のやうである。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「同じ事を、
可哀想
(
かわいそう
)
だ、と言ってくんねえ。……そうかと言って、こう張っちゃ、身も皮も石になって
固
(
かたま
)
りそうな、
背
(
せなか
)
が
詰
(
つま
)
って胸は裂ける……揉んでもらわなくては
遣切
(
やりき
)
れない。遣れ、構わない。」
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
滝さんお聞き、蛇がその
累々
(
つぶつぶ
)
した
鱗
(
うろこ
)
を立てるのを見ると気味が悪いだろう、何さ、
恐
(
こわ
)
くはないまでも、可い心持はしないもんだ。蟻でも蠅でも、あれがお前、万と千と
固
(
かたま
)
っていてみな、
厭
(
いや
)
なもんだ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
透間に
射
(
さ
)
し入る日の光は、風に動かぬ粉にも似て、人々の袖に灰を置くよう、
身動
(
みじろぎ
)
にも払われず、物蔭にも消えず、
細
(
こまや
)
かに濃く
引包
(
ひッつつ
)
まれたかの
思
(
おもい
)
がして、手足も顔も同じ色の、蝋にも石にも
固
(
かたま
)
るか
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お町の肩を、両手でしっかとしめていて、一つ所に
固
(
かたま
)
った、我が足がよろめいて、自分がドシンと倒れたかと思う。名古屋の客は、前のめりに、近く、第一の銅鍋の沸上った中へ
面
(
おもて
)
を
捺
(
お
)
して
突伏
(
つっぷ
)
した。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「これかね、寛政
子年
(
ねどし
)
の
津浪
(
つなみ
)
に
死骸
(
しがい
)
の
固
(
かたま
)
っていた処だ。」
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
固
常用漢字
小4
部首:⼞
8画
“固”を含む語句
頑固
確固
凝固
拳固
鞏固
固着
堅固
乾固
固唾
牢固
固執
警固
意固地
固有
固肥
強固
固辞
頑固爺
固練
固粥
...