とっ)” の例文
しかれどもこれ聯想の習慣の異なるよりして来る者にして、複雑なる者をとっことごとくこれを十七字中に収めんとする故に成し得ぬなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
どういう訳か分らぬがなんでも怪しいからとって押えんければならぬが、それにはまず第一富五郎をどうかして押えなければならぬと心得
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しからばすなわこれとって代ろうと云う上方かみがたの勤王家はドウだと云うに、彼等がかわったらかえっておつりの出るような攘夷家だ。コリャ又幕府よりか一層悪い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と取合う気色も見えぬに、茶一杯饗応もてなされぬ助役は悄然すごすごとして元し道にとってかえしぬ、正兵衛は後見送りて、皺苦茶しわくちゃの眉根をひそめ、ああ厄払い厄払い。
厄払い (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
幸村の一子大助、今年十六歳であったが、組討してとったる首を鞍の四方手に附け、相当の手傷を負っていたが、流るる血を拭いもせずに、そこへ馳せて来た。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
折々は黄金丸が枕辺にて、有漏覚うろおぼえの舞の手振てぶり、または綱渡り籠抜かごぬけなんど。むかとったる杵柄きねづかの、覚束おぼつかなくもかなでけるに、黄金丸も興に入りて、病苦もために忘れけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
もう夕暮の光がただよっている大川の水面をじっと眺めていましたが、やがて『どうだろう。その中に一つつりにでも出かけて見ては。』と、何のとっつきもない事を云い出しました。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
基督教は富のために人の思慮するを許さず、もちろん世に称する基督信徒必しもみな空の鳥野の百合花のごとくにあらず、ある者は蟻のごとくとってもとっても溜めつつあるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
僕のたましいの生み出した真珠のような未成品の感情を君はとっ手遊おもちゃにして空中になげうったのだ。
さも拭きとった跡らしく見せかけて、その実出来るだけ広く塗り廻したのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三膳出しましたといって、かえってこの男をあやしんだ、ここおいてこの男は主人の妻子が付纏つきまとって、こんな不思議を見せるのだと思い、とてのがれぬと観念した、自訴じそせんととっえす途上捕縛ほばくされて
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
お腹の中の汚物はんな吐いてしまって綺麗きれいなものです。それに身体からだは充分あぶらが乗って美味しくなっていますし、その魚を浦賀ではむかし一網千両の馬鹿網といって網で一度に沢山とったそうです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
家の構造から云うと、階子段をあがってすぐとっつきが壁で、その右手がまた四畳半の小さい部屋になっているので、この部屋の前を廊下伝いに通り越さなければ、津田の寝ている所へは出られなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たまえばとっいただ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
兄弟中誰にもりようがない、唯一つしかないと云うような物は、総領の一太郎がとっかろうと云うくらいな事で、そのほかには何も変ることはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鹽原しおばら多助が忠孝の道を炭荷とともに重んじ。節義はあたか固炭かたずみの固くとって動かぬのみか。獣炭じゅうたんを作りて酒をあたゝめししん羊琇ようじゅうためしならい。自己おのれを節して費用を省き。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一、古雅に長じて他に拙なる者、繊細に長じて他に拙なる者、疎豪に長じて他に拙なる者等の如きは如何の方針をとってか進むべき。こたへて曰く、一定の方針あるべき理なし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼の大藪おおやぶの陰を通る時、一匹の狐物陰より現はれて、わが車の上に飛び乗り、さかなとって投げおろすに。しゃツ憎き野良狐めト、よくよく見れば年頃日頃、憎しと思ふ聴水なれば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
露柴はさも邪魔じゃまそうに、時々外套がいとうの袖をはねながら、快活に我々と話し続けた。如丹は静かに笑い笑い、話の相槌あいづちを打っていた。その内に我々はいつのまにか、河岸のとっつきへ来てしまった。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
加之しかのみならず本来今度の生麦事件で英国が一私人殺害のめに大層な事を日本政府に云掛いいかけて、到頭とうとう十二万五千ポンドとったとうのは理か非か、はなはだ疑わしい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
虎ノ門へとって返し、反吐の中を掻廻すと有りましたから悦んで宅へ帰ると、家内の申すには、溝板どぶいたの上へ黄金が落ちてたと申しましたが、大方御前のお出しになった時
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかして芭蕉の如きもなほ不可能的の景色をとって俳句と為さんとつとむるに似たり。あに無理なる注文ならずや。いはんや松島の如きははなはだ天然の美において欠くる所多きをや。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そののち叔父はうすたれ、かれは木から落猿おちざるとなつて、この山に漂泊さまよひ来つ、金眸大王に事へしなれど、むかしとったる杵柄きねづかとやら、一束ひとつかの矢一張ひとはりの弓だに持たさば、彼の黄金丸如きは
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
今後こんごするところは士族に固有こゆうする品行のなるものを存してますますこれを養い、物をついやすの古吾こごを変じて物を造るの今吾こんごとなし、あたかも商工のはたらきとって士族の精神に配合し
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
身請して女房にょうぼとなし松山のいえを立てさせくれと今際いまわの頼み其の場はのがれ去り其のきん五百円にてお久を身受致みうけいたし夫婦と相成候それ故に苗字をとって松山園となづけ居りしが昨夜親子の困難を
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秋「いや、とっとけ/\、おまんまべさせてやろう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)